第四十八話〜型〜
「気になることが1つあってね」
「気になること・・・ですか?」
その場にいた一同は、唾を飲んだ。喉を鳴らしながら。
「はい。さっきの診察の時に精密な検査を行ったのですが、この子の魔力の・・・、この子の魔力の型が現在では有り得ない型なんですよ」
「型?」
クレアが言うとルークがいつものように説明した。
「型と言うのはですね、簡単に言うと魔力の性質のようなものですかね?人や動物、魔物は必ず体内に魔力を宿します。魔力は、身体の活動には必要不可欠でありなくなれば死に至ります。これは知っていますね?」
ルークは確認を取りながら説明した。説明が難しいと考え丁寧に説明しようと思ったのであろう。
「魔力には、組み合わせというものが存在します。それはそれぞれで異なり、まったく同じ組み合わせのものは存在しないといわれています。双子などでもその組み合わせが一緒になることもありません。不思議な事にその組み合わせは過去にも存在しないようです。」
「なんか途方もない話だね・・・」
「まぁ、事実ですから仕方ありません。では、説明を続けます」
まだあるの?と言わんばかりの表情をクレアは浮かべた。
「組み合わせの要因としては、魔力の色(Colour)、魔力の形状(Type)などいろいろあります。私も詳しく知っているわけでもないのでここでは、色と形状の説明だけしておきます。詳しい事が知りたければ自分で調べてください。資料なら貸しますので。」
「セルフなのね・・・(笑)」
「魔力の色というのは、以前話したと思いますがそのままの意味で魔力の色を示します。その色を調べる方法は以前話したやり方や最近では医薬品でも調べられるようです。色は人それぞれ異なります、例えば私なら金色ですが、一口に金色といってもそれぞれ個性を持ちます。それは明るかったり、暗かったり。眩しく光っていたり、鈍く光っていたりと様々です。つまり、似ている色があれどもまったく同じ色になることは無いのです」
「・・・な、なるほど・・・」
「次に魔力の形状ですが、現在では大きく3つに分類する事が出来ます。1つ目は、刃物のような鋭い形状です。これは、魔術や呪文の発動にはあまり適しません。アスカのような戦い方の人には適しています。今現在の一般の方はこの形状の方が多いようですね。2つ目は、球体のような形状です。これは魔術や呪文を発動しやすく、アスカのような戦い方もできるオーソドックスな形状です。私もこの形状です。最後は、紙のような形状です。これは珍しく、独特の個性をもちます。攻撃にも優れ、治癒にも適します。クレアはこの形状ですね。現在ではこの3つの形状が存在します。色と同じで形状も人それぞれで異なりますが見分けがつけられる程度で分類できます。昔は他にも形状があったようですが、現在では失われた形状のようです」
ルークがやっとながい説明を終えて一息つくとクレアの父が口を開いた。
「・・・しかし、アスカの魔力の形状は異常な形状をしているんだ。基本は刃物の形状なんだが、他の形状も入り混じっているんだよ。この子が幼い頃に検査した時にはこんな形状はしていなかった。つまり、この子の魔力の形状は変化していることになる。少しずつ、少しずつね」
「てことは、新種?」
クレアは驚きながらも冷静を保った。
「いえ、新種ではありません。昔はこの形状もあったようです。ただ、普通は二種類までしか組み合わさらないみたいですが、稀に三種類以上が混合している場合もあるそうです。ですが三種類以上の混合は、ほんの数名しか確認されていないそうです」
「書物には、これらの形状を混合体と呼んでいたと記されている」
「でも、失われた形状なんでしょ?」
「はい、そのとおりです。前に読んだ資料には魔王アシュドが最後の混合体であったと記されています。それ以降の確認はありません」
「じゃぁ、なんで?」
「混合体は、混合体からしか生まれません。つまり、400年以上前に生まれていなければ混合体の誕生は有り得ませんね。しかし、アスカの誕生はここ最近です。・・・まったく、わかりませんねぇ。」
「まったくです。」
今回ばかりはルークもお手上げのようだ。
「・・・くく、もうちょいだ・・・」
後ろでハロルドが不気味な笑みを浮かべた。
次話〜『不安』〜