第四十六話〜故郷〜
「さて、ではこれからどうしますか?」
オーレグによって剣を強化してもらったアスカたちは、彼に礼をいい、店の外へと出てきていた。
あの不気味なジャングルを視界に入れないよう努めながら、四人はこれからの行動について話し合うことにしたのだ。
「休暇はあと四日ほどありますけど」
「ダーヴァさんは、家に帰ってみるといいって言ってたよね」
クレアの言葉に、アスカは故郷の風景を思い出していた。
砂漠の町、サンラド。
時間としてはそれほど長くはないはずなのに、そこで暮らしていたころがひどく懐かしく感じた。
残してきた母は、そしてロベルトはどうしているだろうか。アスカを庇い、片腕と共に自らの夢を失ったロベルト。
彼にもきちんと今までのことを、報告したい。
「俺は、帰りたい。サンラドに」
アスカははっきりと言った。
クレアはにっこりと笑い、「私も!」と同意した。
「二人が生まれ育った町かー。興味あるし、俺も行く!」
クレアの横で、「はいはーい!」と手を上げながら、ハロルドが言った。
「いいのか、ハロルド。お前も自分の故郷に帰りたいんじゃ―――」
言いかけてアスカは、自分には帰る家がない、とハロルドが言っていたことを思い出した。そう、ハロルドは両親を殺されているのだ。
アスカはあわてて口をつぐんだ。
「じゃ、じゃあ、ルークはどうする? 自分の故郷に帰る?」
少し気まずくなった雰囲気を打破するために、クレアがわざとらしいくらい明るい声でルークに聞いた。
クレアに聞かれたルークは、にっこりと満面の笑み(例の嫌味なやつ)を浮かべ、言った。
「アスカ達についていきますよ。私の両親もすでにこの世にはいませんから」
せっかくその場を取り繕おうとしていたのに、何でこの人はこんなにも笑顔であっさりと地雷を踏むのだろう。
アスカは少し頭が痛くなった。
「それに、ロベルトにも会いたいですしね」
「ついでかよ!」
思わずツッコミを入れたアスカだった。
ジャリッジャリッ・・・ 砂を踏みしめる音と吹き付ける突風が行く手を阻むこのサンラドの地にアスカ達はいた。
「やっぱ、砂漠は大変だな。暑くて暑くて・・・」
「そうだね、いくら地元の人でも暑いものは暑いよね」
「もう暑いのヤダ〜!!暑いのうっざーい!!」
「まぁまぁ、そう言わずに。だいたい、あなたがついて行きたいと言ったのですよ。ハロルド」
「そうだけど・・・やっぱ、暑いのはイヤだ!!」
暫く歩き続けていると、町が見えてきた。
「おっと、どうやら着いたようですよ」
「ここに来るの、久しぶりだな」
次話〜『異変』〜