第四十四話〜新しい剣〜
「待たせたの。わしがここの鍛冶職人のオレーグじゃ」
店の奥から出てきたのは、年配の老人だった。
おそらく70は超えているだろうと思われるが、顔つきが鋭く、精力に満ち溢れている感じで、歳を感じさせない。
「先ほど対応させたのがわしのたった一人の弟子、ローラじゃが、何か粗相はしていないかの?」
「いえ、とても暖かくもてなしていただきました」
「それはよかった。では早速、その問題の剣を見せてくれ」
オレーグに言われ、アスカがその剣を差し出す。
オレーグは差し出された剣に顔を近づけ、それを観察する。
「ふむ、いい剣じゃな。刀身が滑らかで、美しい光沢を持っておる。だがやはり、少し刃こぼれしているようじゃな……。分かった。少し待っていてくれ。そうじゃの、数時間で終わるじゃろ。それまでどこかで時間をつぶして待っていてくれ」
オレーグはそう言うと、アスカたちの返事も待たず、足早へ店の奥へと消えていった。
急ぐようにして行ってしまったオレーグに、アスカたちが驚いていると、
「師匠ったら、骨のありそうな剣を見つけると、いつもああなんですよ」
と、今まで脇に控えていたローラが苦笑混じりに言った。
「では、師匠の言うとおり、終わるまでには数時間かかるでしょうから、それまでどこかで暇でもつぶしていてください」
ローラが立ち去ろうとした時、アスカがある事を思い出し道具袋を出した。
「ローラさん、これをオーレグさんに渡してもらえますか?」
そう言ってアスカは、ダーヴァから渡されたマジックストーンの欠片をローラに手渡した。
「わかりました。渡しておきます。では、私も師匠を手伝うのでこのへんで」
そういうと、ローラもオレーグを手伝うために、店の奥へと消えていった。
オーレグの家を後にした一同は、剣が出来上がるまでの時間潰しについて話し合っていた。
「どうするよ?この中途半端な時間」
「そうですね、あまり遠くへはいけませんし・・・」
「やっぱり、この町を見て回るのが一番いいと思うんだけど〜」
「俺も、クレアちゃんの意見に賛成かな」
「・・・そうですね。アスカの剣が鍛え終わるまで自由時間としましょう」
そう決まったとほぼ同時にハロルドはどこかへ行ってしまった。
「あいつ元気だなぁ〜〜」
アスカが微笑むように笑うと
「へぇ〜、アスカもそんな顔するんだねっ!!初めて見たよ!!」
クレアが笑いながら話しかけてきた。
「別に〜。いつもどおりじゃねぇ〜か?」
「ふふっ♪そぉかなぁ?」
「なんか機嫌いいな、クレア」
「別に〜〜」
2人が楽しそうに会話していると、ルークが口を開いた。
「では、私も行きますね。私はホーリーナイツの本部へ戻りますから、何かあったら本部へ来てください。それでは・・・」
「あぁ、わかった」
そう言うと、ルークはスタスタと歩いていった。
どんな風に仕上がるのか少し楽しみだな。俺の新しい剣・・・
アスカは少し胸に期待を持ちながら口を開いた。
「とりあえず、街の方に行ってみるか」
「うんっ!!」
2人は、町へと歩いていった。
次話〜『魔龍』〜