第四十三話〜鍛冶屋〜
その鍛冶職人の店は、サンライトタウンの西端にひっそりとたたずんでいた。
都会的なこの都市において、そこだけが異様な雰囲気を醸し出している。
鍛冶職人の店は森の中にあったのだ。
ただ森といってもそれほど大きなものではなく、せいぜい普通の家の敷地よりやや広いぐらいの面積だ。
そこにびっしりとほとんど隙間なく、木やら草やらがぼうぼうに生えていて、店に入り口に続く道以外は、ほとんど森―――いや、ジャングルといってもよい状態であった。
この都市において、こんな奇妙な建物は他にないだろう。
アスカたち四人はその店の前でしばし呆然としていた。
「なんだよ、このジャングルみたいなところは……」
「噂ではその鍛冶職人は変わり者であるとのことでしたが、ここまでとは……」
流石のルークも、この景色には開いた口がふさがらないようだ。
「とりあえず、中に入ってみようよ」
クレアの言葉に、四人は余り気が進まなそうにしながらも、木々に囲まれた入り口への道を、歩き出した。
「お話はダーヴァ総司令官から聞いています。どうぞこちらへ」
店に入ったアスカ達を迎えたのは、意外にも若い女性だった。
女性の割には背が高く、背筋もしゃんと伸びた、しっかりしていそうな感じの人だ。
「あの、あなたがここの鍛冶職人さんなんですか?」
クレアが聞くと、その女性は微笑んだ。
「とんでもありません。私などまだまだ未熟者です。私はここの鍛冶職人の弟子なんです」
「お弟子さん、ですか」
弟子であるということは、彼女も鍛冶職人を目指しているということである。
鍛冶職人はほとんどの場合男性であるので、四人は目を丸くした。
「そういえば、あの庭なんですけど……」
「ああ、見てもらえました? 師匠は自然を愛する方ですので、私が師匠のために庭にたくさん植物を植えたんです。喜んでもらえると思ったんですけど、師匠はちょっと呆れたように私を見てくるんですよね。何故でしょう?」
そりゃ、自分の店の庭をあんなジャングルみたいにされたら呆れもするだろう。
どうやらこの女性、しっかりしているように見えてどこか抜けているらしい。
「あ、では師匠を呼んでまいります」
その女性はアスカたちに一礼すると、店の奥へと歩いていった。
次話〜『新しい剣』〜