第四十一話〜命〜
ゴーレムを倒したことによりマジックストーンを得ることが出来たアスカたちは、とりあえずそれを持っていったん外へ出ることにした。
今回入手したマジックストーンは、量から見れば、課せられたノルマを十分満たすものであった。
「これだけあれば、十分だよねぇ」
「ええ。予定より早いですが、これで任務は完了です。今日は町の宿屋に泊まって、明日マジックストーンを本部まで届けましょう」
そんな会話を交わしながら、外ヘ向かって歩いていこうとしたアスカたちだったが、ふとクレアがその場で足を止めた。
「どうしたんだ、クレア」
アスカが聞くと、クレアは崩れ落ちたゴーレムの後ろのほうを指差した。
「あれ・・・人の死体じゃない?」
その方向を見てみると、確かにそこに人らしき姿のものが、うつぶせに倒れているのが見えた。
それは二つあった。
「もしかしてさっきクレアちゃんが言ってた、行方不明者の人たち?」
ハロルドが呟いた。
四人はとりあえずそちらの方まで行ってみた。
「あっ、あのぉ・・・大丈夫ですかぁ?」
クレアが真っ先に駆け寄って声をかけた。
しかし、それはまったく反応を示すことはなかった。
もう一人のほうも、ぴくりとも動かない。死んでいるのは間違いないだろう。
その証拠に、その体は赤黒い血にまみれていた。
「とりあえず町まで運びましょう」
ルークの言葉に従い、アスカとハロルドが一人ずつ背負い、町まで運ぶことにした。
結果から言うと、その二つの遺体は、やはり発掘者と用心棒の、行方不明になった二人組みだった。
町の役場まで運び、命からがら逃げ出した弟子の人に確認を取ってみたのだ。
弟子は発掘者の方の遺体に縋り、号泣していた。
師匠、と何度も何度も繰り返し言いながら、決してそのそばを離れようとしなかった。
「・・・・・・」
アスカは無言でその様子を見ていた。
弟子の悲しみように、人の命の重さというのを感じたような気がしたのだ。人一人が死んだだけで、これだけ悲しむ人がいるということに。
そしてもうすぐ、人の命を大量に奪うことになる戦争が始まる。
「アスカ?」
黙り込んでしまったアスカに、心配そうにクレアが声をかけた。
「どうしたの?」
「あ、いや、何でもねぇよ」
アスカは出来る限り平静を装い、笑顔でクレアに言った。
「よし、それじゃあ宿を探そうぜ!」
アスカはつとめて明るい声を出しながら、ルークとハロルドのほうへ歩いていった。
次話〜『臨時休暇』〜