第三十九話〜魔物〜
「暗いなぁ・・・ったく、これじゃぁ戦いにくくて仕方がねぇよ・・・」
アスカが吐き捨てた。アスカがそういうのも仕方がないだろう。ルークの持っているランプの明かりしか、辺りを照らすものは、無いのだから。
数メートル先は見えるものの、そこから先は何も見えない。敵が来たらとてもじゃないが、反応できないだろう。
幸い、ここまでは一本道で、迷う事はなく、前後にだけ気をくばていればよかっただけだった。
「それにしても、どこまで続くんだろう。この道は・・・」
クレアが周りを見渡しながら言った。クレアは、いつもよりも警戒しているようだ。それは、魔物に対する警戒ではなく、暗闇そのもの自体への警戒だが。
「・・・むこうに、明かりが見えますね・・・行ってみましょう」
ルークの目の先には、確かに明かりがあった。それは壁にあるランプの明かりなのか、アスカ達以外の誰かが持っているランプの明かりなのか、まだわからないが確かにそこで光っている事には間違いなかった。
恐る恐る近づいてみると、壁にあるランプが辺りを照らしていた。なぜか、ここから先はランプが壊されては、いなかった。
「なんで、ここは壊されてないんだろうねぇ・・・誰かが意図的にやったとしか思えないよねぇ」
ハロルドの言葉に誰も反論しなかった。いや、しなかったのではなく、できなかたのだろう。そう考えざる負えない状況なのだから。
「でも、ここから先のランプが壊れてないってことは、ここから先になにかあるってことなんじゃねぇの?」
「えぇ、その可能性は十分ありますね。もしかしたら、白いコートについて何かわかるかもしれません」
「よし、先へ進もう!!」
数十分ほど歩き続けていると、明かりが、一層増した部屋へとたどり着いた。
「なんか、ここ知っている気がする・・・」
「えっ?」
「いや、なんでもない」
アスカがボソッと口にした言葉が引っかかるクレアだが、あえて聞かなかった。
奥に何やら、大きなものがあった。ハロルドがそれに気が付き、一同は、駆け寄って行く。
「・・・・・・これはっ!!」
「どうしたんだ?何かわかったのか?」
「これは、おそらく封印の像です。これは推測ですが、魔王アシュドの魂が封印されていた可能性が極めて高いです。それは、この魂の鎖から推測されます」
「魂の鎖?」
「はい。これは特定の人物の魂を縛りつけ、封印すると言う、古来に存在した封印術に使用する道具です。この封印術は、魂と肉体と魔王アシュドの場合は『魔力』ですかねぇ〜、とにかく、封印する対象の最も発達したものの、3つに分けてからそれぞれを封印するんですよ」
「なるほどねぇ・・・それじゃぁここには、魂が封印されてて、他の場所に、肉体が封印されてたんだ。しかも、この様子だと、魂の封印は解かれているねぇ。魂の封印が、解けてるってことは、少なくとも肉体も復活してる可能性が高いよねぇ」
「はい。つまり、この世にはあの恐ろしい、魔王が蘇ってしまったと言う事です。しかし、彼の魔力は、蘇っているかはまだわかりませんね。封印が解かれたのは最近のようですし。しかも、魔力の封印の仕方は、私も知りませんし、対策を練るにも練れません。困りましたね・・・」
ルークとハロルドで、難しい会話しているのにアスカとクレアは理解できず、途方にくれていた。
「なんか、2人が違う次元の人に見えてきたよ。すごい深刻なのは伝わってくるんだけど、意味がイマイチわからないよぉ・・・」
「ハロルドって、時々すごい奴に見えるよなぁ〜。いつもは、子供っぽいのにさっ」
アスカ達が、ルークとハロルドの会話をボーっと聞いていると何かがいる気配を感じ、咄嗟に横へ回避した。
すると、大きな岩の塊のような巨人が手に大きな棍棒を持ち、それを振り下ろしてきた。間一髪避けていなければ、今頃アスカはペシャンコになっていただろう。アスカは体勢を立て直し、剣を即座に構えた。
次話〜『新技』〜