第三十三話〜サンライトタウン〜
翌朝、『精霊の村レジェンド』の村民たちからの盛大な見送りを受けて、アスカたちは村を発った。
「いい人たちだったねー」
ハロルドが言った。
「フィストさんがいきなり出てきたときはどうなるかと思ったけど」
クレアが苦笑しながらそう返す。
「それにしても・・・」
ルークがやや気の重たそうな声で言った。
「本当に受け取ってよかったんでしょうかね、こんな貴重なものを」
そういうルークの手には『太陽光』が握られていた。
村長のゴドが、ぜひ持っていってほしいといったのだ。
「近頃はこの杖を奪おうとする輩が増えて困っておるんじゃ。わしが生きているうちはいいものの、もしものことがあったとき、この杖を守りきれるか不安なんじゃ。この杖を守る意味でもぜひ、持って行ってほしいんじゃ」
ゴドの言葉に、ルークは反射的に受け取ってしまったのだ。
「いーんじゃねぇの? あって困るもんじゃないだろ?」
「それはそうですが・・・」
ルークに背中には「責任」の二文字が重くのしかかっているらしかった。
「ね、あたし思うんだけど、もしかしたらゴドさんたち、もうひとつの意味であたしたちを「試し」てたんじゃないかな?」
「もうひとつの意味?」
「うん。その杖を託すのにふさわしいかどうか」
クレア以外の3人は「あ」と声を上げた。
「だから深く考えなくてもいいんじゃない? もしそうだったら、一応あたしたち、合格ってことだもん」
「なるほど、そうですね」
ルークはようやく少し緊張をほぐしたようだった。
「・・・」
「どうしたの、ルーク?」
「いえ、なんでもありません。ただ・・・」
「ただ?」
「クレアにしては、珍しくいいこと言ったっと思っていただけです」
「ちょっと、それどういう意味よ!!」
「まぁ・・・そのまんま、ですかね?はははははっ」
ムスッとしているクレアを、あざけるような声でルークは笑った。それがとても嫌味な感じだった。
「まぁそんなことは、おいておいて。クレア、この杖はあなたが持っていてください」
「えっ、どうして?それはルークが持っていた方がいいんじゃないの?」
「いえ、私よりあなたが持っていた方がこの先のことを考えると都合がいいんですよ。あなたはまだ魔力の量が少ないですし、光の呪文を扱うことを前提に修行しましたしね」
「なんか不安だなぁ〜この杖私に守れるかどうかわからないよ。・・・もしかして、私に責任を押し付ける為に渡したなぁルーク!!」
「あはは〜バレましたか。まぁさっき言ったことも嘘ではありませんよ。私が持つよりあなたが持った方がいいことは確かですから」
「じゃぁお言葉に甘えて使わせて頂きます」
「・・・さて、ようやく到着しましたよ」
ルークが感慨深げに言う。
現在時刻午前11時25分。ようやくサンライトタウンに到着したのだ。
「ここが・・・ホーリーナイツの本部がある都市・・・」
目前に見えるその街並みを見ながら、アスカが呟く。
「さあ、行きましょう。―――ホーリーナイツの、本部へ!」
ルークの言葉を合図に、4人は歩き出した。
次話〜『ホーリーナイツ本部』〜