第三十二話〜真の名〜
「なぁ〜どういう基準で俺たちは試験に合格したんだ?」
「そうそう、俺も気になってたんだよねぇ」
アスカとハロルドがそう言うとクレアが口を開いた。
「たぶん、フィストさんが現れた時、私たちに殺意があったか、なかったか、とかそういうのだと思うよ」
「まぁ、そんなところでしょうね。少なくとも今まで奪いに来た人達には殺意があったんでしょう」
「あの状況でそんなこと見極められるんだぁ〜凄いなここの村の人達は」
「もしかしたら、あの杖を守る為に特化した能力なのかもしれませんね」
「てことは、ここは優しい人しか集まらない不思議な町になるんだね!!」
クレアの考え方に、一同は小さな平和を感じた。アスカはもちろん皆、ホーリーナイツとイビルナイツで対立している今、この小さな平和がもっと大きなものになることを願った。
その後一同は、少しその場で休憩してから村へと向かった。
「よくぞ戻られた!!今夜はこの村でゆっくりしていってくだされ」
長老が帰ってきたアスカ達を歓迎し、暫く話し込んだ後、村人全員に聞こえるように大きな声を出すと、村人が家から飛び出し、村にはお祭りのような活気があふれた。久々の宴だった。その為、先程とは比べ物にならないほどの活気が村にあふれていった。
「久々の客人だぁ〜朝まで楽しむぜぇ!!」
「よっしゃぁ〜!!まず、俺はあのお嬢ちゃんを口説いて・・・」
「バカッ!!あの子の隣にいる紅い髪の毛の男の子、どう見ても彼氏だろう?お前じゃぁ敵うわけがないだろ」
「やってみなきゃわからない・・・と言いたい所だが、彼には勝てる気がしないな。かなりいい男なんじゃないか?」
アスカはモテモテと言う程ではなかったが、わりと顔のいい男だった。しかし、性格が大雑把な為、クレア以外の女の子に、好意を持たれる事はほとんどなかった、いや、無に等しかった。
「よっしゃぁ〜ハロルド!!美味そうなもん食いまくるぞ〜!!!」
「わ〜い、美味しいもののお祭りだねぇ!!」
祭り好きのアスカは、興奮し、ハロルドはアスカのマネをするかのように興奮した。
「はぁ〜アスカもハロルドもはしゃぎ過ぎないでね」
一方、アスカ達が村ではしゃいでいる頃、ルークは、長老と話をしていた。
「これは、推測なんですが、杖を狙ってきた輩というのは、白いコートを着ていた者ではないですか?」
「いや、多分違うと思うのじゃが、もしかすると、そのような輩もいたかもしれぬ」
「・・・そうですか。それからこの杖は、光属性と言っていましたが、やはり相反する存在があると推測できる、その事から、闇属性の杖があると考えられます。闇属性の魔術や呪文は、とてつもなく強く、恐ろしく危険なものです。つまり、術者の能力をサポートする光の杖が存在するならば、闇の杖は闇の魔術や呪文のリスクを軽くしたり、その効果を倍増させることの出来る可能性があり、その存在は脅威です。こちらの杖が狙われていないとすれば、白いコートの奴らが狙うのは、そちらの闇の杖である可能性が高いしょう。そこで頼みたいのは、その闇の杖についての情報です。お願いできますか?」
「いや〜これは恐れ入りました。この杖の存在だけでここまで、たどり着けるとは。・・・確かに闇の杖は存在するのじゃが、そのあまりの強さに扱えるものおらず、杖の力が暴走するだけ。それを危険に感じた、ある一部の杖関係者がその場所や詳細を極秘で隠したのじゃ。私が知っているのはこれぐらい。能力等はあなたの推測どおりじゃ」
「・・・そうですか。貴重な話をありがとうございました」
ルークの顔は、少し満足げな表情を浮かべ、またいつもの冷静な顔つきへと戻った。そしてまた口を開いた。
「では最後にもう一つ、なぜ、ここは妖怪の村と呼ばれているのですか?」
「はっはっは、それは、杖の場所を誤魔化そうとしているだけですぞ。この村の本当の名は『精霊の村レジェンド』」
次話〜『サンライトタウン』〜