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第二十五話〜二人きりの祭り〜

リザに言われ、クレアはアスカを祭りに誘い、アスカと二人で町へ向かっていった。

クレアはリザの助言に従い、アスカを祭りに誘った。

元々祭り好きだったアスカは二つ返事で承諾し、2人で祭りへ出かけることになったのだ。

2人きりで祭りを楽しみたかったクレアだが、アスカを連れて行くとき、ハロルドに見つかってしまい、もう少しでついてこられるところだった。

もちろんハロルドのことは仲間だと思っているが、2人きりの時間を邪魔されたくはなかった。

結果としては運良くそこに通りかかったリザがハロルドに無言の圧力をかけてくれたおかげで、こうして2人きりで出かけることができたのだが。

「あ、ねぇねぇ、金魚すくいだよ金魚すくい! ね、やろ!」

「やろったって、金魚取ったところで俺たちじゃ飼えないぞ」

「リザさんに飼ってもらえばいいよっ!」

「お前が勝手に決めるなよ・・・」

アスカはそういいつつもお金を出してくれた。

それからしばらくの間、2人で金魚すくいに興じたが、結局1匹も取ることはできなかった。

「くそ、あの金魚たちめ!」

「金魚に怒ったってしょうがないよ」

始めはクレアがやろうと言い出した金魚すくいだったが、途中からはアスカのほうが熱くなっていた。

「次はあいつだっ!!」

「もうやめておけば?」

「捕るまで帰らん!!」

「え〜〜!!」

「なっ!!このっ!!だぁもう、逃げんな金魚め!!」

どうやら1匹も捕ることができないのが悔しいようだ。断固たる決意で金魚をすくうアスカを見てクレアは、優しく微笑んだ。

と、そのときだった。

「・・・・・・あれ?」

クレアは思わず声を上げた。

「あ? どうかしたか?」

「・・・あ、いや、なんでもないよ」

「ふうん?」

アスカは不思議そうに首を傾げたが、それ以上深くは追求してこなかった。そしてまた金魚をすくい始める。いつになれば、終える事のできるのかわからないこの小さな戦いを。

クレアは見たのだ。溢れる人並みの向こうに、ロウグで「白いコート屋」をやっていたサロマが歩いていたのを。

「・・・まさかね」

クレアは見間違いだと思い、サロマのことは忘れた。


ぱーん。

そこらじゅうに爆発音が響いた。

が、それはロウグで聞いたような激しい音ではなく、どこか懐かしいような音だった。

「あ、花火」

クレアが空を見上げて言った。

夜空には美しい火の花がいっぱいに咲いていた。

「おー、打ち上げ花火なんて見るの久しぶりだ」

アスカが少し嬉しそうに言う。

次々に打ち上げられる花火たちは、一瞬美しく光っては、消えていった。

「綺麗だね」

「ああ、すっげー綺麗だ」

クレアはそっとアスカの方を横目で見た。

目を細めて空を見ているアスカの横顔が、次々に色を変える花火に照らされている。

クレアは幸せそうに、そっと微笑んだ。


次話〜『消えた三人』〜

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