第二十話〜その店〜
情報収集でクレアが聞いたパン屋に向かったアスカ達・・・
一同はパン屋「白いコート」の前に立ち、絶句していた。
「・・・黒いな」
アスカがやっとのことで言った。
「・・・黒いですね」
「・・・どうみても黒だね」
「・・・真っ黒だね」
そのパン屋は、店の名前に反して見事なまでに真っ黒だった。
何だかとてつもなく怪しいオーラを出している。
店というよりは幽霊屋敷といったほうがしっくりきそうだ。
「とりあえず店に入ってみましょう」
ルークの言葉に、一同は店へと入っていった。
「いらっしゃいませ・・・」
店に入った瞬間、か細いぼそぼそとした声が聞こえてきた。
カウンターのところに座っている男が発した言葉だ。恐らく彼が店主なのだろう。
肌はかなり不健康そうで青白く、しわくちゃだ。年齢は50代後半から60代前半といったところか。
「あの、少しお話をお聞きしたいのですが」
ルークが言うと、その男はギョロリと目を動かした。
「何でしょう?」
「最近この町で、ホーリーナイツの男が殺害される事件がおきました。現場では白いコートの人物が目撃されているのですが、何か心当たりはありませんか?」
男は話を聞いて驚いたように眼を見開いた。
「き・・・貴様ら・・・」
「え、なに?」
クレアが聞き返す。
「貴様ら・・・出て行け! 今すぐ、今すぐだ! 出て行け、この蛆虫どもが!」
店主のいきなりの変貌ぶりに4人は何が何だか分からず、立ち尽くした。
「出てけ! 汚らわしいガキどもめ! そんな奴、ワシは知らん! 出てけ!」
店主は相当混乱しているらしい。
これ以上まともな会話はできないと思った4人は、店の外へと避難した。
「あのオジサン、絶対変だね」
店の外で、ハロルドが店を見ながら言った。
「何か知ってるに違いない」
「そうかもしれません。ただ・・・」
ルークはため息をつきながらパン屋を見た。
「しばらくまともな会話はできないでしょう。あの状態では」
「じゃあ、どうするの?」
「・・・とりあえずもうひとつの「白いコート屋」にも行ってみましょう。それからもう一度ここによってもう一度話を聞く。といってもあの人が素直に話してくれるとは思えませんがね」
4人は同時にため息をついた。
「とりあえずもうひとつのほうにも行ってみようぜ。何か分かるかもしれないし」
アスカがいい、4人はもうひとつの「白いコート屋」へと歩いていった
次話〜『もう一つの店』〜