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昼の竜

掲載日:2026/11/08

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 こーちゃんは、真っ昼間に「竜」を見たことがあるかい?


 ――ゲームの話なら、どれのことだ?


 いやいや、仮想空間的な話じゃないよ。

 この現実空間においての話だよ……というと、ますますおかしな感じがするかい? 空想上の生き物が、どうして現れたりするのかって。

 でも、まだ見つかっていない。あるいはごく一部の人しか見つけていないからこそ、空想の領域から出ることができずにいるかもしれないよ。

 世の中は広い。まだ未発見、未確定のことはたくさんあって、形も定まっていない。ネタバレすると面白くないから、しばらくは神秘な存在であってほしい……という気持ちもあるかな。

 で、昼間の竜の話だけど、ほんのちょっと前のことなのさ。ネタとして聞いてみない?


 あの竜はなんともおかしな格好をしていた。

 休みの日の午前中だったな。勉強しながら、ふと部屋の窓越しに空を見上げたんだよ。

 いくらか雲が散らばる晴れ空の中、一本の飛行機雲が真新しい筋を吐きながら、突き進んでいるのが見えたんだ。

 そう、その軌道をずっと続けているのであれば、よくある飛行機雲の一本で終わっていたはず。

 ところが、雲は突然に蛇行を始める。ぐぐっと、地上から見て下側へ傾いていったんだ。

 その先には、ひとつ大きい雲が立ちふさがっている。飛行機雲からしてみれば、巨岩もかくやというほど。もし突っ込めば、たちまちその一部となってしまい、筋ではなくなってしまうだろう……と思われた。


 けれども、その飛行機雲が巨体を荒らしていく。

 ぶつかった先から、大きい雲の方が左右へどいていき、開けた道を飛行機雲が闊歩していくんだ。

 わずかにのぞく青空部分のおかげで、そのような動きをしているのだと判断がついたものの、事態はそれで終わりじゃなかった。

 いったんは道を開け、左右へ分かれた雲たち。それが飛行機雲が突き進むのに遅れて、後からついていくように集まっていくんだ。

 飛行機雲が突き抜けるころには、すでにその巨大な雲たちが後に続く形になっていたものの、長くは続かない。

 尻尾に溜まっていたものが、ぐっとしぼむとともに飛行機雲全体へ伝う形で広がり、ひと回り身体が太くなったのさ。そして飛行機雲そのものは、別の雲目がけて再び旋回。食らいついていったんだ。


 雲を食い、身体を太らせ、そのうえ速さも増していく。

 少なくとも視界いっぱいにあった雲をすっかり食い散らかしたとき、その飛行機雲はまるで河のような太さになっているばかりか、いくつかの「支流」が手足に見えたのさ。

 伝説に語られる竜の持つ、爪を有した手たちのようにね。

 そして、ふっと消えた。雲が本来やるような散り方ではなく、立ちどころに視界から見えなくなってしまったんだ。

 単なる長い見間違い、と片づけられなくもないだろう。でも、あの飛行機雲は明らかに自分の意思を持っていた動きだったよ。

 雲のごとき容姿をした竜の姿、だったと私は考えているんだ。

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