怪奇事変 捨てられた廃病院
今回は長く書きました。一般人視点のお話なので今回はバトルなしです。
第三怪 捨てられた廃病院
都内某廃病院……心霊スポットとして有名なその場所は、本当の曰く付きの場所であり、多くの失踪者を出している危険な場所。
そこから場所の所在地は明記される事なく、全ての情報は一度表舞台から姿を消した。
ある霊媒師Aの証言――
「あそこか?まー……行かないな。逝っちまうから」
霊媒師Bの証言――
「行かないね、私が霊を見えなくても絶対に行かない……死にたかーないからね」
霊媒師Cの証言――
「以前、番組の企画で同行した霊媒師共々戻って来た者はおらず、ニュースにもなっていたね。
恐らく――いや、もうこの話は良いだろ?話すだけでも何処からか……視線を感じる様な、刺す様な感覚になる……それだけヤバイってことだ」
病院とは生と死が彷徨うある種、輪廻の儀式を行う場所でもある。
例えとしての表現は悪いが、それが悪霊を生むきっかけとなる……闇が深ければ深いほどに。
そしてそんな興味をそそられる話を聞いた者は、必ず1人は要る。
その行動力は凄まじく、情報も飛ぶように伝わり、特定されてはいけない場所を特定してしまう程、夢中にさせる。
これは既に起こってしまった話、どうか自分の身を安全に危険な場所に立ち入らない事を推奨する。
好奇心は猫をも殺すと言う諺がある様に、やってから、行ってからでは遅いのだから。
「んで、今度の休日にその廃病院に肝試しにいかねーって話」
「いやー……お前、2人が怖がる姿、見たいだけじゃん。あんまし興味ないんだよね」
「何々、本当は怖いんだろ~」
「どうせ噂だよ、本当は何もなくて、音だって小動物が物を動かしたりとか……蓋を開けてみれば何の関係もない事ばかりだよ」
2人の男子は自転車を手で押しながら会話に花を咲かせていた。
東京都在住、遠野目高校に通う2人は学校の行事の一環で必ず入部の手続きを済ませなければならないルールがあった。
その為、あまり活動的ではない部を探す流れで知り合いになり、同じ部活のオカルト部に入部する事になる。
内容はシンプルに科学的に証明できない現象を紹介する部――部員はあと2名いるが、今は一緒ではない。
「兎に角、部の活動報告も上げなきゃいけないんだから、少しはやる気だして行かないとダメだろ?」
「なら高坂先輩に一度話を聞いて、OKなら準備を進めて行くって方向性で行こうか。いちよ土地を管理している人にも許可取らないといけないし」
「そこは頼んだ!お前もこの機会に高坂先輩とラーー」
「グーが出そうな気分だから冗談は止めてくれ、じゃ、俺こっちだから……」
「おう!じゃまた明日な~」
十字路で別れ先ほどの話を思い出す。
少年は稲葉雄平、高校2年。
オカルト系には興味はなく、実在しない者を信じないタイプで今まで部活の為に何度か心霊スポットなどを巡った経験がある。
だが、それらはどれも刺激的な内容は詰め込まれてなく、いわば何も感じず、起こっても何も感じない。
だからこそ信じないと一貫した気持ちが強く出てしまっているのかもしれない。
そんな稲葉を現実主義と呼ぶ声も多く、良く他の者から夢がないっとからかわれたりしたが、正直稲葉は霊的モノで夢を見れなんて縁起でもないっと思う。
「廃病院……高坂先輩は好きなのかな?」
先ほどから出る高坂と言うのはオカルト部の部長でもあり、密かに稲葉が惚れている女性の事だ。
彼女の事を思うと心が温かくなる、こんな自分でも包容してくれる癒しの存在だとずっと思っている。
来年になったら卒業してしまう為、少しでも長く一緒の時間を過ごすためにもできる限り活動は行っているが、今回はちょっと別な気持ちがあった。
「……」
稲葉は身体が弱い、そのせいで入退院を繰り返していた経験がある為、病院とは意外にも繋がりがある。
過去には怖い話も聞かされたが、実際には夜お手洗いに出た時に何者とも遭遇しなかった。
怖くはない……はずなのに、なんだか胸騒ぎがする、そんな感覚がある……その違和感が稲葉を廃病院へ行くか行かないかを悩ませていた。
「あ、稲葉じゃん~、今帰り~?」
「三奈木か、また男遊びか?」
「いやいや、健全なJKにその言葉の仕打ちはないでしょ?バイトだよバイト♪」
三奈木加奈、同級生だ。
JKと言う割にメイクが濃く、ギャルと呼ばれ変な噂が立っている。
だが、稲葉も三奈木の性格の事は良く知っている為、今の挨拶は冗談でたまに使う挨拶である。
「そういえば、葉山から聞いたよ~」
「何を?」
「廃病院、行くんでしょ?アタシも参加!」
「……なんで嬉しそうなんだよ」
「え~だって、正直コレ、ネットとかに流したら大反響じゃん!絶対ニュースに出るってアタシ達!」
「悪い意味な」
三奈木も参加か……と、また不安になる。
某廃病院に噂は所詮噂程度にとどめているつもりなのに、どうして行く行かないで此処までざわつくのだろうか?
「……なぁ、三奈木」
「ん~?」
「廃病院なんだけど――」
「ヤバ!?アタシ、バイトだからもう行くわ!何かあったらメールして!そんじゃ!!」
「……」
嵐の様に去って行くやつだなと見送り、稲葉も岐路に着く。
葉山幸太郎、先ほど出た名前で先程まで一緒に居たクラスメイトの1人で、同じオカルト部で副部長として活動をしている。
どこからリークしてきた情報をもらい、それを高坂千沙に情報を渡し、調査って形がオカルト部の流れだ。
基本的に怖い話をするには実体験が一番っと言う彼女の経験を元に行っているだけにすぎない。
「まぁ、連絡だな」
まずは高坂先輩に連絡を行い行くかどうか決める、その後、部長である彼女からOKが出れば行く訳になるが、ダメなら行かない。
至ってシンプルである。
「……?」
何かの視線を感じた気がした、だがそこには誰も居ない。
近頃、東京は何か変だと違和感を感じる事が多々ある。
この前、渋谷に降りた時もそうだった。まるで海の中に居る様な重圧を感じて、気持ち悪くてトイレで戻したのを覚えている。
結局、その日は連絡をする事を止めて帰って、飯を食って、風呂を入り眠った。
だがその夢は――未だ覚えている。
白衣を着た医師と助手を務めるナースの姿がジっと稲葉を見つめている、そんな鮮明な記憶と共に、明日は来る――悪夢として。
翌日――
「OKだよ、ちゃんと管理者にも連絡とれたし、今日にでも行っても大丈夫だってさ」
放課後、部室にて言われたのは昨日の廃病院の話であった。
稲葉は連絡を取っておらず、葉山が先回りして連絡をしていたらしい。
「(つうか、最初から連絡してるなら俺に振るなよな)」
「(結果的にお前連絡してなかったじゃん。俺の勘が当たった今がある事に感謝しろよ)」
お互いに小言で言い合うも――
「急ですね、今日じゃなくても別の日だって良かったんじゃ?」
その言葉に高坂先輩は難しそうな顔で返す。
「うん、実はね……もう次期解体する予定なんだって。今までは放置してきたけど、幽霊とか噂の持ち切りで不法侵入が後を絶たないし、世間体的にも
早く取り壊した方が安心するんじゃないかって……だから来れるとしたら今しかないんだって」
取り壊し……まぁ、曰く付きでほぼ毎回の様に悪戯にくる来訪者に対して、管理者が苛立っている気持ちは分かる。
稲葉も同じ立場ならそう選択したが……何故このタイミングなのか?
もっと早い段階で土地を手放す事はできなかったのか?っと考えてしまう。
「兎に角、今日の18時には私の家に集合しましょう。機材の準備とかもあるから葉山君と稲葉君は手伝いよろしくね」
「いや~……俺っスか?いや、ちゃんと撮影には参加しますけど、ちょっと色々――」
「女の子なら断っておいたから大丈夫っしょ」
「加奈!テメェ!!」
「はいはい、喧嘩しないの。いっとくけど、三奈木さんも手伝ってもらいますからね?」
「え~!?アタシ、コイツの悪行止めたのに巻き込みとか……萎える」
とりあえず機材の準備を早めにやって行動を開始しよう。
時刻0時1分――
あの後、バタバタと高坂先輩の家で機材の準備などをすませて例の廃墟の近くに来ている。
道中はタクシーを活用してきたが、その際に意味深な言葉をかけられたのを稲葉を思い出していた。
『君達、あの廃病院に行くのかい?』
『はい、俺ら心霊大好きなんで!』
誰とでも分け隔てなく話せるのは葉山の長所、タクシーの運転手にも友達の様な感覚で話せるのは凄いスキルだと感心する。
『心霊か……僕も長年この業界に身を置いているけど、君達と同じ人を何人も送ってきたよ』
『へぇ~運転手さんって此処の常連なんだ~?』
興味をしめした三奈木が景色を見ながら聞く。
『そうだね、まぁ僕は近くまで送るだけだから外装とかよくわかってないけどね』
困り顔で返答する運転手に高坂先輩も質問をする。
『あの……送って行った人は……、その後どうなったんですか?』
よく見ると、携帯電話を録画にしており編集に使うのであろう音声を撮っているのだろう。
こういう所はぬかりないなっとまたも関心するも、運転手から返ってきた言葉は意外……ではなく、想像した通りの返答だった。
『誰も返ってきてはいないよ。時間を指定してもらってね、メーターが上がっても良いからいつでも発進できる様にって……。
でも誰1人として返ってこなかった、だから毎度の事だけど、警察に連絡を入れて捜査、手がかりなしの失踪、おまけで僕は事情聴取……今では同僚や上司には死人
のタクシーなんて呼ばれて本当、嫌になるよ』
困惑した表示には疲れの色さえ出ていた。
それはそうだ、この人はただ目的地に客を送迎していただけで、客が戻ってこなくなったから警察に連絡を入れて捜査依頼したものの、疑いの目は運転手……
乗る時に少し表情が疲れた様に見えたのはこの事だったんだろう。
『す、すいません』
『あ、いえいえ!こちらこ愚痴をこぼしてしまって』
『廃病院……運転手さんは外装すら知らないって話ですが、噂は真相だと思いますか?』
その問いに少し間を空けて答える。
『どうだろうね、ただ昔……あの病院には名医が居たらしい、凄腕のね。でもある手術で失敗をしてしまって以来、おかしくなってしまったらしい』
『へぇ~どんな?』
『簡単に言えば、自分の腕は悪くない、ただ調子が悪かっただけだと、自身の手術に失敗を認めようとしなかったんだ』
『それでそれで』
ノリノリの葉山と三奈木は身を乗り出すかの様な勢いで話を聞く。
『認めようとしなかった名医は尽く手術を失敗して、藪医者と罵られる様になった。その期を境に彼はある事に着手する様になった』
『それって――もしかして、その……霊安室の一部を改造して』
『動物の解剖、人体実験、ありとあらゆる生命に携わる研究を行ったらしい』
『……』
冷汗が出る。ただ自分の自尊心を取り戻す為だけに、大勢の命を玩具の様に扱って……名医だって?ただのサイコパスな医師じゃないか。
『それ以降、夜中になると血だらけになった霊が出たり、生きたまま解剖された犬や猫の死体が何かを求め、縋る様に現れたりする様になって、当時働いていた人は
それを機に次々と辞めて行ったらしい』
『そ、そんな激ヤバならサツが黙ってないんじゃ?』
『そうだね、でも遅すぎた。警察が見つけた時は、自身の喉をメスで執刀した痕跡が残って彼は自殺した、結局名医の名は地に落ちたまま、藪医者としてのレッテルを貼られた
ままこの事件は幕を降ろしたはず――だった』
チラッと稲葉たちを見る運転手。
『君達みたく、此処を訪れる人が後を絶たない。中には事件の真相を突き止める為に来た者もいたけど、誰一人返って来ない。
もしかしたら、医者はその廃病院でまだ研究を行っているのかもしれないね』
『……生きた人間を使って』
『かもしれない、だから引き返すなら今のうちだよ。君達みたいに、まだ将来ある子には普通に過ごして欲しいと思ってる、余計なお世話かもしれないけどね』
確かに、あえて今の話を聞いて危険に飛び込む必要はないだろうっと稲葉は思った。
部活動による活動報告がなんだ?生きて居ればそれよりも大変な事なんて山の様にあるだろう。
此処で終わるかもしれないなら、稲葉は絶対にそっちを選ぶと思い、高坂先輩を説得しようと話をかけようとしたが、車が停車する。
『さぁ、お話は此処までだ。着いたよ』
『……この先に、廃病院が?』
『ああ。分かるかな?ライト、照らしてるのに向こうまで見えない……不気味だよ』
眩い光を発してるものの、先は見えず闇だけが一面に広がっていた。
『まぁ、今日も何もないし、早く終わらせて写メ撮って帰ろうよ』
『俺も俺も~、ぶっちゃけ話聞いたけど自業自得な奴にビビる理由なんてねーよ』
『……高坂先輩、あの』
『行きましょう、稲葉君』
『……』
説得は不可能のようだ。
順番に降りて機材を取りだしながら戻りたいと言う気持ちを心の中で叫びながら準備を進めていると、ドアを開けた運転手が聞こえる様に話す。
『最後に僕からのアドバイスーーいや、警告かな』
一瞬、運転手の顔がグニャっと歪んだように見えたのは?
『廃病院に入る手前で怪異が起きたなら直ぐ引き返した方が良い、正直僕は此処に居るだけでも気持ち悪いんだ。
徐々に見えない何かが迫っている様な……だから何か起きたら機材を捨ててでも早く戻ってくるんだよ!』
『ありがとうございます、行ってきます』
そんな運転手の最後の警告を受け取り、高坂先輩を先頭に稲葉たちは進むのであった。
道中は特に何も起こらず、ただ暗く不気味なだけっと言った感じだが、道中落ちていた衣類や飲み水、食べ物などが散乱している現場を見て状況が一転した。
『なんか……めっちゃきたねー』
『飲み水、コレ土でも入ってんの?――クサ!!』
『二人共不用意に障らない!稲葉君カメラと写真に収めて』
『分かりました』
運転手の最後の警告が今も頭の中で反響している、戻った方が良いとも自分の脳内が全力で逃げる事を提案している。
『OK撮ったわね?進みましょう』
『あの高坂先輩』
『なに?』
『……引き返しませんか?もうコレだけでも事件性ありますし、運転手の方も――』
『ダメよ。部の存続を賭けた最後の砦だもの、ちゃんと最後までやらなきゃ』
もう何を行っても無理そうだと判断した稲葉はそのまま彼女達に同行する事になった。
自分1人でも逃げ出せば良かったのに……だがふと後ろを振り向くと、さっきまで見えていた樹木すらも漆黒の中に飲み込まれたかの様になっていた。
多分、稲葉は立ち入ってはならない領域に足を踏み込んでしまったのかもしれない。1人で帰ろうとしても、帰れない。そんな気がした。
そして――
「ここが門か~でけぇー」
「な~んか、良いとこのお嬢様が通う学園の門みたい」
「でも中は、ヤバそうだけどね」
そんな3人の言葉を聞きながら稲葉は踏み入れてはいけない領域に踏み込んだと感じてしまった。
背筋なんてどころではない、全身が硬直し、下から徐々に寒さが増していく。
全力で頭が危険信号を送り、本能的にこの場から去れと叫び続けている。
「ッ!?」
「ど~した?お前もボーっとしないで手伝えよ」
「あん~れ?もしかして、稲葉ビビってんの?」
「そんな、稲葉君はもう心スポの常連なんだから……って、本当に具合悪そうね?」
「ねね!今稲葉撮ってみたらなんか映ったりして~?」
「面白いな!やろうぜ!やろうやろう」
稲葉はそれどころではなかった、確かに見てしまったのだ。
白衣を着たナニカがドアの前で自分達を観察していたのを見た。
問題はそれだけじゃない、白衣……あの白衣には返り血が付着しており、清潔感もなく、まるで見せつける様な感じ……まるでコレが自分のコーデとでも言いたげに。
「おいおい!ヤバ!」
ふざけていた葉山が携帯で撮影した写真を見て驚きを隠せないままでいた。
そんな葉山の携帯をのぞき込む2人の顔も驚愕の表情に変わった。
「いやいや、葉山さ~。加工なんて面白くね~ってば」
「……あの短時間で葉山君が加工なんてできる訳ないよ」
「つうか……なんで」
恐る恐る葉山の携帯を覗き込むと、そこには蒼顔のナース達が集合写真の様に後列に並び、真横には――先程見た白衣の男が並んでいた。
「……か、返り――」
瞬間、またあの背筋が凍るよな感覚が伝わる。
まるで帰るなっとでも言いたげの様に、そんな稲葉の様子を3人は気に留める事もなく領地に侵入していく。
稲葉も仕方なく歩み出すと、聞こえるはずのないザっと土を踏む音が同時に聞こえ、振り返るが、後ろにあるのは漆黒の闇一色であった。
「じゃ此処からは二手に分かれて行動しようか。いつも通りトランシーバと、スピリットボックスね。携帯とカメラの残量はちゃんと確認してあるから
1時間は持つから大丈夫」
「こっちOK~」
「私と葉山君は東棟を下から上に、稲葉君と三奈木さんも同じ様に、最終的には屋上で集合って感じだけど、老朽化で行けなかったらエントランスで。
地下もあるから、そこは最後にみんなで行こう」
「あ!待って、さっきの稲葉みたく何か映るかもしれないし、集合写真撮ろうよ!」
そう提案した三奈木は半ば強引に稲葉と高坂先輩を横に並ばせ写真を撮る。
「はい、チーズ!」
カチャ!っと言う音が聞こえた僅か数秒後にコロンっと何かが転がるような音に一同は反射的にその音の方向に振り返る。
「……瓶か?丈夫だな、コレ」
「やっぱり居るのね、此処に選んで良かったわ」
「……ね、コレ」
「ん?」
三奈木に渡されたのは携帯を見ると、映っていたはずの葉山の頭部が無くなっており、高坂先輩に至っては目元と口から血を流しているホラー画像となっていた。
「どうした?――おいおい、俺の頭!」
「私のも……立て続けにこんな事ってあるのね」
警告なんだろうか?
それともこれからこうしてやるっと言った怨霊達が宛てたメッセージなのだろうか?
稲葉と三奈木は何も起こっていないが、もし次同じように撮ったらどうなるのか?そんな好奇心と恐怖心の2つの感情が交差する中、内訳通り館内を探索する事になった。
エントランスから離れて行くにつれて三奈木が異様にくっついてくる。
「稲葉~、残念だったね~」
「な、なんの話だよ」
「高坂先輩と2人~っきりになれなくてさ」
「別に……」
高坂先輩と一緒に行動できなかったのは確かに残念ではあるが、それ以上に稲葉はエントランスで見た白衣の人物、その後の写真で映った怪異に恐怖していた。
止める事もできたはずだ、いや、今からでも?
そう考えてしまうも歩みは止まらず、やがて1つの部屋に到達する。扉は既に経年劣化によって崩れていた。
「此処は~、入院患者の病室だね~。な~んもなさそう」
「さっさと行こう。用事を済ませて早く帰ろう」
「え?マジで稲葉ビビってるの?まぁ~確かに、あの写メはビビったけど、でも――」
「写真の話はするな!」
つい声を荒げてしまう。
稲葉はあの写真と白衣の医師を重ねてしまっている、だから余計に恐怖してしまう。
今までの心霊スポットとは違う……いや、もしかしたら、気づかなかったか、向こうがその気にならなかっただけなのかもしれない。
でも今回は違う、タクシーでの話、着いてからの出来事、現在……悪い方向にしか進んでいない。
「「ッ!?」」
稲葉と三奈木は同時に振り返る。
遠いところから、高坂先輩達の方角だろうか?そこから食器か何かを落した様な音がしたのだ。
「……だ、大丈夫だってば~。以前も同じ事遭ったじゃん?」
「……同じじゃない、きっと。もう……」
その先は言えなかった、言ってはいけない様に気がした。
1分1秒を長く生きながらえる為ならば、まだ現実に起こってはいない事を先走ってはならない……ここではそんな気がした。
「行こう」
そうして1階を三奈木と順番に回って行く。
基本1階はほとんど診察室なのだが構造の作りがおかしい、全部患者の寝室になっているのだ。
2階西棟――
同じく、病室のみで診察室が何もない。
「なんか可笑しくない?なんで患者の病室だけしかないわけ?」
「ああ、普通診察室――ッ!?」
何かに見られた!……そんな感覚に見舞われた。
「どったの?」
「い、いや……その……」
「見られた?じゃスピボ出すね~」
砂嵐の音と共にモールス信号の様な刻んだ砂嵐の音が続く。
「え~誰か居ますでしょうか?」
だが何も帰って来ない、いや、何時もこんな感じだ、時間が経てば――
『た、助けてくれ!!』
「え?」
それはスピリットボックスから流れた音ではなく、トランシーバーから聞こえた声だった。
「葉山?なにが――」
『地下に!……返り血に染まった白衣の男が!!』
「白衣!?」
それはエントランスで見た人物だ。それに地下って――最後にみんなで行くって話じゃなかったか?
「おい葉山!なんで地下に!!高坂先輩は!?」
だがそれ以上何も聞こえない、その代わりに。
――ーヌ。
スピリットボックスにも反応があった。
「……あの、誰か……そこに居るの?」
――チーーージーーーーヌ。
何かを伝えようとしている、だが聞き取れない。
稲葉もスピリットボックスを使って少しでも情報を聞き出そうとしたが、そこでスピリットボックスに続きトランシーバーまで電源が切れてしまった。
「……あ~。本こわってやつ~?まさか稲葉達でなんかハメようとしてたり……とか?」
「する訳ないだろ!大体俺は此処に来て――」
コトンっと音がした。
物音、ただ置物が落ちただけだ、ただそれだけなのに――先程の葉山の先ほどの焦燥に駆られた声と白衣の男が直ぐそこまで近づいている気がした。
「行こう。高坂先輩と葉山を連れて直ぐに此処を離れよう!」
「お、お~け……戦闘は任せた」
そうして2人で足早に1階のエントランスに向かうと、そこには葉山が居たが――
「葉山!アンタその傷!?」
「な、なにが……あったんだよ」
「ッ!……わかんねーよ!急に白衣の奴が来て襲い掛かってきたんだよ!」
「高坂先輩は!」
「一緒に居たけど、俺が深手を負ったせいで……その」
稲葉は葉山の胸倉を掴み揺さぶりながら聞く。
「何があったんだよ!!なんで高坂先輩が居なくて、お前は!」
「ちょ、稲葉落ち着きなよ!葉山だって重症なんだから、もう少し優しく」
「わ、わるい……」
気が動転してしまっている。
何がどうなっているのか分からないまま、地下と呼ばれた場所に目を向ける。
「お、俺はもうパスだ。あんなバケモンが居るなら最初から――」
そう言う葉山はドアノブを開けようとするも、ガタガタと物音を立てるだけで扉が開く事はなかった。
「なんで開かねーんだよ!?」
「葉山……前」
「あ!?――は?」
「……」
三奈木の声に扉の前を見ると、眼が無い者、鼻から下が切り抜かれている者、腕のない者、硫酸を浴びた様に皮膚が爛れた者、そんな、者達がエントラスの扉の前にいた。
「……んだよ、コイツ等」
「……半透明じゃん」
幽霊は居る、稲葉達は信じる側だがそちら側にはまだ完全に踏み込んで居ないと思っていた。
だが今回の出来事で関心に変わった、稲葉達は踏み込んではならない領域に確かに足を踏み入れてしまったのだ。
少し前――
葉山と共に行動をしていた高坂は現在、旧東棟である地下の病棟に居た。
「つーか何で地下からなんですか~?」
気だるそうに聞く葉山に高坂は返す。
「地図を見たら地下のフロアだけが1階から3階にかけて構造が広く作られてるのが特徴なの」
「先に本丸を見てからでも上層は良いって感じですかね……にしても」
葉山は指で看板を指す。
「何で地下に診察室が集合してるんですかね?」
「そうね、普通は1階か2階とかなんだけど……地下に作ってるのは此処の院長の拘りなのかもね?」
そんな変な拘りを持っている院長がどんな人物だったかは当時の記事と、先ほど車内で聞かされた内容通りである。
かつては名医と言う称号を持っていた院長はどんな患者の治療も直してきた。
己の腕に絶対の自信があり、来た患者は必ず助かる――夢のような病棟。
だが悲劇は突如として起こった、60代の患者の手術に立ち会った院長は1つのミスで患者の内臓部分に傷をつけてしまい、それがきっかけで止血が止まらず死亡。
元々年齢が年齢だけ、手術に耐えうる力など持ち合わせていなかったのかもしれないが、それでも今まで救ってきた功績が彼の現実へと向ける目を盲目としていた。
起きるべくして起きた悲劇――当然、患者の家族からは糾弾され、当時メディアは奇跡の天才医師から藪医者と短い呼称に変更され、それは瞬く間に広がっていた。
「海外からのオファーも合ったそうよ。その自慢の執刀、腕が欲しいって、神の子とまで呼ばれていたらしいもの」
「へー」
興味なさそうに歩く葉山に苦笑する高坂は話を続ける。
「それ以降、彼が担当医って知ると患者は次々と別の医師に変更してくれって懇願したけど……噂の効果は絶大で、それを機に辞める医師も後を絶たなかったそうよ」
「つまり人手不足だから、必然的にその名医の医師が担当をする事になったって話ね」
「そうね。当時の記事を見るとその光景はこれから実験室に運ばれるモルモットの様、なんて言われてるわ」
「1つの過ちでそこまで追い込むとか、相変わらず世間の肩身は狭いっスね~」
「人の命を預かっているからこそ、その責任は重大だったって事ね。世間のバッシングも仕方ないって――」
そこまで言いかけると、目の前に落ちていた紙切れが目に留まる。
正しくは写真だった。
「んだコレ?」
拾いあげてみると、そこには拘束具を嵌められた患者と血で濡れた手袋を嵌めた白衣の男が映っていた。
「これって噂の実験ってやつじゃねーか!」
「酷いわね、これをした人間も、撮った人間も」
「『観察記録1989年10月12日深夜』……気持ちわるい」
「あ、ちょっと!写真撮りましょう!また何か映るかも!」
葉山を注意するとまるで捕まった犯罪者が自身の名前のプレートを掲げる様に、写真をこちらに向ける。
カチャ!っと写メを撮ると、更に恐ろしい事が起きた。
「……何コレ」
「どったんですか?」
覗き込む葉山も流石にその光景には驚きを隠せなかった。
なぜならば、先ほどまで映っていた患者が高坂に変わっていたのだから。
驚く2人はこれまでの経緯と稲葉の様子のおかしさにようやく頭が追いついてきたのだ。
「帰った方が良いのでは?」
「もう少し探索したいと所だけど、立て続けに心霊現象を入手できると、そうね……」
しばし考えた末に高坂は一度西棟を探索している稲葉達と合流する事に決定し、後ろを振り返るとそこには――
手術室――
「なに……コレ」
「は、はぁ!?なんで!さっきまで廊下だったのに!!」
後方が何時の間にか手術室に変化していたのだ。
ノブに触れてもすり抜けたりする事はなく、冷たい金属の感触が伝わるのみ。
「は、葉山君!に、逃げましょう!」
「で、でも何処に!」
「反対よ!兎に角、此処から離れてそれから――」
引掻いた音の様な金属音が響く。
ゆっくりと開閉する扉、そしてそこから漂う冷気と腐臭の様な臭いと共に現れたのは、返り血を浴びた白衣の男だった。
「稲葉の横にいた、医師!」
「は、はや――」
ゴン!っと鈍い音が響くと、高坂の後ろにいた別の白衣の男がバールの様なもので頭部を高坂に振りかぶったのだ。
高坂は頭から血を流し動く事はなかった、ただその光景にこれまで我慢していた絶叫が口から叫び出す。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――!!」
我武者羅に走りその場をあとにする。
ただ息を切らそうと走る、後ろから白衣の男が追いかけてくるが振り切る様に走る。
途中、蒼顔のナースもこちらを捕まえようと腕を振りかざして来たが、咄嗟に回避して逃げるも、次々と部屋から血だらけの……恐らく患者や動物なども飛び出してきており、
明確に葉山に狙いを付けていた。
「く、くそ!くそ!なんだよ、コレ!!」
エントランスまで逃げ切れば逃げられる、後の事は警察などに任せれば良いだけの話だ、早くここから1秒でも早くという気持ちで走り続けても、道は一行に目的地には付かな
い。
咄嗟に出したトランシーバーで稲葉達に現状を伝える。
「た、助けてくれ!!」
大声で叫ぶ、思ってる事全てを。
「地下に!……返り血に染まった白衣の男が!!」
っと走りながら喋っていた為、足元にあった物に躓き、トランシーバーを落としてしまう。
後ろには大群の霊達が溢れかえっており、今にも葉山を飲み込もうとしていた。
必死に体制を立て直してまた走り出す、そんな永遠にも見えたマラソンレースは意外にも突如終わりが訪れるのであった。
「え、エントランス?」
そこには見知った顔が2人揃っていた。
何処まで走ったかは分からない。
途中、3人共混乱していて散り散りになってしまったから。
稲葉は地下に来てしまった、他に行く場所は合ったかもしれないが、高坂先輩が地下に連れて行かれたと聞かされ気になっていたのも確かだ。
地下の印象は陰湿で不気味な空間――それは間違いなく、より鳥肌が立ったのは病棟の地下に小児内科、内科、外科、そして――
「手術室……なんで、電気なんて流れてないのに!」
地下に全ての設備が集中していた、なぜ地下にと言う説明よりも今は赤く点灯している手術中の看板だけが目に映っていた。
扉を開くと金具臭い匂いが部屋中を満たしており、手術台の上には高坂先輩が拘束具で手と足を固定されていた。
舌は――目の前の血の指紋が付着したビンを見れば一目瞭然であった。
切り取られていたのだ。
高坂先輩の顔面は涙と鼻水、そして自身の流れる血液の返り血でグシャグシャになっており、そんな高坂先輩の足にノコギリを前後に振り込む。
「ごほッ!!??」
切り取られた舌による流血で、自身の血でまともに奇声すらも出す事ができず、血で溺れそうになっている。
唯一自由が利く首を横にふり、拳を開き、残っている足を動かす。
悪魔の様な光景――
「なに、して――」
だが稲葉は背後の存在に気づく事ができなかった。
此処は廃病院……手術中に執刀医1人が現場に居る訳もなく、彼をフォローする者に邪魔をされる。
勢いよく殴られた後頭部、意識が遠のく中、霞む目の先には暴れる高坂先輩と黙々と作業をする執刀医の医師だけが残されていた。
一方――
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!」
部屋の片隅で震えるのは三奈木であった。
途中3人はバラバラに逃げ出すも、あとに合流した葉山と共に逃げていた。
だが道中、階段を踏み外した葉山は追ってくる霊の群れにダイブするように飲み込まれ、立てられた歯や爪は葉山の肉を抉り、まるでゾンビ映画に出てくる様な
モブキャラが死ぬような、いや、切れた腕を無理やり捥いでいた光景はまるで調理前の鶏肉を、骨を取りだすのを見ているかのようで、生々しい死に際だった。
葉山の最後の目線は三奈木を捉えており、救いを求める様な眼差しであったのを覚えている。
だからこそ余計に恐怖してしまう、あの霊の群衆に自分もああして生きたまま食い殺されてしまうんではないか?っと。
――ゲ――――ヌ。
「ッ!?」
先ほどまで電源の切れていたスピリットボックスが自動的に反応する。
稲葉と共に居た時は何を伝えていたのかは不明だったが、このタイミングは最悪すぎると、何とか音を消そうと衣服を包めて音を軽減させようとするも、音は無慈悲になり
響く。
そして今度は鮮明に聞こえてしまう。
――タスゲテ。
―――ミンナ。
――――シヌ。
「ッ!?」
勢いよくドアが開けられたと同時にスピリットボックスも音が消える。
もう居場所はバレていると言わんばかりに、ゆっくりとその存在は近づいてくるものの、一向に姿を現さない。
恐る恐る閉じていた目を開けると、そこには何もなかった。
驚く程、何も。
ゆっくりと立ち上がり扉の前に行き、息を殺しながら静かに左右を見るも、何も居ない。
「……」
後ろを振り返るも、誰もおらず前!っと思うも何もない。
まるでジワジワ焼かれる焼き魚の様な気分だ。
だがやがて1台の車イスがこちらに向いて置かれているのに気付いた。
「な……に」
車イスはゆっくりとした動作でこちらに移動してい来る。
誰も操縦などはしていない、それだけ脅威なのに何も感じない――が
「ひぃッ!!」
後ろから肩を掴まれた、しかも両肩を、2人の看護婦に。
「な、なにするの……い、いや!嫌だ!嫌だ!やめて!!」
車イスに強引に載せられ、手と足を動かない様に固定され2人の看護婦に連れられて向かった先は――
『事件室入口降下エレベーター』
そんな名前なんて聞いた事ない。
実験室?なんの?いや、頭で理解したくないだけで分かるのだ、これが何の実験かを。
此処に来るまでに資料は見せてもらった、此処の医師は不法な実験を行っていた事で有名だと。
つまり――
「やめて!!実験なんて、嫌だー!!」
そのままエレベーターは無情にも開きゆっくりと棺を焼却炉に入れる様に連れて行かれ、そのまま降下してゆく。
「いやだぁぁぁぁ!!」
エレベータが目的地に到着すると、複数の白衣の医師がそこにはいた。
目は既に白目を剥いて生気がない。
あるのは血で乾いた台座が1つ、綺麗に並べられた――恐らく人体を解体するであろう道具の数々、凶器となり得る物が消毒もされずに置いてあった。
「いやぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
甲高い声で叫ぶ事しかできない三奈木は自分が情けないと思い、どうしようもないクズだと自覚した。
面白半分で来るべきじゃなかったと後悔しても、時間を巻き戻せる訳もなく、台座に載せられ固定されてゆく。
暴れようにも石造になったかのように身体は動かずそのまま実験が開始される。
目を開かされたと思った次の瞬間、目を押す様に器具を押し込まれ痛みで悲鳴を上げるも、別の個所からも凄まじい痛みを感じた。
指を……指を第1関節、第2関節と順番にバラして解体しているのだ、しかもわざわざ痛みを感じやすくするための据歯状の小さな刃物で。
「痛い!痛い!痛い!イタアァァァーーーーー!!」
ただ叫ぶだけの喉にもメスを入れられ、医師の興味は更に腹部に向かい、包丁を差し込まれ凄まじい腹部の痛みに苛まれる。
どうして自分がこんなめに……後悔だけが残る。
――俺モソウダッターー
聞こえないはずの声が聞こえる。
それは――ここで解体されたであろう被害者の魂たちの声であり、そして亡霊達であった。
実験は続く、三奈木加奈が絶命しても。
そして丁寧に保管され、医師たちは満足そうに実験を終えたのであった。
冷たい感触に目を覚ます。
光のライトが眩しい……手足は動かす事ができず、首を動かす事にのみが許された状況。
「あ……ああ……こう、さか……せん、ぱい」
無残にも生きたまま手術と言う名目の拷問を終えた高坂千沙と人物の肉片のみが傍らに残っていた。
医師たちはそれを丁寧にホルマリン漬け――いいや、適当な液体の中に放り込み、名前を書いて棚に飾る様に収納していく。
本能的に次は自分の番と言うのが稲葉はわかってしまった。
目の前でろくに手入れをしていない血の乾いたゴム手袋を装着して囲まれる。
もう既に手術の工程は見ている、あとは――死ぬまでのその瞬間まで
「があぁぁぁぁぁぁ!?」
ハンマーで足、脛の骨を折られまるで肉を解す様に砕いた骨を揉み解していく。
その合間に指を1本、また1本切り落とされ、次は耳に何かを入れられたと同時に、鼓膜を破られ凄まじい激痛が襲う中、目を力強く開かされ、
くり抜く為の器具であろうそれを思い切り挿入――鮮血が迸る。
そしてやがて口を開かされたと思えば、歯を1本1本丁寧に抜かれて行き、最後に辿り着いたのは、高坂先輩の舌が瓶に入っているのを思いだす。
だが脳がそれに追いつく前に既に刃は振り下ろされており、綺麗に舌を切り取られたと思いきや――
「――ッ!!?」
まるで豚のタンの処理の如く、根本まで刃を通し、高坂先輩よりも深く舌を切り取られ、自身の血で溺れそうになる。
金具臭い匂いと、痛み、それしか感じなく、それはまるで延命をしつつ命が尽きるまで行われる手術と言う名の実験であった。
意識が何故保てるのかは分からない、だが痛みが脳を覚醒させ、そしてまた悶絶のサイクルに飲み込まれ、何時しか自分の肉体の一部が運ばれて行くのを眺めているのを
遠くから見ている様な感覚――否、見ているのだ。
その瞬間、自分は絶命したのだと気づかされ、この廃病院の霊として束縛されてしまったと気づいたのだった。
エピローグ
前日、東京都在住の東京都遠野目高校に通う男女学生4名が行方不明となり捜索中。
当件につきましては学校の教員から有力な情報として部活動の為、とある廃病院に向かった後、行方不明となった事を発覚しました。
警察は、当初送迎をしていたタクシー運転手から道中の彼らの行動に関する一部や教員からの普段の生活などを事情聴取し、こうした行いが日常的に行われていたか
確認。
当件は未解決事件として現在、遺族に捜索願いを申請され捜索中であります。
又、もし廃病院以外で目撃情報があればコチラにご連絡をお願いします。
「……すいません、辞めさせてもらいます」
「……そうか、まぁ死人のタクシーなんて呼ばれ方したらな、やる気もなくなるわな」
「いえ、それだけじゃないんです」
「何だ?」
「出るんです」
「出るって……何が?」
「夢に……送って戻らなかったお客様が、私を見て恨めしい顔で、睨んでくるんです」
「……わかった、今は休め。自分が壊れちまったら人生つまんねーからな」
「はい……」
その後、運転手は自宅で自らの身体を吊って死んだとされ、また事件となった。
例え運転手が仕事を辞めようとも、噂が消えようとも、この呪いは解く事ができない。
人は好奇心旺盛な生き物だ、何か大きな刺激がなければ人生を退屈と感じ、刺激を求めてしまう。
だが、決して曰く付きの場所へ向かう際は慎重に選ぶべきだ。
取り返しのつかない後悔に苛まれてしまう……だけなら救いだろうが、死して霊となり、怨霊渦巻く病棟に縛られる永劫の苦しみを味わうぐらいならば――
素直に行かないっと言うのも勇気だ。
好奇心で終わらせよ、決して近づくべきなからず、試す事ならず、命を大事に。
例えつまらない人生であろうとも、輝く瞬間もあるのだから、そのあたり前の日常を大切に生きる選択を――。
いちよ題材にした所があるモノですが、分かっても、見つけても、遊び半分で行かない事を推奨します。心霊スポット見るのは好きだけど、行きたいとは……思わないな。




