表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひとりぐらし  作者: 雨宮 叶月
氷室伊織の場合

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/52

第51話 沈黙

そのサイトは、それで締めくくられていた。



「……………」


この感情を、うまく表すことができない。


この少女が、どうしたら救われるのか分からなった。

生半可な言葉じゃ響かない。かといって連れ出すこともできない。


どこにいて、何をしたって、彼女が心から笑える日は来ない。


そんな現実が、この世界にある。




俺は再考した。


「見えてはいけないもの」とは何か?


俺が見た()()は、少女Eの性格とはかけ離れているように見える。



そして、なぜこのサイトの紙が、クローゼットの中にあったのか?


入居条件には、『クローゼットは()()()()()開けないでください』とある。


この『できるだけ』は、開けられたくないが、開けられても許すという意味なのか、それとも開けてほしいが、そこまで強くそう思っているわけではないという意味なのか。



……分からない。



ならば……


「見えてはいけないもの」と、直接出会うしかないのか。



(……怖いな……)



今までたくさんの人が失敗してきたというのに、俺なんかが成功するとは思えない。



……でも、やるしかない。

俺にできることは、それくらいだから。



でも今日はやめておこう、また…明日の夜くらいに。



次の日、俺はいつも以上に集中して大学の授業を受けた。


それとは逆に、移動の時はぼーっと空を見上げた。


青い空に白い雲が溶け込んでいて美しい。



いつもと同じはずのチョコチップメロンパンが、なぜか美味しかった。メーカーが違うからか?



友人とのコミュニケーションも、このまま時間が過ぎてほしくないくらい有意義だった。



大学が終わると俺はスーパーに寄り、夕食の素材を買う。



ハロウィン仕様に染まった店内は、どこか胸を温かくさせた。


……誰かのためを想って、飾り付けられている。


俺は不穏な考えを頭から追い払った。


そしてレジへと向かい、スーパーを出る。



ざあっとした風が体を吹き抜けた。


空は、オレンジと黒の境界線が曖昧になっている。


まだ冬の季節ではないのに、どこか肌寒い。上着を着ればよかったかもしれない。


そんなことをふと思うこの日常が俺の人生に刻まれていると思うと、複雑な気分になった。



マンションに帰り、鍋に火をかける。


優しい匂いが部屋に広がり、余った時間で俺は椅子に座って本を読む。


食事が終わり、静かな空間に一人というのもなと思ってテレビをつけた。



大学のレポートがまだ終わっていないと思い、少し騒がしいリビングでペンを執った。



そうして時間は過ぎていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ