第50話 少女Eの想い⑨
いつだって私が振り返ると、後ろでみんなが笑い合っている。
誰も私を見ない。
でも別に良かった。私が我慢することで報われると思ったから。報われるなら、どんな仕打ちだって耐えて見せたのに。
神様は私から目をそらした。
他の人から見たら私の悲劇なんてちっぽけなものかもしれない。私より苦しんでいる人もいるかもしれない。
それでも。
それでも。
私は救われたかった。認めてもらいたかった。
私の心はもう壊れたというのに、私はまだ『人間』だ。
私が本当に欲しかったものは手に入らない。
他の人が欲しいものを手に入れても期待外れ。
私は頭が良いと言われる。
私も自分が馬鹿だとは思わない。
でも私は、何かに特別秀でているわけではない。
勉強ができるのも、中1の頃から頑張って勉強したから。
大人びて見えるのも、そう演じているから。
私の特技は何だろう、とよく考える。
周りのクラスメイトは、部活でやってるテニスとか、美術とかあるのに。
私には何も残らない。
《《私》》の代わりなんて、いくらでもいる。
私がいなくたって、この世界は回り続ける。
別に悲しいわけではない、虚しい。いや同じか。
今日も私は、自分の存在意義を感じないまま息をする。
どうして私以外の人が輝いて見えるのか考えた。
『生きたい』という気持ちが、その人を強くさせるんだ。
『生きること』に執着する人間は、たとえ何も持っていなくても美しい。
それに比べて、絶望する人間は『闇』だ。深い深い場所まで落ち続ける。
私だって、本当は生きたかった。人生を充実させたかった。
でも、もう遅いんだよ。
私の心は、無理やり壊された。本人は自覚もせずに。
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今日は■■が自販機でジュースを奢ってくれた。
ずっと前から仲がいい。この世界で一番好きな人間は、■■だ。
■■は、私のことを理解してくれている、と思う。
でも、友達なんて脆い。■■のことだって、完全に信用したわけじゃない。
でも、■■は美しい。
笑顔を見ているときは、私も嬉しくなるし、話を聞いてくれる。
あの目は、偽善じゃなかった。
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受験まで日が迫ってくる。
でも、なんとなく感じるんだ。私は落ちるって。
ずっと、『最後』は成功しなかった。『過程』でしか上手くいかない。
過程が良かったって、意味がないのに。
どれも本当にいきたい高校じゃないし、まあいきたい所もないんだけど。
頑張っても
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第1志望の合格発表を見た。
不合格だった。
何回も自分の番号を探した。中学受験の時もこんなことがあった気がする。
気分が悪い。分かってたはずなのに、ショックがひどい。
でも、今からもっと辛くなるんだろうな、体。
夜通し罵られて、怒鳴られて、理不尽なことで責められて、叩かれる。殴られる。
いつから変わってしまったのだろう。なぜ私がこんな仕打ちに耐えなければならないのだろう。
■■に、「ありがとう」って言ってきた。もう会えないと思うから。私自身、気持ちに整理がついてない。
また報われなかった。
頑張ってきたのも意味なかった。
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公立のほうは受かった。でも母の機嫌は治らない。
話が通じない相手に正論言っても無駄だ。
私がいなければ全部解決するんだって。私がもっと頑張れば、母の話を聞いてれば全部上手く行ったって。
何で私ばっかり。私は幸せになれない運命なんだね。
もういいよ。
もういいから。
だから、包丁を手に取るのをやめて?
私が悪かったから。私が頑張らなかったから。私のせい。それでいいから、ねえ。
痛いのは怖いよ。
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これを読んでいる貴方へ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
お願いが一つございます。
誰かの、その痛みに、絶望に、気づいてください。
これは警告です
誰かに愛されたかったなぁ。
必要とされたかったなぁ。
『死ぬな、生きろ』って、本心から言ってほしかったなぁ……




