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ひとりぐらし  作者: 雨宮 叶月
氷室伊織の場合

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第49話 少女Eの想い⑧

きっとみんなの目には、私は「反抗期」として映ってる。


違う。違う。そうじゃない。


貴方達はずっと気づかない。


目の前の人が、何かを我慢していることを。



目の前の人が、苦しんでいることを。



自分の言葉が、どれだけ目の前の人を傷つけたかを。




あんなんでいい学校に行けるはずがないって?




英語ができても、数学、理科ができてもって?


好奇心がない?




ねえ、私のことを一度でも肯定したことがあった?




推しを作れば悪いところばかり言って、馬鹿にする。

だから私はその方向で癒しを求めなくなった。




私の意見をすべて否定した。

だから私は自分の意見を言わなくなった。



私に意見を求めたくせにそれを全部嘲笑った。

だから私は学校で意見を言うのが怖くなった。




私の努力を、意味ないと否定した。

だから私は、自分に自信が持てなくなった。



私とあんたは違うのに。

感じ方が違うように、勉強法も違う。




気づいていないでしょう?




殴られたから叩き返した。



事実とは違うことを言ったから言い返した。




私が嫌だといったことを何回もやられた。

本当に忙しいから忙しいといった。





それだけ。それだけなのに。



私から殴ったことなんて一回もない。私からあんたを否定したことなんて一回もない。




涙も震えも止まらない。




先生、あなたも気づいていないでしょう?



私が作文に書いた、親から精神的暴力を受けている女の子。


呼び出されて、今その子はどうなんだ、って聞かれた。



心配した、助けになりたいって。


私はなんとか考えて返事をしたけれど、すぐに嘘だって分かるでしょう?

その子の設定が、私と似ているって分かるでしょう?



助けになりたいって、じゃあたとえ私が助けを求めたら何をしてくれるの?


話を聞いて、「頑張って」としか言えないでしょう。


親を呼んで、話し合いをさせて、強引に和解させようとして満足するでしょう。




ねえ、先生。




その子、実は私なんだよ?



私は完璧な演技ができない。




何度もボロを出す。




でも、結構上手く行ってるなら良かった。





良かった?




分からない。



「反抗期」は、親から愛されてる子が、親に()()()()()反抗したい時期のこと。



私は違う!!!



私は。


____________________________________













助けて









____________________________________



私は中学3年生になった。

それと同時に、1年生の時担任だった先生が、また担任になった。


毎日が怖い。どうして?ねえ、どうして?



やっと、他の先生の印象が戻ってきたのに。いや、でももう生徒会じゃないから…そんなこと関係ないか。



_______________________________



辛い



_____________________________________

今日は「学校に行こう」みたいな取り組みが学校であった。


私たちは何も知らなかったし、参観日では決してないと分かっていた。


母は「行かない」と朝に言っていたので、それで安心した。

そういうのは、学校が教育を頑張っているという証拠として活動しているだけで、保護者が来たって迷惑なだけって、母も分かっていると思った。


そう、思っていた。



最初は音楽だった。


歌っているときに、一人の姿が見えた。


誰かの保護者が来たのかと思ったが、そこからこちらを見ているその顔は、私の母だった。


頭を殴られたような気がした。


私の母以外、誰も来ていなかった。


後ほど、クラスメイトに「ーーさんのお母さん、来てた?」って。


心臓がバクバクして、目の前が何も見えなくなった。


それだけならまだ許せた。


でも。


美術の時間に、やけに先生たちがドアを動かしているな、と思った。


そのうちそんなことも忘れて、振り返った。


母が見ていた。


絶望した。

帰ったと思ったのに。


……みんなに見られている。

先生たちが気を遣っている。


痛かった。心臓が。死にたかった。死にたかった。


ただ単に恥ずかしかったんじゃない。


ただ一人。変な服装で、そこに突っ立っている。


嘘をつかれた。



心臓がバクバクとして、集中できなかった。絵が上手く描けなかった。



帰り道、どうやって母に伝えようかと思った。


言いたくなかった。でも言わなければ分からない。

どうせ、最終的には私が「悪」にされて、殴られるんだろうな、と思った。


それと同時に、どうして私がこんな思いをしなくちゃならないのかと思った。


家に帰ると、母は全力で言い訳をしてきた。


ナプキンを届けたかった、先生の顔が見たかったって。


美術室に入ったのも、年配の先生に何回も勧められたからだって!


ああ。


どうして人はこんなにも変わってしまうのだろうか。



はっきりと「迷惑だった」って伝えた。私は殴らなかった。ちゃんと言葉だけで。


それなのに、分かってもらえなかった。


私が教員の立場でも、ドアの外にいる保護者に声をかけると思った。



母は、どの先生が、誰が、私の悪口を言っていた?としか聞いてこなかった。



何もかも笑って誤魔化す。



もう嫌だ。もう嫌だ…。



この人は、自分の醜聞にしか興味がない。


あんたにとっては一時で「小さなこと」で終わるんだろうね。


でも、でも!


私は、これからも学校があるんだよ……。



小学校の時だって、同じことがあった。



私との約束は毎回破るくせに、なんで私が従順じゃなきゃいけないの?



…父が帰ってきた。


その途端、母は味方を見つけたと言わんばかりに、自分に都合のいい事実を作った。


『寝れなかった、私は苦労して学校に行ったのにあの子は!』


私に対しても、もう怒るから!と喚いた。



また、私は「悪役」。



「かんしゃくを起こした」、手のかかるわがままな子だ。


この話はこれで終わり、どうせこれからも今日のことで罵られる。



なんであんたが怒ってんの?


怒りたいのは私のほう。涙が止まらない。泣いた。泣きたい。



なんで私がこんなにもみんなにいろいろ言われなければならないの?



せめて、欄にチェックだけして帰ったら、何も言わなかったのに。



自分を正当化したいだけでしょ…?



死にたい。死にたい。苦しい。



なんで?


_________________________________________




通知表が最悪だった。


『消極的な性格』って何?



私を受からせる気ないんでしょ?


先生たちのお気に入りの子を、良いところに進学させたいから。


私の何が癪にさわった?



自信がない…?コミュニケーションが苦手…?新しい挑戦に抵抗がある…?

他力、本願……?



情けない。

そう見えたのかもしれない、でも、先生たちはこれまで私の何を見ていた?


たくさん自分から挑戦したよ…?自分だけの力で、賞だってもぎとった。

ほかの言語に興味を持った。検定も受けた。


呼びかけ?

確かに先生たちから見たら少なかったかもしれない。

でも私はちゃんと、やってたよ。



見て見ぬふりをしたのは、貴方達のほうじゃない。



ただ嘆いてるだけの人とは違って、私は明くる日も明くる日も努力した。



時間がない。でもこの地獄に耐える時間が欲しいわけじゃない。





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