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ひとりぐらし  作者: 雨宮 叶月
氷室伊織の場合

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第34話 鶴野さんの話③

「………え」





「N先生は、高原さんに、彼女に非があることを無理やり言わせようとしていました。空気が最悪だった。でも、次にN先生が言った言葉がすごく印象に残っています。『まあ、教科書はあるけど』。教科書とかも忘れたらもっと言えたのに、っていうニュアンスを感じて、彼女が悪い、かわいそうという感情がごちゃごちゃになって複雑な気分でした。『大丈夫?』と声を掛けましたが、大丈夫だと。」









「……言葉が出ません。先生が……」







「……それに、担任の女の先生もひどかったですね。何回も何回も呼びかけを強制して。担任の先生の何かの言葉がきっかけで、高原さんは呼びかけをし始めました。彼女の笑顔を見ることは、だいぶ減ったと思います。まあ終わりに担任の先生は妊娠、N先生は転勤でいなくなりましたが。」




鶴野さんがすうっと息を吸う。






「……私、後悔してるんです。言い訳になりますが、当時はまだ幼くて。

あれは音楽の授業のことでした。高原さんと一時的に同じグループになったんです。歌うのですが、彼女は声が小さいし、弱々しかったので『高原さん、児童会でしょ!?委員長なんだからもっと頑張ってよ』と言ってしまったんです。彼女が先生に怒られたり、注意されたりするのを見て私のほうが上だ、私が引っ張らなきゃって思って。」






「………」








「児童会じゃなくて生徒会、委員長じゃなくて副委員長だし。彼女はあれでも頑張ってたって、今では分かるんです。…私は彼女に良いことを言ったつもりでしたが、本当に内容は適当で。…あんなひどい事件になって、彼女は家でも学校でも居場所がなったんだって気づいて、本当に胸が痛いです。……私が知っていることはこれで以上です。」





「……話していただきありがとうございました。参考にさせていただきます。」






「いえ、こちらこそ。」




鶴野さんはそう言って軽くお辞儀をした後、仕事に戻っていった。






……高原さんも生きていれば、こんな…。





俺はその考えを振り切った。





俺は「見えてはいけないもの」について解き明かし、戦わなければならない。





(でも、高原さんも大変で、辛かったんだなぁ……)






ゆっくりと考えながら会社を出た。




そして、あの部屋へ帰るために足を踏み出した。




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