表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひとりぐらし  作者: 雨宮 叶月
氷室伊織の場合

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/52

第31話 記憶③

 恐らく夜だ。






 寝室のベッドの上。




 俺が知っている寝室より広い。





「この馬鹿が、お前に心臓があるわけない!国公立に入れるわけがない。あの子とか頭いい人はみんな90点以上、いや95点以上なんだから。」



母親が声を荒げる。だいぶうるさい。






「…分かってる。私は全てが馬鹿でゴミ以下。あの子は天才、優秀で東大行けると思う。そう、私には価値がないよ。」






「ようやく分かったの?自分がなんでもできると思ってるからこんなことに」






「っそんなこと思ってない!」






「黙れ!隣の人が迷惑でしょ!?」






「…じゃあ、眠らせてよ。私に話しかけないで、時間見てよ…。」






そう言うと母親は黙った。しかし、数分後にはまた罵る言葉が聞こえてくる。





父親は見て見ぬふり。母親は寝たのか、ようやく静まった夜中、布団を被り、手で顔を拭う。






「…っ、はぁっ、っ、ふぅっ、ぐすっ、ぅ、どうして?どうすれば良かったの?っ」




涙が止まらない。声を出さない、大人みたいな泣き方。小声でつぶやく言葉は、重い。






俺は声を殺して泣き続ける彼女を見ているしかできなかった。










その時だった。














…視界が黒く、そして赤く染まる。







そして……
















………血まみれの顔と、大きい黒目が、口を「ア」の形にしてこちらを見ていた。









「ぅわっ、あ、…………………………!」








恐怖で声も出ない。






ガタガタと震えていると、ふっと消えた。













「う、…………!」




目が覚める。





見上げると、目の前にはクローゼット。戻ってきたようだ。





俺ははっと息をのむ。




(そうだ、時間……!)





慌てて腕時計に目をやる。







(……1分くらいしか進んでいない……)





驚きつつも、俺は思う。






まだ、覚悟が足りていない。






(もっと、知らなければならないことがたくさんある)






俺はよろよろと立ち、大学へ向かうために玄関のドアを開けた。






天気は曇り。しかし、太陽の光が強くて曇りだとは思えない明るさだ。






俺は木下さんから教えてもらった同級生のうちの一人、鶴野さんに待ち合わせのメッセージを送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ