第3話 管理人さん
夜風駅を出て、徒歩8分。
管理人さんである、泉悠人さんと待ち合わせをしていた場所に着く。
大きく深呼吸をして、インターホンを鳴らす。
ピンp、、、
「え…?」
チャイムが何かに遮断されたような音。
しかしすぐ泉さんが出てきた。
「君が宮本叶恵さん?どうぞ!」
茶色の短髪の、20代くらいのお兄さん。
「お邪魔します…」
恐る恐る入る。
「ごめんね、インターホンの音ちょっと壊れてるんだ、気にしないで?」
「はい…。」
お茶を出してくれた管理人さんを見て、私はあることに気付く。
「右目、眼帯されてるんですか?」
泉さんはしれっとした顔で答える。
「え?ああうん、かっこいいでしょ?」
「そう、ですね」
かっこいいという理由で眼帯をする人なんて、初めて見た。
何とかそこは気にしないことにする。
泉さんは正面に座り、資料を見せてくれた。
「宮本さんの部屋は、4階の404号室、一番奥だよ。キッチンがここで、トイレと浴室がここ。で。これが一番大切なんだけど、ここが寝室。毎日、絶対にこのベッドで寝てね。睡眠薬と電灯は、必要ならいつでも言って、貸し出せるからね。何か質問はある?」
「特にありません、ありがとうございます。」
そう言うと泉さんは部屋の鍵をくれる。
「何かあったらいつでも相談してね。頑張って。」
「はい!」
なんだか不思議な人だったな、と部屋を出る。
この時私は、「頑張って」という言葉が新生活と大学のことだと思っていた。
□
ガチャッ。
新しい自分の部屋の鍵を開ける。
「わぁ、綺麗…」
新築と言ってもいいくらい整っている床と壁。
そこに、荷物が入った段ボールが積まれている。
「…片付けはゆっくり進めるか」
目をそらした。
部屋を探索しながら、寝室にたどり着く。
一部透明なガラスを使ったドアからは、中が見える。
私は首を傾げた。
「至って普通の部屋なんだよな…」
少し荷物の整理をして、簡単に夕食を作り、食べる。
窓からはオレンジ色に光った太陽の光がほのかに見えるだけだ。
私は片付けるとシャワーを浴び、ベッドに横になる。
疲れがたまっていたからか、すぐに眠りに落ちた。




