第28話 クローゼット
俺は今日も12時ちょうどを待っていた。
美月さんからの連絡では、残り調べるのは寝室と浴室らしい。
それでも、俺は伝えられていた「血まみれの包丁」というものが気になった。
見ている世界が同じかも確認するために。
俺は時計が12時になったのを確認して、そっと寝室の扉を開けた。
「………」
夜だからだろうか、いつもより肌寒く感じる。
キッチンに着き、ひとつひとつの棚をゆっくりと調べる。
(………残るは、この棚。)
一番奥の棚を開ける。
(…あった………)
不気味だ。生々しい血の色が、暗闇の中で際立っている。
俺は扉をそっと閉めて、寝室に戻ることにした。
ひた……ひた……ひた……ひた……
足音がやけに鮮明に聞こえる。
そして、なんのトラブルもなく寝室のドアを開けた。
(……寝室を調べるか)
懐中電灯で照らしながら調べてみる。
すると、見えにくいところにお札のようなものが数枚あるのに気付いた。
(…いつもはないから、きっとこの空間だけのものなんだろう)
ほかに異変はなかった。
……残るは、寝室。
クローゼットについても気になる。
俺はベッドに横になり、眠りに落ちた。
□
目覚めると、夜とは違いあたたかい太陽の光が差し込んでくるのがわかる。
今日も、大学がある。
……だからこそ、俺はある決心をしていた。
(……クローゼットを、開ける)
着替えて、手には荷物を持つ。
そして、浴室の前のクローゼットの前に立った。
「……………」
床に荷物を置き、手をかける。
(………………よし)
俺は一気に開けた。
「………え」
…………そこにあったのは、数十冊の参考書と、パソコンと、
…一冊の漫画と、びりびりに破かれた数枚の絵。
(これ……すごく強いヒロインが逆境を生き抜く、少々恋愛要素もある異世界サバイバルの漫画だ)
従姉の部屋にあった記憶がある。
(それに、この破かれた数枚の絵……小学生が書いたみたいな、はっきりとしたやつ。でもすごいな…)
一旦頭の整理をしようと扉をぱたんと閉める。
しかし、ふと思い立って再度開ける。
(…………え?)
…中身が消えた。何もない。
普通のクローゼットだ。
「何で………痛っ」
その瞬間、俺に記憶が流れてきた。
そして、気づいたときには、学校のような場所にいた。




