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ひとりぐらし  作者: 雨宮 叶月
氷室伊織の場合

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第27話 待ち合わせ②

「はい。いつもならワークを解いたり読書をしているはずの英美ちゃんが、廊下を気にしながらぼーっと座っていることが多くなったんです。」





「廊下……?」





「当時のクラスはほかのクラスよりも比較的落ち着いていて、2分前着席も半分以上の人がしていましたし、意識していなかった子も先生が入ってくると自然に席についていました。だいたい、呼びかけをしていたのは運動部の男子でしたね。でもその男子たちも真面目で言ったわけではなく、最初はふざけて言っていましたし、声も大きいのでだんだん定着していったんです。」





「…………」







「英美ちゃんも、夏休み後は少し呼びかけをしていました。一番最初にしたときは、びっくりしました。でも英美ちゃんは声が小さいほうで、積極的なタイプではなく、生徒会に入ったのも高校受験のためらしいですし。きっと先生に言われたんだと思います。呼びかけていたのはいつも先生がいるときでした。いつも廊下から彼女を見ているんです。」




「先生……?」






「はい。英美ちゃんと、友達が話していたのを聞いたことがあるのですが。先生から何回も催促されたらしいです。別にそんなにうるさいわけじゃないし、意識してる子もたくさんいるから言いたくないけど、先生からの評価が大切だからしょうがないって。三者面談でもきつく言われた、と話していました。」





「三者面談でも言われたんですか…」






「でも一番ひどいのは、先生が他の子に言っていないことですよ!男子たち以外は誰も呼びかけしていませんでした。なのに、副会長にも代議員にも何も言わずに、英美ちゃんにだけきつく言ったんです。ひどいでしょう?当時の先生、だいぶ印象良かったんですが、これは本当に残念でしたね。」






「え……」







「だからなのか、英美ちゃんは次生徒会には入らなかったみたいです。ずっと何かを我慢しているような顔をしていたのが、少しずつ笑顔も戻ってきて良かったなって思ったのを覚えています。3年生ではクラスが離れてしまったのでよく分かりませんでしたが、頭の良さは伝わってきていましたね。なのに、あんな悲しいことになって……」






「……あれは本当に悲しい事件です。お話していただきありがとうございました…。」






「いえ、私も懐かしかったです。そんな事件、もう二度と起きてほしくないです……。あの、もしほかの子に話を聞くのであれば、鶴野さんと梶原さんが良いかもしれません。」






「実は行き詰っていたところで……鶴野さんと梶原さん…?」





「これが連絡先です。確か仲が良かった記憶があるので。話を聞いてみるといいかもしれません」




「ありがとうございます。」





木下さんは仕事があるらしく、会社に戻っていった。





思いがけない収穫に、俺は次の計画を練った。





……別に、高原英美さんが「見えてはいけないもの」という確証はないが。



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