第24話 対話
泉さんと話してから、1週間が過ぎた。
入居のため、俺は泉さんに教えられた部屋の前に立ち、インターホンを押す。
ピンp……
(あれ、美月さんから聞いてはいたけど……やっぱり不気味だな…)
「氷室くん?どうぞ」
「お邪魔します……」
廊下を歩く。
「ごめんね、あのインターホン、壊れてるんだ」
泉さんがお茶を出しながら言った。
そこで俺は、以前から気になっていた違和感について聞いた。
「右目、大丈夫なんですか?」
「え?ああ、いやかっこいいでしょ?」
「えっ?は、はい……」
少し気まずい。
「えっと、これが資料だよ。部屋に帰ったら読んでね。ここがキッチンで、ここが浴室、で、これが一番大切なんだけど、寝室がこっち。夜12時から4時までの間は絶対に寝室で寝てね。睡眠薬とか電灯が必要なら言って、貸し出せるから。何か質問はある?」
「………じゃあ、あの、入居条件の紙を、今見ても良いですか?」
「えっ、……………まあ、どうしてもっていうなら良いよ」
「ありがとうございます」
俺は渡された資料の中から、入居条件の紙を引っ張る。
「……っ」
「どうしたの?」
俺は息を吸って答える。
「……数字が、おかしいです。それに、クローゼットの記述、黒く塗りつぶされているような、文字化け、………黒目の絵」
「……ごめんね、僕にそれは見えない。スマホで映してみて。きっと、普通の募集になるから。」
俺はスマホを出してカメラを開く。
「本当だ……」
「まあ、気にしなくていいんじゃない?」
「……そうします。」
「はい、これが鍵だよ。頑張ってね」
それから俺は泉さんの部屋を出た。
しかし俺は、後ろで「……今回こそは、救ってくれたら」とつぶやく泉さんの声に気付かなかった。




