第18話 大橋さん
私を心配する氷室の声を振り払って、大橋さんの家のインターホンを押す。
ピンポーン
……………
「今日も留守?この時間はいないのかな……」
その時、私たちの後ろを誰かが通った。
その人は私たちに気付くと、声をかけてきた。
「あれ、君たち……大橋さんになんか用でもあるの?」
「はい。大学のレポートについて話を聞きたいのですが、留守のようで…」
氷室がとっさに嘘をつく。
「えぇー?そんなはずないよ、大橋さんはこの時間はいつも家にいるから。ほら、僕も届けるものがあってここにきたんだ。」
「そうなんですか…」
「先に僕が声かけてみるから、君たちはちょっとそこで待ってて。」
そう言ってその人はインターホンを押した。
「大橋さーん!暁です!開けてください!」
暁さんと言うらしい。
すると、ドアが開いた。
「暁?何か用があるのかい?」
暁さんは私たちを手招きした。
「っ、君たちは…!」
「僕、大橋さんに届けるものあったんですよ。そしたらこの人たちも用があるみたいで。何で反応しなかったんですか?」
「………3人とも、とりあえず入ってくれ」
私たちはその言葉に従い、家に入った。
「お邪魔します…」
出してくれたお茶をすすりながら、ちらっと暁さんのほうを見る。
何かの資料のようなものを渡していた。仕事の関係だと予測する。
暁さんは私の視線に気づき、口を開いた。
「ところで本題に入るんですが…どうして反応してあげなかったんですか?」
大橋さんはゆっくりと息を吐いた。
「…ごめんっ、ごめんなぁ、君たちのような若い人を見ると、涙が出てきそうになるんだよ……」
「……え?」
「昔、よく遊びに来てくれた子がいたんだけど、その子も成長したら君たちくらいの年齢になってるはずなんだと思ったら、もう、涙が止まらなくて……ごめんなぁ」
大橋さんは涙を拭いながら言った。
(そんな理由があったなんて………私たちが聞きたいこと、大丈夫かな……?)
「じゃあ僕はもう、用が済んだからすぐ出るけど、ゆっくり話しなよ。」
暁さんが立ちながら言った。
「いや、暁さんもお時間大丈夫でしたら居ていただけますと…」
「あ、そう?じゃあ……」
座りなおした。




