4話
僕の闘い方の理想は肉を切らせて骨を断つといった感じで、多少の攻撃は許容しながらそれ以上の攻撃で敵を殺すやり方。けれども体力の低い事でその闘い方は現状できない。
空間跳躍を上手く使い、できるだけ攻撃をもらわないようにしないといけない。頑強と不壊があるとはいえダメージはかなり食らってしまう。
これもレベルの低い事が原因だ。だいたいレベルを上げて物理で殴る、といった事がしたい僕と今の状況はかけ離れている。
機国に帰還して試練の塔でレベルを上げて俺強えしたい。機国に帰還する事に興味ないと言ったってあれは嘘だ。本当はめちゃくちゃ帰還したい。他のプレイヤーと交流したい。イベント出たい。ユニークな何かが欲しい。
そんな事を考えていたが、アマタツ殿は動かずに僕が攻めて来るのを待っていた。
アマタツ殿の闘い方は技で圧倒するやり方だ。カウンターも多い。一度くらい始めるとなかなか抜け出す事ができない。実際今までの負け方も一度くらってからそのまま押し切られている。
僕の攻撃も当たりさえすれば一撃で屠れる威力はある。というか僕のスペシャルムーブは一撃必殺が殆どだ。
「クソガキよぉ。余計な事考えてる余裕あんのかよぉ。さっさとかかって来いやぁ。」
「そう焦るなよ。これで最後かと思うと感慨深くてな。」
「そうだ最後だ。てめぇを殺し封印して二度と動けない様にしてやる。」
「そんな事可能かね。墜ち人の不死性をどうにかするなど。」
「なんだ。怖気づいたかクソガキよぉ。まぁそんな事関係ねぇがよぉ。てめぇはここで終わりだ。」
うーん。プレイヤーを動けなくするとこのゲームをプレイできなくなる。そんな事がはたして可能なのか。そんな事したら暴動ものだと思うのだが。まぁいい。さっさとアマタツ殿を殺そうか。
僕は《二度打ち》を発動して《光輝奔龍》をアマタツ殿に放つ。光輝奔龍は光の龍を生み出し敵に放つ技。なかなかの追尾性があり避けるのは難しい。しかも威力もかなり高い。それを二度打ちでもう一度放つ。
だかアマタツ殿は平然と光輝奔龍を受け流す。アマタツ殿が修める《阿頼耶拳術》その技でかすりもしない。阿頼耶拳術は技そして柔の極意。剛や暴に対してめっぽう強い。
僕は光輝奔龍を放ちアマタツ殿が受け流す間に懐に入り近距離戦を仕掛ける。6本の腕を使いアマタツ殿に殴りかかる。それぞれの方向から殴るが全て受け流される。だがこれでいい。アマタツ殿に攻勢に回られると腕が6本ある僕でさえ受けきれない。
というか腕が6本あってようやく対処可能になるあたり、僕とアマタツ殿の技術力はかなり差がある。一撃あたりさえすれば勝てるが、それが物凄い大変だった。
《怪力無双》を発動して連撃を仕掛ける。これは発動している間だけ膂力が倍になる。発動時間は余り長くないが圧をかけていく。アマタツ殿はかなり受け流しに神経を使い始める。一撃でも当たれば死んでしまうからそうなるのは当たり前だった。
凄まじい暴力が荒れ狂う。だがそれを全て受け流される。かなりの拳速があり周囲の空間が悲鳴を上げる。音速を超えた連撃にも涼しい顔で対処されて、隙を見せれば攻守が逆転する。攻守が逆転すれば最後、一方的にやれれる。それを阻止する為に攻撃し続ける。
連撃中に《閻魔蹴り》や《業力脚》、《流生落とし》などの蹴り技も交ぜる。だがこれも対処される。息が続かずに一瞬連撃を止めてしまう。するとその隙を逃さずにアマタツ殿が攻撃を仕掛ける。
僕はこうならない様にしていたが結局こうなってしまった。今度は僕が攻撃を受ける番だった。
アマタツ殿は《黄泉廻し》や《流れ弾き》、《柔芯弾》などの柔の技で僕を攻める。黄泉廻しや流れ弾きで自然に胴体をがら空きされて、そこに攻撃を叩き込まれる。柔芯弾などかなりダメージをくらう。
対処できずにただ攻撃され続ける。体力も減り続け半分を切った。6本も腕がありそれを使い熟せている筈の僕がかなり押されている。アマタツ殿は2本しか腕がないのに僕はそれに負けている。それだけじゃない。此方の攻撃は当たらないのにアマタツ殿の攻撃だけ当たっている。
攻守が逆転するとこうなるとわかりきっていたのに攻勢に出れない。じわじわと体力を削られる。僕の攻撃は周囲を破壊し続けるが、かんじんのアマタツ殿を破壊できない。空間は泣き叫び音速を超えた拳によってソニックブームが起こる。だがそれさえも受け流される。
明らかに今までの技を教える為の闘いと違い、これだけの差があるとまじまじと見せつけられる。僕は勝てると思って闘いを挑んだが、これはちょっと勝てない。
僕の知らない技もかなり出てきて対処できずにくらい続けては、やけになって攻撃を仕掛ける。それを待っていたと言わんばかりにカウンターをもらう。
僕は一か八かの賭けに出る。《怪力無双》、《暴道中》、《修羅界》といったステータスを上げるスペシャルムーブを発動させる。それによって強引に此方に流れを持って来る。
この3つはどれも膂力を上げる。暴道中が膂力を3倍にする代わりに技力が0になる。修羅界は膂力を2.5倍そして物理属性威力上昇が25%になり、武器のそれと合わせるとかなりの上昇が起こる。まぁ当たらないと何の意味もないが。
膂力が上がるという事は攻撃の速度も上がる。それによって凄まじい速度の連撃が可能になる。今までこの3つを発動すれば勝てる事があったが今回はそうもいかないらしい。
完璧に受け流されていて攻撃が当たらない。まじかよここまで差があったのか。技力が0になった事により攻撃はより単純なものとなる。それがアマタツ殿にとってはありがたい事なのだろう。どんどん僕の攻撃を受け流しカウンターを決めて来る。
体力がもう無い。このままでは死んでしまう。どうにかしたいが現状どうにもならない。何かアマタツ殿が対処できない事をしないといけないが、僕の闘い方を熟知しているので生半可な事はかえって隙を晒す事になる。
アマタツ殿は何も喋らずに淡々と僕を殺そうとしてくる。体力が10を切りますます後がなくなった。怪力無双も暴道中も修羅界も切れた。技力は元に戻っているがそんな事では現状を打開できない。
ありったけのスペシャルムーブを発動する。だが隙を晒す事になっただけで僕は何もできずにあっさりと殺された。
殺したクソガキを見る。死んで光の粒子となり消えていく。それを見届け封印の準備をする。蘇る時に封印をして動けなくする。光の粒子が周囲に集まり始めると儂は封印術を発動する。身体のそれぞれの関節と主要な臓器に封印柱を埋め込む。
これでこのガキは永遠に動かなくなった。意識が覚醒しても身体は動かない。主要な臓器も止まり死んではいないが死んだ様な状態となる。
かつて兄弟子だった者を思い出す。彼も技ではなく力に頼り、力を得る為ならどんな非道な事でもやっていた。しまいには暗黒神と契約して眷属となり、死んでも蘇る力を得てますます手が付けられなくなった。
師匠と共に闘いを挑んだが死んで蘇る兄弟子には勝てず、兄弟子の力は増すばかりだった。そこで師匠が色々な術師達に頭を下げて協力して生み出した、この封印術で兄弟子を封印した。
その闘いの最中に師匠は命を落とし、師匠に協力してくれた術師達もまた死んでいった。生き残りは儂と術師の弟子一人だけだった。
何とか兄弟子を殺して封印柱を埋め込み動けなくした。そのおかげで今日まで封印されている。
封印したガキを見る。兄弟子の様に力を渇望し、その為ならどんな事でもしそうだったこのガキも封印できた。奇しくも兄弟子を封印したこの地でこのガキも封印した。ひとまずは暗黒神の眷属になる心配はなくなった。
本当なら考え方を改めさせて、阿頼耶拳術を継承して欲しかった。だがこのガキは阿頼耶拳術を覚える事ができず、代わりに暴の力を覚えた。何とかして兄弟子と同じ道を行かせない様にしたが、暴の道に走っていってしまった。
体格にも恵まれていた為に兄弟子よりも暴の道があっていたのだろう。覚えた技は尽く暴の力だった。それは仕方ないかもしれないが、兄弟子の事を思うとどうにかしたかった。
儂は今でも信じている。力よりも技だと。そして覇道よりも王道を。支配よりも共生を。
僕はリスポーンした。リスポーン場所は先程までいた闘技場だった。僕はアマタツ殿に勝てなかった事を悔やみ、まだここでの生活が続くと思うと気分が沈む。イベント参加したい。
身体を動かそうとして、僕の身体が動かない事に気付いて固まる。どうして僕は動けない。そしてアマタツ殿が封印すると言っていた事を思い出す。
封印されて動けないようじゃあゲームをプレイできない。どうしようかと悩んでいると視界に文字が現れる。
【貴方は封印されました。リアルの時間で24時間以内に封印を解かないとこのアバターはロストいたします。】
僕は叫んだ。いやまぁ声は出ないけど。せっかくここまで来たのにここでロストしたくない。僕は必死に封印を解こうとする。
だが幾らやっても身体が動かないからどうしようもない。かなりの時間悪戦苦闘していたが、どうにもならないと悟り一度ログアウトする事にした。
僕は早速wikiを開いて封印について調べる。ゲーム内で6年も経つのだから、同じ様な状態になった人がいる筈だ。
調べた結果、僕は絶望した。どうやら自力で解く事は現状できないらしい。プレイヤーが封印された場合、他のプレイヤーかNPCに封印を解いて貰うしかないとのこと。
僕はフレンドなんか居ないしアマタツ殿は勿論、街の住民も解いてくれるかは怪しい。というか住民達は僕よりもアマタツ殿を信用しているし無理だと思ってしまう。
その後も調べ続けて封印術にも種類があり、それぞれ解き方が違う事を知っただけで終わった。
僕はログインする。やはり身体は動かない。周りには誰も居ない。僕は自力でどうにかするしかなかった。《怪力無双》、《暴道中》、《修羅界》を同時に発動するが膂力が増した所でびくともしない。僕泣きそうだった。
こんな所で終わりたくはない。まだ一度もイベントに参加していないのに。アバターをロストしてまた新しくキャラクタークリエイトするのは嫌だ。僕はスペシャルムーブを次々と発動したりしたが、どうにもならなかった。
やばい。リアル時間で24時間がもうすぐ経つ。僕は焦りながらも、色々とできる事を試していた。そしてふと習得したスキルの《多腕》を思い出す。これは腕を増やす事のできるスキルで、一度増やすと消せない欠点が有るが有用なスキルだった。
僕は6本が限界だからこれ以上増やす事はしなかったが、もしかしたら増やした腕は動かせるのではと思い、腕を2本増やした。
すると腕が2本生えてきた。その腕に意識を向けて動かしてみる。するとその2本の腕は動かす事ができた。僕は嬉しさの余り発狂しそうだった。
その2本の腕を動かして僕は自身にかけられた封印術を調べる。そしてかけられた封印術を理解した。これはかなり厄介で死んでも封印状態が続くもので、封印柱を身体から取り除かないと永遠に動けない。
僕は身体に埋め込まれた封印柱を取り除き始める。腕が2本だと足りずもう2本増やした。合計で10本になった。動かせる4本の腕で身体を抉り、封印柱を取り除く。かなり痛いが我慢して上半身の封印柱を取り除いた。
上半身が動かせる様になり僕は下半身の封印柱を取り除き始める。その作業の中で僕は増えた4本の腕を巧みに操れた。
なんだか始めて増やした時と違いすんなりと動かす事ができる様になって、これなら戦闘でも使えるなと思った。
下半身の封印柱を全て取り除き完全に封印を解除した。僕は早速封印してくれたアマタツ殿にお礼参りしに向かう。
だがアマタツ殿は街の中を探してもおらず、ルールは僕が動けている事に腰を抜かし必死にアマタツ殿の事を話してくれた。
それによりアマタツ殿は機国に帰還した事を知る。僕は機国に向かう事にしようとしたが、運悪く暗黒神の眷属達が襲ってきた。
僕はそれを殴り殺していく。アマタツ殿に比べてかなり弱い眷属達は、一撃与えてやれば身体が元の形がわからないくらいになる。
その様子を街の住民達は怯えて見ていた。眷属達の攻撃を避ける事はせずにただ殴る。面白いくらいにぶっ飛び死んでいく。
それでも眷属達は逃げる事をせずに僕に向かってくる。かなりのダメージを貰うがそれ以上に殺し続ける。
《光輝奔龍》を放ち上空にいる眷属達を地に落とす。そうして落ちた奴等を殴り殺す。
しばらく殺し続けていると一際大きい眷属が現れる。おそらくは巨人だろう。暗黒神の眷属になった奴等もいる事はわかっていた。だから驚く事なく攻撃を仕掛ける。
《破顔光線》を放ち顔面を壊す。かなり効いたらしく暴れている。その隙に《怪力無双》、《暴道中》、《修羅界》を発動して《現震》を巨人に叩き込んだ。
現震は叩き込んだ体内で地震が起こり内部から破壊する技。どうやらそれで事足りたらしく、内側から爆ぜて絶命した。
やはり3つの膂力が増える技を発動して殴ると敵は死ぬ。暴力で解決するのは気持ちがいい。最近は叩き込んだりする事が難しいアマタツ殿や、そもそもスペシャルムーブを発動する必要がない敵ばかりだったから凄い楽しかった。
僕は眷属達を全滅させてドロップアイテムを確認する。あの巨人からはかなりのものが落ちてくれた。それを早速街の鍛冶師の所に持っていく。
街の鍛冶師は爺でかなり腕が立つ。今回の闘いで得た物を全て渡して装備品を新調する。武器はそのままで暴光のメリケンサックを4つほど作ってもらい、後は防具に素材を使ってもらった。
できた防具は全身装備となっていて、全身タイツに所々に光の線が走る。色は銀色で光の線の色は赤だった。腕がちゃんと10本入る様になっており、なおかつ動きやすかった。それらを装備した時のステータスが、
暴光のメリケンサック 最上級✕10
威力 99
物理属性威力上昇 20%
光属性威力上昇 20%
膂力 10
暴人の全身鎧
耐久 80
耐式術 30%
耐霊術 30%
耐聖術 30%
耐魔術 30%
耐物理 45%
レベル 10
体力 190
技力 12
膂力 12(100)
知力 12
運力 12
霊力 ーー
聖力 ーー
魔力 ーー
式力 11(15)
かなりのものじゃなかろうか。今までは武器ばかりに力を入れていて、防具がおろそかになっていたが今回新調できた。また腕が増えた事により装備できる数が増え、膂力はプラス100となった。膂力だけならトッププレイヤーに相当するだろう。
僕は鍛冶師に礼をして機国に向かって行った。