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第五章

ヘイデン王は、龍二 (りゅうじ)王子との結婚の詳細を話し合うため、レティシア (Leticia)を運営会議に召集した。王室顧問官全員とローレン (Laurenn)王子も出席していた。顧問官たちは重苦しい面持ちで王国の悲惨な財政状況を説明し、秋の王国 (あきのうこく)との婚姻協定が持つ戦略的重要性を強調した。


ヘイデンは肘をつき、指を組んで、心配そうな表情でテーブルを見つめていた。


「この提案を断る余裕は我々にはない」と、彼は重々しい声で宣言した。「彼らを敵に回すわけにはいかない…我々に立ち向かう力はないのだ。」


ローレンは、内心では深く反対していたものの、その決定を支持することにした。何しろ、彼は王室訓練時代に龍二王子と面識があった。もし龍二がレティシアを敬意と優しさをもって遇するならば、望まない結婚であっても耐えられるかもしれない。それに、信頼できる騎士が一人いれば、秋の王国での妹の安全も確保されるだろう。


ヘイデン王がレティシアに同行させる騎士の名前を挙げ始めたとき、彼女は毅然として口を挟んだ。


「陛下、もし可能でしたら、私自身の騎士を選ばせていただきたく存じます。」


ローレンが即座に支持したことで、レティシアの願いは一層強まった。王女は、王や顧問官たちの影響下にない、真に自分だけに忠実な戦士を見つける必要があると分かっていた。


不安がレティシアの胸を締め付けた。見ず知らずの相手と、遠い王国で結婚することは、恐ろしい見通しだった。しかし、彼女は自らの使命の重要性を理解していた。冬の王国の未来は、その結婚にかかっていた。


レティシアは、ドレスのお返しに龍二王子へ贈り物をすべきかという、儀礼上の問題に悩んでいた。秋の国の習慣を知らなかったため、彼女は城の広大な図書室の記録を調べることにした。しかし、調査は実を結ばず、インスピレーションを求めて商業地区へと足を運んだ。


そこで彼女の目を引いたのは、冬の王国では珍しい、異国の果物を売る露店だった。近づいて、特に目を引く果物を指差したとき、別の手が同じ果物に伸びているのに気づいた。それはアレフ (Arefu)だった。彼は親切な仕草で彼女に果物を譲った。二人は挨拶を交わし、互いの顔に楽しそうな笑みが浮かんだ。


おしゃべりな女主人が、その短い再会に割って入った。


「すごいニュース、ご存知かい?」と、彼女は期待に目を輝かせながら尋ねた。


アレフとレティシアはその噂話にあまり関心を示さなかったが、女主人はお構いなしに続けた。


「姫様が別の国の王子様と結婚なさるんだって!」と彼女は叫んだ。「ものすごく美しい方らしいけど、お城に引きこもってらっしゃるそうだ。誰も姿を見ることができないって話さ、見た者は夢中になってしまうからね! あんた、騎士なんだろ、姫様を見たことはあるのかい?」と、彼女はアレフに尋ねた。


レティシアはその称賛に面白がり、笑みをこらえた。


「私は城の騎士ではありません」とアレフは答えた。「それに、誰も彼女を見ないのであれば、その美しさはただの噂かもしれませんね。」


「残念だねえ!」と女主人は嘆いた。「王国を助けるために尽力してくださるお礼に、何か贈り物をしたかったんだが。」


女主人の言葉に心を動かされたレティシアは、優しく彼女の手を握った。


「直接贈り物を渡せなくても」と、彼女は優しい笑みを浮かべて言った。「あなたのそのお気持ちは、きっと姫様に届きますわ。」


女主人はレティシアの言葉に慰められて微笑んだ。しかし、アレフは物思いに沈んだ表情でその光景を観察していた。レティシアの話し方には、まるで彼女自身が王女であるかのように答えている、何か不思議なものがあった。


突然、アレフの表情が警戒に変わった。彼は力強くレティシアを引き寄せた。混乱した彼女が何が起こったのかを理解したのは、ほんの一瞬後だった。彼女の隣に不安定に置かれていた木箱 (きばこ)の山が、まさに彼女が数秒前まで立っていた場所に崩れ落ちたのだ。その衝撃は、重傷、あるいは致命傷を負わせるのに十分なほど強力だった。


アレフは、感覚を最大限に研ぎ澄ませ、その「事故」の責任者を示す手がかりを周囲に探したが、何も見つけられなかった。


「大丈夫ですか?」と、彼は心配で張り詰めた声で尋ねた。


レティシアの体を震えが走った。これまでの出来事は、ほとんど…偶然のように思えた。しかし、木箱の落下は違った、意図的なものだった。もしアレフが間に合わなかったら? もし果物屋の女主人が自分の代わりにそこにいたら? 苦悩が彼女を襲った。


彼女の動揺に気づいたアレフは、市場の喧騒から離れた近くのベンチへと優しく導いた。二人はしばらく無言で座り、レティシアは今しがた起こりかけたことをまだ整理していた。


「助けていただいて、本当に感謝しています」と、彼女はついに、まだ震える声で言った。「あなたの素早い反応がなかったら…私は…」


「騎士としての務めを果たしたまでです」と、アレフは彼女を落ち着かせようと、穏やかな口調で答えた。



暗く湿った路地裏 (ろじうら)では、緊張に満ちた空気の中、フードを被った人物が部下を抑えた怒りで叱責していた。


「無能め!」と、その人物はしゃがれた脅威的な声で囁いた。「木箱をいくつか倒すことさえできんとは! これでは、彼女の首にかかった懸賞金は他の誰かに持っていかれてしまうぞ。」


「しかし、親分、あのお節介な騎士が現れるとは予測できませんでした!」と、部下は恐怖に震える声で弁解した。


「言い訳など聞きたくない!」とフードの人物は唸った。「次にしくじったら、褒美になるのはお前の首だ。分かったか?」



レティシアが落ち着いたのを見て、アレフは立ち去ろうとした。しかし、彼女が質問で彼を引き留めた。彼は再び彼女の隣に腰を下ろした。


「個人的な質問をしてもよろしいですか、騎士アレフ?」


「どうぞ、お嬢さん (ティシー)。」


「あなたは秋の王国の方なのに、なぜ冬の王国へ?」


「人に会いに来たのです」とアレフは直接的な答えを避けて言った。


「ローレン王子に?」とレティシアは重ねて尋ねた。


アレフは一瞬考え込んだ。これ以上質問されるのを避けるため、彼だと言うのが一番だろう。それに、ローレンとの再会も彼の計画の一部であり、全くの嘘というわけでもない。


「はい。彼にここで訓練するよう誘われ、お受けしました。以前から冬の王国の歴史には興味がありましたので」と彼は付け加えた。


「歴史がお好きなら、私の個人蔵書から何冊かお貸しできますわ」とレティシアは熱心に申し出た。「城の王立図書館には、もっとたくさんあります。私たちの王国は、過去を保存することで有名なのです。」


「あなたは本当にご自身の国を愛しておられるのですね」とアレフは、彼女の瞳に宿る情熱に感心しながら言った。


「好きなことには夢中になってしまうのです」とレティシアは少し顔を赤らめながら認めた。「でも、あなたが城で働くことになれば、どちらにしても王立図書館には入れますものね。」


アレフは、レティシアの純粋な熱意に魅了されて微笑んだ。彼女は一瞬、はにかんで目をそらした。彼は別れを告げて去り、レティシアは物思いにふけっていた。


「彼は素晴らしい騎士になるわ…あの事件にも、あんなに素早く反応して…」と彼女は思った。「でも、ローレンの誘いで来たのなら、もう彼の配下なのかもしれない。調べる必要があるわね。」

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