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6.

本物のウマ娘の設定とは、かなり違います。

チームの解釈も全く違います。

バシぃッ!!!!


鋭い鞭打ち刑のような音が、校舎棟の一番端にあるわたし達のチームルームに響いた。後に知ることなのだが、これは昼休みの恒例らしく、近くの部屋を使うチームの娘達は驚きすらしなかった。


「クっソ堅ぇケツしてやがる、このクソ筋肉バカがよぉ……。こっちの脚が折れちまうよ……。次こそダイヤやれよ!」


昼休みが始まっているというのに直立不動で一切動かないクローバーアイゼン(推定)さん。それを起こすため、(外見だけは)可憐なアイドルそのものであるノエさんが、スカートが翻るのも気にせず全力で、クローバーアイゼンさん(推定)の臀部を蹴り飛ばしたのだ。


「えー?アタイやだなぁ〜。せっかく綺麗な脚に、変なアザ出来ちゃうじゃん?それに、ジャンケンで公平に決めてるワケでしょ?」


「もういい……。いい加減起きろクロ!!」


「……ハートノエースさんったら。わたくし授業中に眠るだなんてトレーナー様に失礼なこと、一度も致したこと御座いませんわ。

これは体幹トレーニングでしてよ?」


「その言い訳聞き飽きたぜ……。それより転入生の」

「タカイサミです!よろしくお願いします!」


「あらあら、これはご丁寧に。

はじめまして、わたくし、クローバーアイゼンと申します。どうぞお気軽に、クロとお呼びくださいませ。

共に学び、競い合いましょうね」


にっこりと柔らかい笑みを見せるクローバーアイゼンさん。柔らかな物腰にゆったりとした口調に穏やかな声色、なにより整った顔立ちからは高貴さがにじみ出ているが、体操服(そう、なぜか彼女だけトレセン学園制服ではなく、体操服にジャージなのだ)の下に盛り上がるのは、女性らしい柔らかな肉体ではなく、全身余すこと無く鍛えられた筋肉の塊。鋼の肉体であることは明らか……。いや、そもそもわたし達ウマ娘の脚力から繰り出させれる渾身の蹴りを受けたら、一流格闘家だってただ事では済まない。それを受けてなお微動だにせずなんてことが可能なのか?

身長はわたしと大差無いか、わたしの方が少し高い?くらいの全身筋肉ダルマの上に、汗や血に塗れた鉢巻を巻いた清楚な短髪栗毛お姫様顔が乗っかっている。悪質なコラージュでもこうはならない……。


「クロ、イサミンビビってるから……」


「わたくし何もいたしておりませんが……?」


「くろちゃん、ぼくおなかへったー」


「そうですわね、参りましょうか」


クロさんが先頭を歩くと、昼食でごった返す食堂ですら、モーゼの十戒の海割りの如く人垣が割れ、席が空く。これが昼食時に食堂の席取りに勝つコツだと、ダイヤさんがこっそり教えてくれた。

経緯はどうあれ、チームメイトで食べるランチは楽しいものです。

ノエさんの言う化物然としたお方が、目の前で化物然とした量の食事をしているが、それでも和やかなランチだった。


ランチ後、わたしは覚悟を決めて切り出す。


「ノエさん……まさか化物って……」


「……クロはな、化物になり損ねたんだ……。」


(ノエさん、クロさんのことだとは、まだ一言も言ってませんよ……)

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