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1.

前略、お父さんお母さん、元気にしていますか?

わたしは相変わらず元気です。今年も風邪一つ引きませんでした。

近年の異常気象の例に漏れず、なのでしょうか?

5月の始めだと言うのに真夏を思わせるような暑さですが、連休中は好天に恵まれると言う天気予報からか、連日わたしが働く砂丘にも多くのお客様が観光に来てくださいました。どちら様も楽しそうな笑顔に溢れ、その笑顔は私達の仕事に気高い誇りを与えてくれます。


決してラクな仕事ではないです。

汗ばんだ額に砂が張り付く。服の中、下着の中にさえ砂が入り込む。風に舞う砂が口の中に、目の中に入る。なんだ砂ばっかり。そりゃそうか。砂丘だもの。

それでも私は、お客様の乗るソリを、今日も力いっぱい笑顔で曳いています。


大した給料は出せないが、やってみないか?


そう声をかけてくださった自治体の観光課の方は、お客様の笑顔が一番の報酬だと仰いました。

そんなバ鹿な話あるかって、最初この仕事を紹介された時、私もそう思いました。

しかし、想像するのと実際にやってみるのとでは、違うものですね。

一分一秒を他の子たちと競い合っていた頃よりも、私はのびのび生きていると、自信を持って断言できます。


今日も北からの不意の海風が、砂を空に舞わせ、お客様の歓声が上がりました。

私は慣れたもので、咄嗟に風に背を向け、サングラスを掛け直しました。

やはり下着の中まで砂まみれです。


ふと、故郷の。幼い頃、姉妹や友達とよく駆けっこをしたあの砂浜を思い出し、今、筆を執っています。

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