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妖怪伝説短編綴  作者: 時雨笠ミコト
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古い友人

今でも時折思い出す

 私の友人は、よく周りを見る人だった。

小さい子供とは思えないほどによく気がつくけど、いたずらっ子。

持ち前の観察眼を活用して、いたずらに精を出すような子供だった。


 まだ物心つくかつかないか、そんな頃から始まる昔の話だ。

都会から田舎に引っ越してきた時に、一番最初に出来た同世代の友達で毎日のように遊んでいた。

友人は、ことあるごとに「自分の方が私より年上なのだから」と言っていた。

年長者優先だと持ってきたお菓子を多めに分捕られた時は泣いて抗議した。

友人にとって年長者とは、偉さに直結するものだったらしい。

そして友人は、物知りだった。

草笛だったり笹舟だったりの遊び方に始まり、やれドクダミはこれに効く、やれ梅干しは口内炎に効くと生活の知恵も豊富だった。

私にとって友人は大人よりも近い、けど凄い人で憧れていた。

二人でよくイタズラもした。

友人は今日はこれだ、と計画を立てて毎日の集合場所に立っているのだ。

いけないことだと分かっていたけど、二人で悪巧みするあの感覚はとても魅力的で。

上手く行った時に手を取り合って笑う、あの瞬間が大好きで。

私は嬉々として友人の悪戯大作戦に参加していた。

まあその悪戯というのは、高頻度で『雨の降る夜に木の下に泣きまねしながら立ち、心配して近寄ってきた人を急に大声出して驚かせる』なんて他愛のないものだったが。

まあ当然、夜中に抜け出していることも相まって親にはそれはもう盛大に怒られた。

でも友人のことは大人には内緒にしていた。こんな遊びを提案している友人がいると知られたら、絶対に関係を断ちにくると思っていたから。

そんな魅力的な友人だが、意外なことに友達は私以外にいなかった。

友人は少し変わったところがあって、それが嫌われているのだと教えてくれた。

でも友人からすれば、私の方が変わっているらしい。

じゃあ変わり者同士だと、二人でよく笑っていた。

 しかしある日から風邪気味になることが多くなった。

薬を飲んで生活習慣に気をつけても病気にかかる、そんな病弱なってしまった。

勿論外には出られなくて、友人とも会えなくなった。

親は何故か私に籠を持たせることが多くなった。

その時から、友人に会える頻度が極端に減った。

寂しかったが、体は回復していった。

回復しきったらまた毎日遊べると、私は我慢して療養した。

ある日、籠を踏んで壊してしまった。

偶然だった。朽ち始めていたし仕方ないと大人は笑って、籠を修理するからと残骸をかき集めていた。

 その番、友人がやってきた。

初めての訪問で、私は大喜びした。

夜で暗かったけれど、さまざまなおもちゃを引っ張り出して友人に見せる。

色々な遊び方を教えてくれた友人に、今度は私が教えてあげられると嬉々として、しかし小声で説明をした。

友人も笑顔で、30分くらい二人でトランプで遊んだだろうか。

次は、と口を開いた時、友人は静かに首を横に振った。

どういうことだろう、と首を傾げれば、友人はこう言った。

「もう会うことはない」と。

どうしてだ、なんでだと問い詰めても友人はただ首を横に振るばかり。

理由を話せと詰め寄っても、悲しそうな顔で首を横に振り続けた。

もうわけが分からなくなって、泣きじゃくりながら「私が嫌いになったのか」と聞いた。

友人は今までで一番強く否定してから、大好きだと言ってくれた。

でも、それでも駄目なのだと。

嫌々と駄々をこねる私に、友人は楽しかったと感謝を告げた。

そして、いつか分かるよと言いながら、姿を消した。

私は最愛の友を失った。


そして、大人になった。

今なら分かる。友人は、私のために私から離れたのだ。

本当に、周りをよく見る子供だった。

だから遊んでいても、あんな言動をしていたのだろう。

優しすぎる友人は、自分の意思すら後回しにしてしまう。

あの子には今、新しい友人がいるのだろうか。

純粋無垢な子供しか、友人になってくれないであろうあの子は今、笑っているだろうか。

でも、どのみち伝えたいことは一つだけ。

ありがとう、私も君が大好きだよ。

最愛の友人は、一つ目小僧。

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