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95・奇跡的な確率であろうともって話

「木の精霊さんの精霊石はセルバの大樹と同じ不燃の魔力特性を持ってるんでしゅ。だから、木の精霊さんの精霊石は通常の魔力炉では融解も燃焼もしないでしゅ。でも、プナナは運よく木の精霊さんと属性相性が良いみたいなんでしゅ。だから、高圧魔力炉にプナナの魔力を結晶化した魔力結晶を燃料として投入する事で、木の精霊さんの精霊石を融解できる特殊な高温高圧環境を作れるんでしゅ。そして、融解して液状化した精霊石に別の物質を浸す事で表面を精霊石の被膜で覆う事が出来るんでしゅ。そうすると、木の精霊さんの精霊石の魔力特性を他の物質にある程度、付与する事が出来るんでしゅ」


高圧魔力炉にデイジー叔父さんが買ったアクセサリーから取り外したセルバの神核を入れて、溶かしながら、プナナは色々と説明してくれた。

うん、よく分からん。

子供だと思ってたんだが、思った以上に本格的な職人だったんだなプナナは。


「精霊石の特性を他の物にコーティングして付与する事が出来るって事ねぇん。プナナちゃんと木の精霊ちゃんの相性が抜群だったおかげねぇん」


『細工師だと思ってたもんけど、プナナは付与術師でもあったもんか。やり方的に錬金術師系の派生もんかね。独学の可能性もあるもんけど、道具類が結構えげつないもん。上位の魔術師の工房でもお目にかかれない物が結構あるもん』


『どうせ、セルバでしょ。かなりこの子に入れ込んでたし、それくらいするでしょ。密輸品でオークションとかしてるらしいし、あれもどこからか仕入れたんでしょうね』


俺にはプナナの使っている道具の凄さは分からないのだが、マレッサやパルカは分かっているようだ。

プナナは高圧魔力炉とやらでセルバの神核を溶かしながら、加工する為の道具や薬品を準備している。


「あとは高圧魔力炉で付与した特性を、プナナの血液から抽出した魔力因子を溶け込ませた特殊な魔力溶液に漬け込む事で特性の定着と安定をさせるんでしゅ」


高圧魔力炉でセルバの神核が小さなコップみたいな物の中でドロドロに溶けて、液体状になっているのを確認しつつ、プナナは特殊な魔力溶液とやらが入っているらしい容器を棚から取り出した。

水筒の様な容器を傾けて、ゆっくりと金属製の水槽に中身を注いでいく。


「このやり方なら、その『かんいしんかく』っていうのに木の精霊さんの精霊石の特性を付与する事が出来るでしゅ。ただ、精霊石の量が少ないでしゅから、それ全部に特性を付与するのはさすがに無理でしゅ、何か手はあるんでしゅか?」


プナナがデイジー叔父さんにそう尋ねると、デイジー叔父さんはにこやかに頷いた。


「もちろんよぉん。量が多いなら少なくすればいいのよぉん。こうやってぇん、ぬぅううううううんッ!!」


言うや否や、デイジー叔父さんは手に持っていた数百個の簡易神核を空中に放り投げて、両手から魔力を放ち、空中に固定。

固定された簡易神核に向けて両の掌を向け、ゆっくりとその掌を握っていく。

すると、空中に固定されている数百個もの簡易神核が中心に向かって集束していき始めた。


『魔力による超圧縮!? ダメもんよ、デイジー!! デイジーの魔力量での超圧縮だと幾ら簡易神核と言えども壊れてしまうもん!! 第一、圧縮したからって一つになるような物じゃないもん!!』


マレッサがデイジー叔父さんの行動に驚きの声をあげた。

確かに簡易とは言え、神核は神様の魂を物質化した物、物質である以上は一か所に圧縮したら一つになる所か圧壊するのは目に見えている。

俺は慌ててデイジー叔父さんに声をかけた。


「デイジー叔父さん!! それを壊しちゃったら元も子もないよ!! 落ち着いて!!」


「安心なさぁい緋色ちゃん。あたくしはいつだって落ち着いてるわぁん。今回は圧縮とは似て非なるモノよぉん!!」


そう言って、デイジー叔父さんは更に簡易神核を集束、圧縮させていく。

だが、不思議な事に一か所に集まっていっているはずの簡易神核から、破壊音が聞こえてこない。


『まさか、これって、次元集束!? 物質ではなく次元を重ねて束ねているの!? 簡易神核を多次元構造体にする気!?』


デイジー叔父さんのやろうとしている事が分かったのかパルカがマレッサ以上に驚愕していた。

何やら分からないが、デイジー叔父さんは何か凄い事をしようとしているようだ。


「ご明察ぅん。これなら見た目はコンパクト、中身は重なりあった数百の簡易神核って訳よぉん。これにプナナちゃんの技術でセル……木の精霊ちゃんの精霊石の特性を付与する事で疑似的な神核を再現できるはずだわぁん」


気付くと、簡易神核は一つになっていた。

だが、その見た目とは裏腹に不思議とその存在感は異様に増している様に感じる。

一つにまとまった簡易神核を手に取り、デイジー叔父さんはそれをプナナの掌に乗せた。


「さ、後はプナナちゃんの番よぉん。木の精霊ちゃんの為に愛を込めて頑張ってほしいわぁん」


「はいでしゅ!! 木の精霊さんはプナナの恩人でしゅ、大好きな木の精霊さんの為にプナナ頑張るでしゅ!!」


ここからの作業は集中する必要があるだろうと、俺はプナナの工房の外で待つ事にした。

プナナならきっとあの簡易神核をセルバの疑似神核に出来るだろう。

ならば、後の問題は。


「完成した疑似神核に注ぐ神力をどうにかするだけって事か」


『それも重要もんけど、完成した疑似神核がセルバに適合するかも問題もんよ。元は神兵用の簡易神核、神用に調整はされてないもん。セルバの神核の特性を付与したとしても、適合する確率は、一か八かの賭けになるもんね。正直、期待はしない方がいいもん。もし何の問題もなく適合したとしたら――』


「したとしたら?」


マレッサは何とも複雑そうな顔で笑って言った。


『それこそ『奇跡』みたいなものもん』

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