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94・やれる事はなんでもやるって話

『さて、デイジー。どんな手立てでワタシを助けてくれるネ? もうこうなったら自棄ネ。どうとでもするといいネ』


なかば諦めた様にデイジー叔父さんの助けを受け入れるセルバ。

デイジー叔父さんは嬉しそうに笑って、手に持つ数多くの簡易神核を見せた。


「これをセルバちゃんの電池代わりに使うのよぉん。奇跡が終わるまでセルバちゃんの神核に神力を注ぎ続けるって算段よぉん」


『残念だけど、それじゃあワタシは助からないネ。簡易神核は一つ一つの容量、出力共にワタシの欠けた神核にすら劣る物ネ。ワタシの神核に接続しても物の数秒で神力を消費されて壊れるネ。ただ、それだけの量があれば奇跡を成し遂げる神力を賄えるかもしれないけれど、その簡易神核全てを満たすのは難しいネ、今ワタシに注がれている信仰ですら、それ一個を満たすのに数日かかるくらいネ』


首を横に振るセルバに対し、デイジー叔父さんはふむとあごに手を当てて考え込んだ。


「今、セルバブラッソみんなの信仰はセルバちゃんに注がれてるけれどぉん、それでもセルバちゃんの消滅の先延ばしがせいぜいって訳よねぇん。その信仰を簡易神核の神力を満たす為に使っても一個満たすだけで数日かかるんじゃあ意味がないわぁん。でも、数百個の簡易神核全てに神力が満たされれば奇跡を完了させる神力にはなる可能性があるなら試す価値は十分にあるわぁん」


デイジー叔父さんはそう言って懐から紙袋を一つ取り出してみせた。


「ここに小さいけれどまだ無事なセルバちゃんの神核があるわぁん。あたくしがプナナちゃんから買ったアクセサリーよぉん。原初の呪いの逆流を防ぐ為に繋がりが絶られた状態のセルバちゃんの神核、繋がりがない以上、今消費されているセルバちゃんの神核とは別物判定よねぇん。ただ、マレッサちゃんから小さすぎて神核として機能しない事は聞いてるわぁん」


『そうもん、セルバの神核とは言え、その大きさでは容量、出力ともに小さすぎてセルバを安定させられないもん』


「だから、改造するわぁん。奇跡を成し遂げるに足る神核へと、昇華するわよぉん」


デイジー叔父さんの言葉にセルバが驚きの声をあげる。


『いや、改造って、神核は神の魂の物質した代物ネ。たとえ絶位に達した魔術師でもおいそれとは扱えないネ。よほど相性のいい存在かよっぽど異常な存在くらいしか加工も改造もできないネ』


「だからこそのプナナちゃんよぉん。プナナちゃんは欠けた精霊石を研磨して一からアクセサリーを作ったって言ってたわぁん。あの子の言っていた精霊石がセルバちゃんの神核だった以上、あの子はセルバちゃんの神核を加工できるに足る存在のはずよぉん」


『確かに、プナナはワタシが神和と認める程相性がいい子ネ。でも、加工はともかく神核を改造するにはプナナの魔力と技術が足りないし、その道具もネ。プナナが持ってるのは普通の加工道具だけネ』


「プナナちゃんってば、普通の加工道具で神核を加工してたのねぇん。なら、十分過ぎるわぁん。任せてセルバちゃん、ちょっと軽く世界の理なんてぶっ壊してあげるわぁん」


そう言うとデイジー叔父さんは一瞬消えて、再び現れた。

なんとプナナも一緒だった。

どこから連れてきたのだろうか。


「セルバちゃんとお話してる間にちょっと探ってたのよぉん」


「こ、ここどこでしゅか!? セルバ様の神官さんからあまり動かないようにって言われてたでしゅけど!? あ、木の精霊さんでしゅ。え、木の精霊さんの手足が消えかけてるでしゅ!? 大丈夫でしゅか!?」


いきなり連れてこられて慌てふためくプナナ。

セルバは複雑な顔でプナナの頭を、消えつつある手で優しく撫でた。


『あぁ、ごめんネ、プナナ。本当はこんな消えゆく姿を見せるつもりはなかったネ』


「木の精霊さんが消えちゃうでしゅか!? そんなの嫌でしゅ!! 絶対に嫌でしゅ!! プナナ、なんでもするでしゅから、消えないでほしいでしゅ!!」


『え、今なんでもって』


泣きながらセルバに消えないでと懇願するプナナに対し、セルバは異常なくらい真顔になっていた。


「自重しろ神様」


「プナナちゃん、木の精霊ちゃんを助ける為にアナタの力が必要なのよぉん、力を貸してくれるかしらぁん?」


涙をぬぐいながらプナナはデイジー叔父さんを見た。

どうやら、デイジー叔父さんがアクセサリーを買った事を覚えていてくれていた。


「あ、あの時のおにい……お客さんでしゅ!! あの時は本当にありがとうでしゅ」


「あらいいのよぉん。教えてくれたお店のお料理、とっても美味しかったわぁん。それで、手伝ってくれるかしらぁん?」


「プナナが手伝える事ならなんでもするでしゅ、木の精霊さんを助けてほしいでしゅ!!」


『今なんでもって』


「だから自重しろ神様」


セルバは奇跡の進行中の為、この場を離れる事はできない。


『この奇跡の進行具合とワタシの子供たちの信仰を考えれば、もって二時間と言った所ネ。本来ならあと数分で消え去るはずだったネ。みんなの祈りが願いがワタシを生かしているネ。正直、それだけでも十分ではあるネ。どんな結果になってもワタシに後悔はないネ。どうか、後悔を残さないよう行動してほしいネ』


セルバの言葉を受けて、俺たちはまずプナナの工房に向かう事にした。

プナナの工房は一部が崩れ落ちてはいたが、プナナの加工道具一式はどうやら無事のようだ。


「お部屋はボロボロだったでしゅけど、道具は大丈夫だったでしゅ。これなら加工作業できるでしゅよ。それで、プナナは何をすればいいでしゅか?」


プナナは棚から取り出した作業用エプロンを身に着け、やる気満々といった感じだ。

それほど、セルバを助けたいのだろう。


「それじゃあ、さっそく始めましょ。プナナちゃんにはこの神か……、一応の配慮はしておこうかしらぁん、精霊石とこの簡易神核を一つにまとめてもらうわぁん」


「よく分かんないけど分かったでしゅ!! 頑張るでしゅ!!」


ふと疑問がわいたのだが、どうやってセルバの神核と簡易神核を一つにまとめるのだろうか。

それに簡易神核は数百個もあるのだし、手間はかなりかかる気がする。

果たして二時間というタイムリミットがある状態だ、間に合うのだろうか。

ともあれ、プナナはヤル気だ、なら俺も何かしなくては。


「プナナ、何か手伝える事があれば言ってくれ。出来る事はなんでもするから」


『今、何でもって』


『黙ってるもんパルカ』


パルカとマレッサが何かを言っていたがよく聞こえなかった。

俺の言葉にプナナは嬉しそうに笑った。


「ありがとうでしゅ、じゃあそこの高圧魔力炉に燃料を入れてほしいでしゅ。燃料は高圧魔力炉の横に置いてある瓶の中にある透明な魔力結晶でしゅ。あと火も付けて炉を温めておいてほしいでしゅ」


「わかった、任せてくれ」


プナナの指さした方向に置いてある炊飯器のような物の前に来たはいいものの、扱い方が良く分からない。

既にドタバタを動き回っているプナナに聞くのはちょっと躊躇われた。


「なぁマレッサ、これ燃料どこに入れるんだ?」


『はぁ、仕方ないもんねぇ。そこの出っ張りを押すもん、すると燃料入れる穴の蓋が開くもん。燃料を入れた後に蓋をして、正面の摘みを右に回すと火が付くもん』


マレッサの言う出っ張りを押すと、パカッと蓋が開き、燃料を入れる穴が現れた。

穴の中に魔力結晶を入れて蓋をして、摘みを右に回すして火を付ける。


「ありがとうマレッサ、助かったよ」


『いいもんよ別に。……わっちは神としてデイジーやヒイロの行動は受け入れられないもん。奇跡を起こしたなら、神はその命を終えるべきものもん。でも……いやいいもん。好きにすればいいもん。多少の手伝いならしてやるもんから』


少し元気がないマレッサ。

マレッサが言うには奇跡は神が命を賭して行うもの、つまりそれを覆そうとしている俺たちはマレッサにとって許しがたいはずだ。


「ごめんな、マレッサ。でも、俺はデイジー叔父さんと同じ気持ちだ。セルバには死んでほしくはない。だってそんな終わり方、あまりに悲しいじゃないか。言っておくが、マレッサやパルカが奇跡を起こそうとしたら、俺は命を賭けてでも全力で止めるぞ。そんな終わり方、絶対に嫌だからな」


『あぁ、そうもんね。ヒイロ、お前はそう言う奴もん。はぁ』


マレッサはパチンと自分の身体を叩いた。


『もう、うじうじ考えるのは後回しもん。さぁ、セルバを助ける為にとっとと動くもん!! 気合い入れるもんよヒイロ!!』


「あぁ、もちろんだ!!」

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