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79・そろそろ大詰めが近いって話

カマッセ・パピーとチューニーの活躍で順調にセルバの大樹から原初の呪いに浸食されている部分を潰す事が出来ている。

ナルカはもう気のせいとは言えないレベルに大きくなっており、両手で抱えないと無理なレベルだ。

ダチョウの卵とか目じゃないくらいに大きく重い。

三分の二くらい浸食されている部分の死を吸収した辺りからナルカはまだ卵の状態ながら鳴き声をあげるようになっていた。


「ナルッカ!」


「おう、そうだな! もうひと踏ん張りだ、頼むぞナルカ!!」


「ナルッカ!!」


何て言ってるかはもちろん分からない、だがなんとなく、こうフィーリング的なアレでだいたいカバー出来てると思う、うん。


『死の精霊ってこんな感じで成長するんだったかしら……?』


『精霊が普通に鳴き声出してるのもビックリもんけど、普通はテレパシーとかじゃなかったもん? ナルカは出自が特殊過ぎて少し違うのかもしれないもんねぇ』


パルカとマレッサが大きくなっている卵状態のナルカを見て、首を傾げている。

精霊がどんな風に育つのか知らないが、今のナルカの状態は普通ではないようだ。


「まぁ、ナルカはナルカだし、元気に生まれてくれたら俺は嬉しいよ。よし、あと残るは三つだ!!」


残るは三つ、セルバがセルバの大樹をくまなくチェックしてくれたおかげで、取りこぼしはない。

その三つを潰せば、マレッサとパルカがデイジー叔父さんの援護に迎えるはずだ。

そうすればより確実に原初の呪い箱を抑え込める。


「カマッセ・パピー、チューニーのみんな、あと三つです!! あと少し、お願いします!!」


俺の声にハーゲンが手に持つ大剣を高く掲げる。

他の人たちもかなり疲弊しているようだが、俺の方を見て力強く頷いていた。

次の場所へ移動中、襲い来る黒い獣や虫型の魔物なんかを蹴散らしながら、ハーゲンがテンション高めに話しかけてきた。


「はっはっはっ!! 任せておけヒイロ君、なんでか分からないがおれ様絶好調だ!! あの黒い敵を倒す度に力が増してる気さえする!! どんと来いって感じだー!!」


周りが肩で息をしているような状況で何故か一人元気なハーゲン。

むしろ初めの頃より元気な気がする。


「さすが限界知らずのハーゲンだぜ!! 疲れ知らずのその無尽蔵の体力、ただの人間とは思えないぜ!!」


「ぬわー、以前探索した古代遺跡から拝借した大剣を使いだしてから戦闘時は人一倍動けるようになってるハーゲンはさすがだ!! まるで倒した敵から力を吸い取っているみたいだ!!」


「いやーん、半獣人のうちよりも体力あるだなんて、さすがハーゲンさん!! 大剣に特殊な魔法とか魔道具が組み込まれてる気すらしてくるわー!!」


たぶんあの大剣、ホントにそう言う魔法とかが組み込まれているのでは?

気付いていないのかわざと言っているのか分からないが、ハーゲンがまだ戦えるというのはとても助かる。


『私様、あの人間が持ってる大剣ってどっかで見た事あるのよね、昔』


『わっちももん。誰かの落とし物かもしれないもんね』


『って事は神器って事かしらね。良く死んでないわねあの人間、人間程度なら普通なら触れるだけで魔力と精神力根こそぎ吸われるでしょうに』


『あの人間をよほど気に入ったんだろうもん。古代遺跡って言ってたから数千年規模で置き去りにされてたんだろうし、見つけてくれた恩返しでもしてるんじゃないかもん?』 


『ま、覚醒もしてないから、千分の一も力を引き出せてないけれどね』


『そこは人間もんから、仕方ないもん。持って振るってる上に僅かとは言え、力の一端を扱えてるもんから凄い事もんよ』


マレッサとパルカが何かコソコソと小さな声で話をしているが、よく聞こえなかった。

大笑いしながら先行していくハーゲンを見ているから、あの大剣にホントに何かがあるのかもしれない。

それはそれとして気になるのが、銀色の全身鎧を着たチューニーの人たちなのだが、ギリギリまであの恰好にならなかったのだから、余り人には知られたくなかったのだと思う。


『あいつらのあの恰好、たぶん竜国の連中もんよね』


『竜装兵だっけ? 竜を素材にして作った武器や防具で武装してる竜国の一般兵。少なくとも一人一人がA級冒険者くらいの実力はありそうね』


マレッサとパルカの言葉にモッブスが飛んできた黒いワシを切り伏せながら答えた。


「まさしくその通り。我らは竜国ドラコーンケラス竜装兵団に所属する竜装兵。ある任務の為、素性を偽り冒険者として活動をしている最中だ。今回は緊急事態ゆえに正体を明かしたが、どうか内密にしていただきたい」


『ふぅん、まぁいいわ。どうせろくでもない事だろうけれど、私様の子たちならとうに把握済みでしょ。いいわ、人間。その願い聞き入れてあげる』


『どっちでもいいもんよ、別に。竜と言えど敵対すれば叩き伏せるのみもん。とはいえ、今回はお前たちの協力に感謝してるもんから、見逃してやるもん』


「感謝する、死の神パルカ、草の神マレッサ」


モッブスは頭を下げた後、別の黒い獣の元に一瞬で移動していった。

うーん、正体を隠して、他国に潜入してたって事は完全にスパイだよなぁ。

まぁ、マレッサやパルカが見逃すと決めたのだ、俺がとやかく言う必要はない。

そんなこんなで、残る浸食された場所はあと一つとなった。

だが、原初の呪いはこちらと同じく切り札を残していたようだ。


「な、なんだコイツは!? 今までの奴らと比べて明らかに強さがおかしいぞ!? あの変な鎧もとんでもなく硬いし、なんなんだホントに!?」


「我らが竜装具『アルギュロス』にすら傷をつけるとは……、魔力すら宿していないあの細身の長剣でそんな事が可能とはにわかには信じられん」


ハーゲンとモッブスが相手の強さに驚愕していた。

最後の原初の呪いに浸食された場所を守るようにその敵はたたずんでいる。

俺はあの敵を知っている、知っていると言っても会った事あるとか、知り合いって訳じゃあない。

あの鎧にあの武器、そして馬に騎乗している点から見て間違いないだろう。


「まさか侍か?」


俺たちの前に立ちふさがるのは黒い甲冑を身にまとい、反りの入った長い日本刀を持つ一人の侍だった。

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