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77・かなり強かったんだなって話

「ハーゲンスラッッシュストライクッ!!」


ハーゲンの持つ大剣が黒い木の人形を袈裟懸けに切り裂き、切った勢いそのままにすぐさまその切っ先を黒い木の人形の頭部に突き刺す。

刃が頭部を貫通し、普通の人間なら即死していてもおかしくないダメージを与えたはずだが、それでも黒い木の人形は前進してハーゲンに手を伸ばす。


「ぬぉ!? 攻撃力は上がってるが、やっぱり決定打に欠けるか!? マリユス!!」


「お任せをッ!! 炎よ穢れし死を浄化したまえッ!! ピュリフィケーションフレイム!!」


ハーゲンの声に魔法使いであるマリユスは手に持つ杖の先端に一メートル程の火球を作り出し、ハーゲンに襲い掛かろうとしている黒い木の人形に放つ。

大剣を頭部から引き抜いたハーゲンがその場を離脱した瞬間、マリユスの放った火球が黒い木の人形に直撃し炎上、数秒と経たず黒い木の人形は灰と化した。


「ナイスだマリユス!! どんどん行くぞ!!」


「はい!! 本来の私の魔法ではあそこまでの威力はない、さすが神の祝福に加護だ!! これなら!!」


「後ろだ、ハーゲン、マリユス!!」


パンプルムッスの声にハーゲンとマリユスが咄嗟に振り返ると、背後から襲いかかろうとしている数体の黒い木の人形の姿があった。

だが、次の瞬間、黒い木の人形の頭部が突如として吹き飛んだ。


「さすがの腕前だパンプルムッス!! その調子で頼むぞ!!」


「おうともさ、伊達にエルフじゃあないぜ!! 風の精霊よ我が矢に宿りて敵を穿て!! ウィンドアロー!!」


パンプルムッスが何本もの矢を弓につがえ、無造作に空へと射ると、急に突風が吹き荒れて風をまとった矢が一人でに黒い木の人形目がけて飛んでいき、直撃した頭部を吹き飛ばしていく。


「風の神プラテリア様の属神たるマレッサ様の祝福だ、風の精霊の調子も最高だぜ!!」


だが、頭部がなくなっても黒い木の人形は止まらない。

体だけでなおも動こうとする黒い木の人形に向けて、凄まじい跳躍力で枝から枝へ飛び跳ねながらバニニが一気に距離を詰める。


「兎拳、満月兎蹴りッ!!」


バニニは凄まじい速度のまま空中で回転しながら蹴りを放ち、瞬く間に頭部が吹き飛ばされている黒い木の人形を次々と蹴り壊してしまった。

カマッセ・パピー、B級冒険者チームって言ってたからもしかしたら弱いかもと思ってたけど、マレッサたちのバフがあるとは言え、それを踏まえた上で凄く強い。

チューニーの人たちも負けてはいない。


「踊れ!! 私の暗黒剣たちッ!! ダークネス・ダンス!!」


モッブスの周りを飛ぶ四本の黒い剣、暗黒剣が生き物の様に空中を動きながら、黒い木の人形を切りつけていく。


「まだまだ!! 踊り狂え私の暗黒剣よ!! マッドネス・ダンス!!」


モッブスの掛け声と共に四本の暗黒剣がその場で高速回転を始める。

指揮者の如く手を振るい、モッブスは周囲の黒い木の人形目がけて、高速回転する暗黒剣で攻撃を加え、寸断し破壊していった。


「身体強化魔法、アームブーストッ!! さらに浄化魔法ピュリフィケーション!!」


魔法で自身の両腕を強化して筋肉を増強、二回り以上も巨大化させた腕に浄化の魔法を上乗せしたヨー・ワイネンはその丸太の様に雄々しい両腕を乱雑に振り回して、黒い木の人形をなぎ倒していった。

ヨー・ワイネンの腕が当たった部分が崩れ落ちて、その部分だけ浄化されているのが分かる。


「これぞ、ボクのオリジナル魔法、身体強化と浄化の魔法を組み合わせた合体魔法、浄化の巨碗!! アンデッド系の魔物に効果絶大でしたが、神々の祝福や加護によって貴方たちにも効果は大きいようだね!!」


ヨー・ワイネンの攻撃で体の所々が破壊され、フラフラになっている黒い木の人形に魔法剣士ゼロ・インフィニティーが炎を纏った剣を突き立て、黒い木の人形に蹴りを入れてその反動で距離を取る。

そして、着地と同時にパチンと指を鳴らした。

途端に炎を纏った剣がドカンッと爆発し、黒い木の人形を跡形もなく消し飛ばしてしまった。


「火炎爆裂剣、神々の祝福により貴様らをも容易く屠る。我が魔法剣に戦慄するがいい」


「ゼロ、ちょっと邪魔かしらぁ」


「ッ!?」


召喚士ラッテのまたがっている何十本もの触手を持つ謎の生き物がゼロ・インフィニティーに近づいていた黒い木の人形に向けて触手を伸ばす。

触手に巻き付かれた黒い木の人形はその強力な締め付けによって一瞬でグシャリと潰され、そのまま思い切り投げ捨てられた。

凄まじい勢いで投げ捨てられた黒い木の人形は他の黒い木の人形を巻き込み、バラバラになってしまった。

ラッテの声でその触手をかわしていたゼロ・インフィニティーはラッテの後方に移動し、ため息をついた。


「ラッテ、もう少し早く声をかけろ」


「遅かったかしらぁ? 次からは気をつけるかしらぁ」


ラッテの言葉に肩をすくめてみせたゼロ・インフィニティーは新たな魔法剣を作り出すと、別の黒い木の人形へと走りだした。

チームを結成したばかりと言っていたチューニーは単独での戦いが多く、カマッセ・パピーと比べて余り連携が上手くいっていないように見える。


『わっちたちの祝福や加護があるとはいえ、やるもんねぇ。だてに冒険者してないみたいもんね。今のアイツらはA級冒険者くらいはある感じもんね』


『そう? あの程度の木偶に手間取ってるようじゃあ、魔王国だと十人隊長クラスって所かしらね。でも、ただの人間たちにしてはマシじゃない? まぁ、私様たちの祝福を受けているのだから、あのくらいはしてもらわないと困るのだけれど』


黒い木の人形と戦っているカマッセ・パピー、チューニーの様子を見て、マレッサとパルカがそれぞれの感想を口にした。

俺から見たら、どちらの冒険者チームも凄いとしか言えないのだが、それでもA級冒険者くらいらしい。

A以上の冒険者はもっと凄いのだろう、もしかしたらデイジー叔父さん以上の冒険者も居たりするのだろうか、想像は出来ないが。

とは言え、この調子ならナルカが死を吸収しきるまで時間は十分稼げるはずだ。

心なしかナルカが大きくなっている気もするが、今は気にしている場合ではない。


「マレッサ、パルカあとどのくらいだ?」


『そうもんね、この感じならあと二、三分くらいもんね』


『人間、アンタは次に潰す場所の目星でもつけてなさい。ちんたらしてる暇はないわよ』


「そうだな、分かった!!」


俺は次に吸収すべき原初の呪いに浸食されている場所を探す事にした。

ざっと見た限り一番大きいのが今吸収している場所だ、他はここの半分かそれ以下の浸食具合、まずは住民に近い所から潰していって安全を出来るだけ確保した方がいいだろうか。

……いや、待てよ。

あの時、原初の呪いはマレッサの蔦の中を通って地下に移動していた、今もそれをしていない保証はない。

もしかしたらこの大きな枝の中を浸食してるかもしれない。


「なぁ、マレッサ。枝の中とかも調べる事は可能か?」


『あぁ、なるほど。あの時と同じ様に見えない所から移動してる可能性もあるって事もんか。あり得なくもないもんね、セルバとパスを繋いでセルバの大樹で違和感のある場所を調べてもらうもん』


「同じ手は食いたくないからな、よろしく頼む」


『任せとくもん』


ざっと見回してみて、原初の呪いに浸食されている黒い場所は二十か所は越えている。

それでも、ちょっとずつ潰していけば絶対何とかなるはずだ。

そうこう言っている内にナルカが浸食されていたセルバの大樹から死を吸収し尽くしていた。

浸食されていた部分は普通の木に戻っていたが、ボロボロになっていてすぐに崩れ落ちていってしまった。

浸食された部分から死を吸収しても、既に死んだ部分は完全に元通りにはならないようだ。

だからこそ、急いで行動しなければ。

俺たちは次に潰す原初の呪いに浸食されている場所へと急いだ。

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