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75・そろそろ反撃をはじめようかって話

プナナを寝かせている部屋を出て、セルバは外へと向かいながらパチンと指を鳴らした。


『プルケ・ポカ、ハグワル・テスカトル出番ネ!!』


止まらず進むセルバの前方に跪いた状態の頭部が蜘蛛の女性プルケ・ポカと二足歩行の豹の皮を丸っとかぶっている様な恰好をした男性ハグワル・テスカトルが姿を現した。


「蜘蛛の戦士、プルケ・ポカここに」


「豹の戦士、ハグワル・テスカトルここに」


『我が子らを助けに行くネ。ワタシの失態であったとは言え、原初の呪いの走狗と成り果てた我が体の一部、もはや戻す術はないネ。ことごとく打ち滅ぼすネ』


「「御意ッ!」」


プルケ・ポカとハグワル・テスカトルはセルバの命令を聞くや否や、すぐさま廊下の先の扉まで一気に跳躍して戸を蹴り開けて開けて外へと躍り出ていった。

二人の開けた扉から外に出たセルバはバルコニーの様になっている場所から、眼下で黒い木の人形の大群と戦っているカマッセ・パピーやチューニーに加勢するプルケ・ポカとハグワル・テスカトルの姿を満足げに眺めた後、守られている住民たちの中になんとも複雑そうな顔をしている二つの影を見つけて、ハァとため息をついた。

セルバはその二つの影、エルフの長レフレクシーボさんとドワーフの長アウストゥリさんに向けて、檄を飛ばす。


『エルフの長よ、ドワーフの長よ!! 我が一族こそがセルバの最愛の子と謳うならば、他のセルバの子は汝らが弟妹と心得よ!! 原初の呪いに取り込まれ、黒い木偶人形と化した我が体の一部に遠慮容赦は無用、セルバの子として己が弟妹たちを己の手で守れッ!!』


セルバの声を聞き、レフレクシーボさんとアウストゥリさんはハッとして、顔を上げセルバの姿を見た。

そして、二人は互いに頷き合って各々の武器を手に、最前線へと走り出す。


『力ある者は力無き者を助けよ!! 皆、ワタシの愛する子、血気に逸り、その命をむざむざ散らす事は許さん!! 異国の客人もまた、我が領域にあるのならば我が子も同じ、力弱き弟妹を守る為に奮戦せよ!! 我こそはセルバブラッソが守護神セルバなり、神の前にその武を示すが良い!! 勇敢なる戦士に我が加護を!!』


セルバの体から幾筋もの光が放たれ、戦っている者たちにその光が宿っていく。

恐らく戦っている人たち全員に自分の加護を授けたのだろう。

ふらりと体を揺らし、倒れそうになったセルバの体を咄嗟に支える。


「大丈夫ですかセルバ様!?」


『ありがとうネ、ヒイロ。このくらい平気ネ』


『まったく無茶をするもんね。この人数に加護を授けるとか、神核が二割以下の状態でやる事じゃあないもんよ? 今戦ってた人間たちにはパルカが祝福を授けてたから、死への抵抗力は高まってて、それなりにはあの黒い木の人形と戦えてたもんのに』


『キャハ、そうだとしてもここはワタシの国、あの子たちはワタシの子ネ。子を守る為に全力を尽くさない親がいるとでも?』


どうやらセルバはかなりの無茶をしているようだが、恐らくあの黒い木の人形を一層するまでは無茶し続ける気がする。

体を起こし、俺の頭を撫でたセルバはニカッと笑って、一部のセルバの大樹の枝を動かして黒い木の人形を攻撃し始めた。

だが、黒い木の人形は至る所におびただしい数存在しており、百や二百減らしても原初の呪いに浸食されている部分からすぐさま追加が湧いて出てくる。

原初の呪いの大元はデイジー叔父さんが抑えてる、プナナが持っていたセルバの神核から溢れた原初の呪いの一部はセルバ自身を浸食していたが、それはナルカが先程吸収した。

だとすれば、セルバの大樹に残っている原初の呪いは黒い木の人形を生み出しているあの黒く浸食されている場所だけだ。

何か所かあるあの浸食された場所をどうにか出来れば、セルバの大樹は安全に出来る。

セルバの大樹が安全になれば、デイジー叔父さんの援護にも力を割けるようになるはずだ。


「マレッサ、手伝ってくれ!! ナルカも力を貸してくれ!!」


俺はマレッサの手を握ってバルコニーから飛び降りた。


『ちょッ!? いきなり何をするもん!?』


「ナルカにあの浸食されてる部分の死を吸収してもらえば、黒い木の人形はもう出てこれなくなるはずだろ!? 浸食された部分を全部吸収してここが安全になれば、デイジー叔父さんの援護が出来る!!」


『んんん……確かにそうもんけど、ヒイロに無茶はしてほしくないもんねぇ』


俺の手を握ったままゆっくりと降下していくマレッサだが、俺の提案に少し難色を示した。

確かに、無茶ではある。

あの黒い木の人形を全て掻い潜り、あいつらが湧いて出る場所でナルカが原初の呪いを吸収しきるまで待つ必要があるのだから。


『なんでマレッサも神体顕現してるのよ。神体顕現できる程信仰したのね、私様以外の神を』


ふわりと上から舞い降りてきたパルカはなんだか少しふくれっ面をしていた。

何か嫌な事でもあったのだろうか?

とりあえず、怪我なんかなさそうでホッとした。


「パルカ!! 無事そうでよかった!!」


『当然、神体顕現しているのよ。原初の呪いと言えど、今の私様を死なせるのは難しいでしょうね』


「マレッサ、パルカと一緒ならなんとか出来るか?」


『そうもんねぇ、パルカともう少し戦力があれば安全に浸食された部分を処理できるかもしれないもん』


『え、何の話?』


俺はパルカに原初の呪いに浸食された部分をどうにかしたい事を伝え、その協力をお願いした。


『危ないからやめた方がいいわよ。いくらナルカがいるからって下手したら死ぬわよ。人間がそこまでする義理なんてないわ。今の現状はセルバの不始末でしょ? あの死体の持ってた神核のはめ込まれた飾りをすぐに回収してない方が悪いのよ。それに私様の祝福に加えて、セルバの守護精霊二体にエルフとドワーフの長が戦線に参加、更にセルバの加護が加わった。多少の犠牲は出るかもしれないけど全滅する可能性はほぼ回避できたと言っていいわ。人間、アンタは安全な場所で事が終わるまで待ってればいいのよ、それが一番安全よ。デイジーちゃんだって人間の安全を望むはずよ』


「言ってる事は分かる、心配してくれてる事も。それでも俺は自分に出来る事があるなら、行動したいんだ、頼むよパルカ」


俺がそう言って頭を下げる前にパルカは俺の額を軽くデコピンされた。

ちょっと痛い。

少し痛がっている俺を見て、パルカはふんと鼻を鳴らした。


『はいはい、そう言うと思ってたわよ。お人好しで強情っぱりだなんて実に面倒な人間ね。今のは私様の配慮を無碍にした報いだと思いなさい。で、もう少し手駒がいるんでしょマレッサ?』


『ん、そうもん。ナルカを運べるのは繋がりのあるヒイロだけもん、わっちとパルカで原初の呪いをナルカが吸収しやすくする必要があるもんから、ヒイロを守る戦力が必要もん』


『なら、こいつらで十分ね。来なさい人間ども』


パルカが手をパンパンと叩くと、カマッセ・パピーとチューニーの人たちが凄い勢いで走ってきた。

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