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46・三柱目の神様って話

『キャハ、来ちゃったネッ!!』


そう言って、グビグビと酒を一気に煽る女性。

マレッサが言ってる事も分かってるし、見えてるみたいだし、もしかしてこの人……。


『な、なんでセルバがここに居るもん!? 森の外もんよね、ここ!?』


『あぁ、神殿の上に植えてた木々、あれアンタの身体なのね。その子、アンタの巫女? よくもまぁ、あんな小さな森からそこまでアンタの意識を出力できるわね。で、何しに来たのセルバ?』


マレッサとパルカがこの女性をセルバと呼んだ以上、この女性は本物のセルバという事になる。

ただ、この女性の体はセルバの巫女のモノらしく、神殿の上に植えられていた木からセルバの意識を受信してる状態のようだ。

セルバはセルバブラッソの守護神であり、セルバブラッソの国土全てがセルバそのものという、とんでもない存在だ。

そんな神様がなんでこんな所に?

そんな事を考えてると、セルバが俺の太ももの上に座った。

なんだいきなり、ただの高校生には刺激が強すぎる、やめてくれ。

ていうか、この人めちゃくちゃ酒臭い、どんだけ飲んでるんだ?


『何しに? 決まってるネー、マレッサちゃんとパルカちゃんがお熱を上げてる人間を見に来たネー!! うんうん、うぶで可愛らしい子ネ、食べちゃいたいくらいネッ!! 顔真っ赤にしてる所もそそられるネッ!! キャハハハハハッ、ワタシはセルバ、よろしくネー!!』


「い、いきなり、なんなんですか!? 椅子ならそっちにもあるんでそっちに座ってもらえると色々助かるんですけど!? ていうか、マレッサとパルカがなんかすっごい睨んでる気がするから、俺の上からどいてくれると助かりますので、ホントお願いします!!」


『そうもん!! さっさとどくもんセルバ!! 神の威厳ってのが損なわれるもんよ!!』


『人間も嬉しそうにデレデレしてるんじゃないわよ!! 私様の信徒でしょ!! 突っつくわよ!!』


ちぇーと言いながらセルバはしぶしぶと言った感じで俺の太ももの上から椅子に座りなおしてくれた。

ふぅ、惜しい気はするが色々危なかった。


「うふ、とっても刺激的な神様ねぇん。あまり緋色ちゃんをイジメないでもらえると助かるわぁん。緋色ちゃんってばそういう免疫ないんだものぉん」


デイジー叔父さん、そういう事は言わないでくれ、なんか恥ずかしい。

キャハッと笑ってセルバはデイジー叔父さんに向き直る。

先程と変わらぬ笑顔だが、どこか剣呑な空気を感じた。


『ふぅん、あなたがデイジーちゃんですネー。噂は聞いてるネ、とーっても強いって。どうです、これから一勝負してみませんかネ?』


「あらぁん、神様からのお誘いなんて光栄だわぁん。あたくし、相当強いわよぉん?」


『キャハッ、神相手にその大言壮語、そそられますネー』


は? この二人、本気で戦うつもり?

セヴェリーノの時はマレッサとパルカの二人がかりで凄い結界みたいなのを張って、それでも多少外に影響が出てたっていうのに、本物の神様となんか戦ったらどうなるか分かったもんじゃない。


「い、いやいやいや、ちょっと二人とも本気!? は、話し合いで解決とかできません!? デイジー叔父さんも大人なんだから、時と場所を考えて!! マレッサとパルカも二人を止めてくれ!!」


『デイジーに神力五百もん』


『なら私様はセルバに五百よ』


何て事だ、セヴェリーノの時はあんなに焦っていた癖に、他国だからって放置する気満々じゃあないか。

マレッサはともかくパルカはそういうキャラじゃないと思ってたんだが、とうとうマレッサに毒されてしまったのだろうか。


『なんか失礼な事考えてないかもん?』


「滅相もございません、俺は敬虔なマレッサ様の信徒でございますゆえ」


『うひょ、そうもんよね、ヒイロはわっちの敬虔な信徒もんよね~』


『ちょっと、人間!! アンタは私様の信徒でもあるのよ!! マレッサだけズルいわよ!!』


「パルカ様の敬虔な信徒でもございます、どうかご容赦をば」


『ふふん、いいわ、許すわ!! 私様ってば寛大だもの!!』 


ふう、この二人がちょろくて助かった。


「いや、そんな事はどうでもいい、デイジー叔父さんとセルバさんを止めないと大変な事になるだろ!?」


『いや、大丈夫もんよ』


『そうね、セヴェリーノの時みたいにはならないから安心なさい』


妙に落ち着いているマレッサとパルカの言葉に首を傾げていると、何故かデイジー叔父さんとセルバがテーブルの上を片付け始めた。

ん、どういう事だ?

更に俺が混乱していると、セルバに気付いた店員さんが騒ぎ始めた。


「おぉッ!? セルバ様の巫女様じゃないか!! 酒を飲んでるから今はセルバ様がいらっしゃっているのか!!」


「ホントだ、セルバ様が降臨なさっておいでだ、しかも旅の人に絡んでる」


「セルバ様が来てるって!? 神託の日でもないのに珍しいな!!」


がやがやと騒がしくなる店内、客のほとんどがデイジー叔父さんとセルバを囲む形で集まって来ていた。


『はぁーい、みんな元気に飲んでるネー? ワタシは今からこの人間のデイジーちゃんと勝負するネッ!! 応援よろしくネー!!』


そう言ってセルバは周りの人たちに手を振った。

その瞬間に沸き立つ客たち、心なしかさっきより人が増えてる気がする。

セルバ来たって事が伝わって集まってきているのだろうか。


「おおおおおお!! あんた運がいいな、セルバ様と勝負だなんて!! もし勝てたらセルバ様のご利益が貰えるぞ!!」


「勝負の相手に選んでもらえただけでも自慢できるぞ、なんたってセルバ様は強い相手にしか勝負をもちかけないからな!!」


「おっしゃあ、セルバ様に五十だ!!」


「ならデイジーちゃんって人に三十!!」


「おら、どいたどいた、準備の邪魔だ、どいとくれ―!!」


店員が人込みをかき分けながら、大きな樽をいくつかテーブルの横に置いた。

そして、店員が手にもつ木槌で勢いよく樽の蓋を破壊する。

この匂い、酒か?

色的にワインっぽい感じだが、一体何が始まるんだこれ?

店員はワインをなみなみと注いだ大きなコップをデイジー叔父さんとセルバの前に置いた。


『さぁ、飲み比べ勝負ですネー!! 周りのみんなもジャンジャン飲んでくださいネー!!』


「「「おおおおおおおお!!」」」


店内の客たちが大歓声を上げる。

え、飲み比べ? なんで?

混乱しきりの俺を尻目にデイジー叔父さんとセルバの飲み比べ勝負が始まった。

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