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41・別にお人好しって訳じゃないって話

「緋色ちゃんが助けを求めるなら、あたくしは何処にだって現れるのよぉん!! 愛にパゥワーに不可能は無いのよぉん!! プリティーセクシーラグジュアリーエンジェェエエエル、デイジーちゃんよぉおおおおおん!!」


俺からは死角になってちゃんと見えないが、俺の背中からデイジー叔父さんが顔を出したまま名乗りを上げたようだ。

突然のデイジー叔父さんにオリジナルカース、俺命名ナルカはあまりの出来事に白目をむいて気絶してしまった。

ぽてんと倒れ込み、うきゅーみたいな鳴き声を出している。


『はッ!? 訳の分からない状況もんけど、デイジーよくやったもん!! 何でここにとか、もうどうでもいいもんデイジーだし!! オリジナルカースの模造体、ここで仕留めるもん!!』


『デイジーちゃんについて深く考えると神でも頭が混乱するから、もうそういうモノだって思う事にするわ!! よくも人間の中に入り込もうとしたわね!! 私様だってまだ潜りこんでないのに!! 死の権能をありったけ叩きこんでやるわよ!!』


マレッサとパルカが俺から離れたナルカに向かって、猛烈な勢いで距離を詰めて飛びかかった。


『くらええええい!! 超マレッサダイナミック!!』


『死ねええええええええいッッ!! 死殺天使涅槃寂静デッドリーアルマゲドン!!』 


なんかよく分からないが二人が物凄い攻撃をやろうとしている事が分かった、特にパルカ。

なんかヤバいオーラで空間がゆがんで見える。


「デイジー叔父さん」


「おまかせよぉん」


俺の呼びかけにデイジー叔父さんは何も聞かずに動いてくれた。

俺の背中からぬるりと出てきたデイジー叔父さんは瞬く間にマレッサとパルカの攻撃を止めた。


「ダメよぉん、マレッサちゃん、パルカちゃん。そういうのはちょっとよろしくないわぁん。緋色ちゃんの目の前で気絶してる子を殺すだなんてねぇん」


凄まじい魔力を込めていたであろう攻撃を容易く霧散させられ、マレッサとパルカは多少驚いた様子だったが、すぐに冷静になった。


『デイジーはそいつが何なのか知らないからそんな事が言えるもん。ちょっと前に他の分神体から情報が共有されたもん。こいつはオリジナルカース、この世に最初に生まれ落ちた人間の呪いの模造体もん』


『あの写真に写ってた黒い箱、あれがオリジナルカースが込められてた原初の呪い箱だったのよ。全部回収して冥域の底で浄化中のはずだったのに、とある古代遺跡から原初の呪い箱が見つかったのよ。その場で発見されたのは一つだけだったけど、もう一つそこに封印されていた形跡があったわ。こいつはその行方知れずの方の原初の呪い箱と関係がある可能性があるのよ』


『神ですら、むき出しの原初の呪いに触れたら死ぬもん。あの写真の様に封印されていた状態でも、ただの人間が触れれば死は免れないもん。あの写真はただその場を写しただけじゃなくて、原初の呪い箱の呪いごと写し撮っていたんだもん。こいつはその写真に写った呪いが人格を得た存在もん。今の内に処理しないと、さっきみたいにヒイロの精神とか魂に寄生して中から呪い殺されるもんよ!!』


なるほど、マレッサとパルカが焦ってナルカを始末しようとしたのも頷ける。

神様でも殺せるような呪い、それはとんでもないものだ。

確かに二人の言う通り、ナルカをここで殺した方が後の世の為になるのかもしれない。


「でもな、俺は聞いちまったんだ。ナルカが死にたくない、消えたくないって言ってるのを。二人の危惧を俺はたぶんきちんと理解できてない、だからこんな事を言ってしまうんだが、ナルカがただそこに居るだけで死ななきゃいけないなんて悲しいじゃないか。頼む、なんとか出来ないか」


俺はマレッサとパルカに頭を下げた。

ナルカが俺をお人好しと言っていたが、そうじゃない。

俺はただ、目の前で人が、ナルカが人じゃなかったとしても、殺されるのを見たくなかっただけ。

俺はただ、自分が嫌な思いをするのが嫌なだけのわがままな奴でしかないのだ。


『もん……、どうするもんパルカ』


『分かった、そいつ死なすのやめるわ』


『お前は自分が神って自覚あるもんか!? ちょっとヒイロに肩入れし過ぎもんよ!! オリジナルカースと繋がってるもんよ、この模造体は!! オリジナルの方に自我が芽生えたら、コイツを通してこっちに来る可能性だってあるもんよ、分かってるもん!?』


『うるさいわね!! 分かってるわよ、デイジーちゃんがいるからなんとかなるでしょ、多分!!』


『デイジーを根拠にするなもん!! デイジーが神より強いのは分かってるもんけど、原初の呪いに勝てるとは限らないもんよ!! 原初の呪いは生まれ落ちてから今までの数万年分の死を内包してるもん、デイジーだってタダじゃあ済まない、はず、たぶん、恐らく……もん』


マレッサとパルカは俺の叔父さんを何だと思っているのだろうか。

いくら強くてもデイジー叔父さんはただの人間だというのに、ちょっと次元を越えて甥である俺を助けに来てくれる程度の……。

まぁ、普通じゃないのは確かだな、うん。


「マレッサちゃん、パルカちゃん安心なさぁい。あたくしはファビュラスにセクシーキュートなエクストリームエンジェル、デイジーちゃんよぉん。愛のパゥワーでなんだってできるんだから、その呪いだってへっちゃらよぉん。だから、緋色ちゃんを助けてあげてほしいわ。お願い」


デイジー叔父さんもマレッサとパルカに頭を下げた。

ぐぬぬと唸るマレッサを、パルカは軽くくちばしでつつく。


『で、アンタはどうするのよ。私様は人間に協力するわよ、神以上の力を持つ存在に頭を下げられたのもあるし、人間たちが最初の人間の呪い、例えその模造体だとしても、その原初の呪いをどうするのかちょっと興味がわいたから』


『あーもー、分かったもん。出来る範囲でなら手伝うもん。好きにすればいいもん、それで死ぬならヒイロもデイジーもそれまでだったって事もん、わっちは責任持たないもんからね』


「ありがとう、マレッサ、パルカ。恩にきるよ。二人に出会えて本当に良かった、二人は俺にとって最高の女神だ」


うひょーとか、んほーとか言ってマレッサとパルカがピカーッと光り出した。

今の俺の言葉も信仰になったようだ。

何度かマレッサとパルカの光る姿を見たが、俺の言葉には神様に対して何らかの効果があるスキルか魔法でもかかっているのだろうか、と不思議に思う。

それともただ単にマレッサとパルカがちょろ過ぎるだけなのだろうか。

まぁ、今はそんな事どうでもいいか。

オリジナルカース、原初の呪いの模造体、ナルカをどうにかしないと。

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