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39・死の予感が付きまとうって怖いよねって話

絵、というか写真に写っている黒い箱から強烈な視線を感じ、俺は少し気分が悪くなった。

カネーガはもう少し色々とこの写真について語りかったようだが、他の護衛チームがいる手前、俺たちだけ贔屓されているような誤解を受けかねないから、とお礼を言ってその場を後にした。

デイジー叔父さんはあの写真を見て、少し真剣な顔つきになっていたが何か思う所があったのだろうか。


「ねぇん、マレッサちゃんパルカちゃん、アレについて率直な意見を聞きたいのだけれどぉん?」


『んー、意見と言われても、あの絵自体はなんの問題もなかったもんよ。ヒイロが感じたっていう視線とかわっちには分からなかったもん。まぁ、あの額縁に施されてた封印がなかなか凄いっていうのも影響してるとは思うもんけど』


『私様はちょっと違う意見よ。額縁の封印については同意見だけれど、描かれていた黒い箱、アレは相当ヤバイ物よ。写真? だっけ、あまりに写実的過ぎてあの絵が黒い箱の呪いをある程度再現しちゃってるのよ。死の神である私様でも写真を直接見るまでは気づかない程度だったけれど、あの黒い箱に込められてるのは死の呪いよ』


「額縁に施されてる封印に関しては二人とも意見は一致してるのねぇん。パルカちゃんは死の神様だから写真に写ってる黒い箱の危険性を感じ取れたのかしらぁん? ただ、問題は何故緋色ちゃんが直接見た訳でもないあの写真から死の予感を察知できたか、よねぇん。正直、あたくしは何も感じ取れなかったわぁん」


ん、死の神であるパルカ以外にあの写真に写ってる黒い箱の視線というか死の予感を感じてないって事はこれ完全に俺がターゲットにされているのでは?

パルカでさえ直接見るまでは気づかない程度なのに俺にはそれ以前から視線を向けてるって、これヤベェのでは??

いかん、現実逃避しないと心が折れそうだ。


「あ、あー、そういえばさ、写真の事を写実的な絵って言ってたし、こっちには写真を撮る機械、カメラとかってないのか?」


『似たような事は魔法でもある程度は再現できるもんけど、機械、魔力を使わない複雑な絡繰り道具の事もんよね、そう言った物は聞いた覚えはないもん。そう言った道具類は生活が安定してないと発展しないもんからねぇ。まぁ、特殊な魔法具の中にないとは言い切れないもんけど、一般には普及してはないはずもん』


『似たような物なら魔王国とか一部の軍事大国にならあるわよ。マレッサも言ったように特殊な魔法具の一種として珍重されてるわ。目に映っている風景を魔法具で読み取って、紙や布に焼き映す形で転写するの。まぁ、読み取る際の負荷が大きくて目が潰れちゃうのが難点だけどね』


「異世界こわ。なにそれ、もう拷問じゃん」


『まぁ、罪人を使ってるって点では拷問と言えなくもないわね。敵地の地形とか陣地を絵で描くよりもずっと早く、手に入れられるから戦争時には便利なのよね』


あぁ、だから一部の軍事大国ならあるって事か。

戦争で役に立つ上に捕虜とかを利用すれば損害なしで相手の地形とか陣地をすぐに把握できるからな。

遠見の魔法とか使えば必要ないのでは、とも思ったが普通は見られたり、聞かれたりしないように妨害魔法みたいなのを使っているんだろう。


『ただ、その魔法具を使ったとしても、写真ってやつほど鮮明には映らないし、あんなに色鮮やかでもないわ。人間、アンタの居た世界ではそういった物が発展してるのね』


パルカに言われてふと思ったが、なんでこの世界にはないはずの写真なんて物があるんだ?

最初にそこに気づくべきであったが、自分に迫る死の予感とやらのせいで、混乱していたのだろう。

写真があるなら、当然それを撮ったカメラがあるはず、それを印刷した印刷機も。

そんな物を誰がこの世界に持ち込んだのか、可能性としてはそう言った機械自体が召喚されてきたかそれを持った人物が召喚されたか。

その場合は電源をどこから持ってくるのかって話になるんだが、それは魔力とかでどうにかゴリ押せるのかもしれない。

そう言えば、俺が召喚された時、一人、スマホで周りの様子を撮ってる子がいたっけ。

確かギャルっぽい子だった気がする。

勇者特権ってかなりデタラメだから、スマホに何か特殊な機能を追加する勇者特権なんかがあるのかも……それはさすがに飛躍し過ぎか。


「ともかく、今の所はあまり近づかないようにするくらいしか対処方がないみたいだなぁ。何も起きないといいんだけど……」


『まぁ、わっちたちが側についてるし、最悪死にたてほやほやなら、分神体でもパルカが何とか出来るはずもん』


『そうね、今の私様でも冥域に魂が落ち切ってなかったら引っ張りあげる程度はできるわよ。安心して死んでいいわよ!』


「いや、死ぬのはちょっと……」


マレッサとパルカがうんうんと頷いているが普通に死にたくはない。

パルカは自信満々に死んでもいいとは言うが、出来るだけ気を付けるとしよう。

そんなこんなで常に視線を感じながらも見張りをこなし、何事もなく三日目の朝を迎える。

死の予感が気になって、あまり眠る事が出来ずに少し不眠気味だ。


「ふあぁああ……」


移動中に大きなあくびを一つ。

一応、護衛の任務中ではあるので気を付けようとは思うのだが、乗っている馬の揺れが妙に心地よく、ついウトウトとしてしまう。


「緋色ちゃん、大丈夫? 三日目の予定地はまだまだ先みたいよぉん。ちょっと待っててねぇん」


そう言って、デイジー叔父さんは馬上から一瞬姿を消し、数秒後には馬上に戻ってきた。


「ちょっとカネーガちゃんとお話ししてきたわぁん。もう少し進んだら、お馬ちゃんの休息時間を少し取ってくれるそうよぉん。だから、あとちょっと頑張ってねぇん」


馬の休息も確かに必要なのだろうが、自分の為に休息時間を作ってもらったみたいで悪い気もする。

しかし、眠気が凄いのも事実であり、このままでは馬の上で寝てしまいそうだった。

マジックバッグから干し肉を取り出し、それをガム代わりに齧って眠気をごまかして頑張る事にした。

しばらく眠気と格闘していると、先頭の馬車が止まった。

カネーガの部下が各護衛チームの元にやってきて、今後の予定を説明してくれた。

馬休憩を一時間ほど取った後に再出発、そのままセルバブラッソの入り口にあたるセルバブラッソ大森林神殿まで移動し、そこに隣接している宿でドワーフとエルフの戦争が治まるのを待つとの事。

馬の餌桶や水桶の準備を軽く手伝った後、俺は地面に敷いた薄っぺらい布団の上に横になり、目を閉じる。

よほど眠たかったのだろう、あっと言う間に眠りに落ちる事が出来た。


「痛い痛い!! やめて、もうしないから!! 許して!! お願いしますぅうう!!」


どこかで幼い子供が何かに許しをこうて泣きべそをかいている声が聞こえ、目を覚ます。

しかし、周りは真っ暗で何も見えない。

どうしたものかと、声のする方へと進んでみる。

しばらく進むと、スポットライトのように光が当たる場所が見えてきた。

そこには三人、人……まぁ人でいいか、三人いた。

一人は泣きながらうずくまる髪の長い子供、もう一人は毛玉から腕と一本脚の生えたマレッサ、最後の一人は黒のゴシックドレスを着た三つ目の烏パルカだった。


『おら!! さっさと呪いひっこめるもん!! 本物じゃない上に封印がガッツリ効いてるオリジナルカースなんてただのカスもん!! オラァ!!』


『そうよ、さっさとそのじっとりした死の呪いを人間に向けるのやめなさいよ!! もし人間が死んだら、呪いだろうが死なすわよ!!』


「やめてよー!! あちしはただのオリジナルのコピーなんだってー!! 付随してる死の呪いだってオリジナル由来だから、あちしには止めようもないんだってば―!!」


マレッサが泣き叫ぶ子供の尻を叩き、パルカはくちばしで頭をツンツンつついている。

なんだこの状況。

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