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33・他の勇者の現状を把握するのに便利だよねって話

ふと物凄い違和感に気づく。

先程、マレッサとパルカを正式に信仰すると決めたのだが、二人の様子が、というか姿形が明らかにおかしい気がする。

まだ光が完全に収まっていないので、はっきりとした姿は見えていないのだが、どう見てもシルエットがおかしい。

特にマレッサ。


『いやー、この神力の高まりを思えば、ヒイロの信徒になった覚えがないって言葉が如何に本当だったか実感できるもんねぇ。真に心のこもった信仰は、こうも違うものもんかー。この神力の充足ぶり、本体に眷属神が産まれる日も遠くないもんねー!!』


『そうね、人間如きと思っていたのは事実だけれど、この信仰の強さは守護してる国の信徒の百や千どころの騒ぎじゃないわ。そんなスキルを持ってるようには見えなかったのだけれど、異世界人からの信仰ってこうも違うものなのかしら?』


若干、光が収まった事で二人の姿がはっきりとしていく。

マレッサは腕が生えた毛玉の姿から、追加で足が一本生えていた。

一本だたらの子供みたいな見た目じゃねぇか。

もう妖怪のそれじゃねぇか。

パルカは三つ目の普通の烏だったのだが、今はなぜか黒のフリフリのゴシックドレスを着ている三つ目の烏、という姿になっている。

なんで烏の姿でゴシックドレス?

神様って訳がわからない。

俺の混乱をよそにマレッサもパルカも自分の変化を喜んでいるようだった。


「ええ……二人の変化って俺のせいなの? マジ? なんなの俺の信仰って」


「あらあらぁん。パルカちゃんたら、おめかしして可愛らしわぁん。マレッサちゃんもキュートな足が生えたのねぇん、あとでペディキュアしておしゃれにしましょ」


デイジー叔父さんは二人の変化をあっさり受け入れている。

恐らく、そんな簡単に受け入れられるのはデイジー叔父さんだけだろう。


『おお、デイジーちょうどいいもん。報告しておく事があるもん』


「あらぁん、何かしらマレッサちゃん」


『ヒイロ以外の召喚された勇者の現状についてもん』


少し、マレッサの声のトーンが真面目になった気がする。

俺以外の勇者、五十人くらい召喚されていたと思うが、確かに今どうしているのかは気になる。

そう言えば、ゴッデス大蝦蟇斎さんは人間やめてるとか言ってたし、色々聞いておきたい所だ。


『召喚されたヒイロを含む五十五名の勇者はいまやこの世界の各地に散り散りにぶっとんでるもん。デイジーのバリアとわっちの力で落下の衝撃から助けた事で今の所、全員無事もん。更に比較的マレッサピエー近くに落ちた十名のうち三名はマレッサピエーと魔王国の戦争に参加してるもん。これは前にも言ったもんね』


説明してくれるのはありがたいのだが、毛玉に生えた腕と足が物凄く俺の意識を乱してくる。

シュールすぎるだろ、この光景。


『今の所、ギガンウードは最前線で暴れて魔王国のミリオンゴーレム部隊を手あたり次第にぶった切ってるもんね。おかげで戦線は膠着状態、このままいけば停戦交渉も進めやすくなるもん。補給と治療に当たってる勇者の助力も大きいもん。戦争に参加せずマレッサピエー付近でうろついてる七人に関しては、すでにオラシオの手の者が接触して、保護する方向で話を進めてるみたいもん。デイジーのおど……お願いが効いてるようもんね』


「お城の修復の合間にちょっとお話したのよねぇん。召喚した子たちを無下に扱うとちょっとプンプンしちゃうわよぉんって。あたくしのお願いを聞いてくれてるみたいで嬉しいわぁん」


デイジー叔父さん、抜かりないというかなんというか……。

一国の宰相にどんなお話をしたのやら。

いきなり部下を始末しようとしたオラシオがちゃんと保護するのかどうか気になる所ではあるが、デイジー叔父さんがお話したのなら、たぶん大丈夫だろう。


『あと、わっちたち――マレッサの分神体が離れたのが二十五人いるもん。こいつらは自分の意思でこの世界での暮らしを選択したもん。こっちに生きると決めたならこの世界の住民、いつまでも他国の守護神の分神体がいるのも問題になるもん。飛んで行ったそれぞれの国の守護神にある程度の引継ぎをした後、本体のマレッサが回収したもん』


「元の世界に帰らないっていうのか、その二十五人は? どうして?」


『理由は色々もん。多かったのは元の世界に戻る意味がない、だったもん。そっちの世界はなにかと世知辛いみたいもんねぇ。授かった勇者特権を死なない程度につかって、こっちでのんびり暮らすとか人の為に生きるとかなんとか言ってた奴もいたもん』


戻る意味がない、か。

分からなくはないが、急に召喚されていきなり元の世界とおさらばって感じだったのに未練はないのだろうか。

俺は元の世界に戻りたい。


「せっかくの夏休み、無駄にはしたくないからなぁ」


まぁ、元の世界に戻りたい理由が夏休みというのは多少アレかもしれないが、友達と遊んだり、それこそ一夏の恋とかそんな感じの青春を過ごしたいってのも立派な理由と言えなくもないだろう、たぶん。


『残りの三十人は元の世界に戻る意思はあるみたいもん、これはヒイロも含まれるもん。三十人中二十五人はヒイロと同じようにマレッサピエーからかなり離れた場所にいるもんから、移動にかなり手間取ってるみたいもん』


「残りの五人は? どういう状況なんだ?」


『五人の内、四人はエンジョイ勢もん。帰るには帰るけど楽しんでから、って事みたいもん。ダンジョンに潜ったり、この世界の歴史とか調べて好奇心を満たしてるもん。寄り道とかせず真っすぐ動いてほしいものもん』


異世界エンジョイ勢、そんなのいるのか……。

余裕があるというか、なんというか。


「で、最後の一人は? あぁ、そうだゴッデス大蝦蟇斎さんの事も聞きたかったんだ。人間やめたとか言ってたし」


『最後の一人がそのゴッデス大蝦蟇斎もん。あいつ人の体捨てて魔剣そのものになったもん。こっちに来た時と違う存在になったもんから、正規の手順ではもう帰せないもん。なんか変な戯言をほざいて、あっさり体を魔剣に作り替えてたもん。これにはあっちのわっちもドン引きしてたもん』


「は? なにやってんだあの人……」


呆れるというか、なんというか、人間をやめてるって魔物とか悪魔になったとか、そんな感じだと思っていたのだが、想像の斜め上をいっていた。


『ちなみにゴッデス大蝦蟇斎もある意味エンジョイ勢もん。今はSランク指定の高難易度ダンジョン『ラビリンス』に潜ってジブンサイキョーって言いながら魔物を倒して素材をはぎ取ってるもん』


「うわぁ、なんとなく想像できる。あの人そう言うの好きそうだったもんなぁ」


こっちに勇者召喚された人たちの現状を聞き、みんながみんな、帰りたいって訳でもないのかと何とも複雑な気持ちになった。

俺にはデイジー叔父さんがいてくれたからそんなに危機感を持たずに済んでいるが、他の人たちは不安だったり、寂しかったりしているんだろうか。

もし、出会う事があったら協力し合えたらいいなと、俺は思った。


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