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290・何かに気付いた態度って割と分かるよねって話

降り注ぐ豪雨と雷、炎と岩を避けながら俺はデイジー叔父さんに抱えられた状態でその中心地点に向かう。

マレッサが魔力をかなり使って消耗しているので俺が抱きかかえているが、それを見てパルカが物凄い睨んでくる、なんでだろう。

後ろの方に小さくフィーニスの姿が見える、ちゃんとついて来ているようで安心した。


「はぁ~、この雨、炎、雷、岩、とっても厄介ねぇん。勘弁してほしいわぁん」


「ッ!? デイジー叔父さんが厄介って言うほどにとんでもないのこの雨とか雷!?」


不意にデイジー叔父さんが驚くべき事にポロっと弱音を吐いた。

あのデイジー叔父さんが弱音を? まぁ、人間なんだから弱音くらいは吐いたっていいだろう。

でも、あのデイジー叔父さんがこの暴風と豪雨、炎や雷や岩が飛び交う嵐くらいで弱音なんて吐くとは思いもしなかった。

そう思ったの俺だけではなかったようで、パルカや俺の腕の中のマレッサも驚愕しているように見えた。


『デ、デイジーが厄介って思うほどもん!? この嵐が!? わ、わっち達では感知できない何かおぞましい呪いか神位級の魔法が付与でもされてるもんか!?』


『デイジーちゃんが厄介って言うほどの物に晒されて人間は大丈夫なの!? ちょっと、人間、死んでない!? あ、生きてるのね、ちぇ』


パルカ、そこは露骨に残念がらないでくれ。

まぁ、パルカは死の神で何かにつけて俺の魂を保護しようとしているから、気にしなくてもいいか。

ともかく、デイジー叔父さんがこの荒れ狂う嵐程度を厄介と言った理由を考えていたらデイジー叔父さんがあらやだ、と口を開いた。


「みんな勘違いさせてごめんねぇん、厄介って言ったのはほら、あれよぉん。これだけ雨とか風が強いと髪型が崩れちゃうじゃない? 化粧も落ちちゃうし、雷とか炎とか岩って当たったら服が汚れちゃいそうでしょ? だから厄介だなぁって口走っちゃったのよぉん」


「あぁ、そういう。それは確かに厄介だね」


なるほど、髪型や服が汚れるからデイジー叔父さんはこの嵐を厄介と言ったのか、いっそ嵐その物を消し飛ばしたらいいのでは、とは思うのだがデイジー叔父さんがそうしていないのだから、消さない理由が何かあるんだろう。


『並みの魔物どころかAとかS級の魔物でも致命傷を受けそうな、この炎や雷や岩が乱舞する嵐の中で心配するのが髪型や服の汚れもんか……うーん実にデイジーもんねぇ』


『まぁ、いつもの事でしょ、もうだいぶ慣れたわ』


『それもそうもんね、慣れって怖いもん』


確かにそうではあるが、デイジー叔父さんは人間だって事は忘れないでほしいと思う俺。

そんな他愛のない話をしていたら、すぐに目的の場所に到着した、したのだが……。


「うわ、とんでもなく激しいバトルになってる。セヴェリーノとフランコは分かるけど、なんでバルディーニも戦ってるんだろ?」


『ホントにあの子戦ってるわね。しかも、普通に冷静ね、デイジーちゃんに挨拶されて正気を失ってたはずなんだけど、なんでかしら?』


二つに分かれたソロモンの巨体が山の如くそびえ立つ中でセヴェリーノ、フランコ、バルディーニの三人がかなり激しい戦いを繰り広げており、その中心にはソロモンの魂核があった。

三人の戦いを少し観察していると、三人の意図がなんとなしに見えて来た。

ソロモンの魂核を奪おうとするバルディーニ、ソロモンの魂核を奪われまいとするフランコ、ソロモンの魂核とは関係なくフランコを攻撃するセヴェリーノ、そんな感じだ。

見方によってはセヴェリーノとバルディーニが協力してフランコと戦っているようにも見える、本人たちにその意識があるかは別ではあるが。

ただ不思議なのは、何故バルディーニがソロモンの魂核を奪おうとしているのかだ。


「見た感じ、バルディーニがソロモンの魂核を狙ってるっぽいんだけど、なんでか分かる?」


『うーん、そうもんねぇ……。あれだけ巨大で頑丈な魂核なら中に蓄えている魔力がかなりの物のはずもん、それに魂も無事なはず。肉体がこのありさまで魂がまだ冥域に落ちてない以上、ソロモンはまだ生きてるもん。魂核を回収すれば、再生させる事も可能なはずもん』


マレッサの言葉を聞き、俺はなるほどと腑に落ちた。

魂核は魔力を収める物質化した魂の器とスサが言っていたが、その器で魂が冥域とやらに落ちるのを防いでいるのかもしれない。

これだけ巨大で大暴れしたソロモンという存在が魔王軍にある限り、マレッサピエー側にはかなりのプレッシャーがかかり続けるだろう、回収して再生させようとするのは理にかなっている。


『……あ』


「ん? どうしたパルカ、何か気付いたのか?」


唐突にパルカが声を漏らす、何かに気付いた様な感じだったが、何に気付いたのだろうか。

もしかしたら、ナルカが言っていたパルカに似たなにかでも見つけたのだろうか。


『い、いえ、ななななんでもないわ。気のせいだったわ、ええ、ええ、気のせい、とっても気のせいだったから、ここからちょっと離れましょ。危ないし、ええ、とっても、危ないから』


急にパルカが慌てて、ここから離れるように言い始めてデイジー叔父さんをグイグイと押し始めた。

どうしたのだろうか、なんだかパルカの様子がおかしい。

俺がパルカの様子をいぶかしんでいると、マジックバッグの中からナルカが姿を現した。


「あったー、あれー。あれが姉母様に似てるのー。ソロモンのこんかくってやつだったんだー」


『……』


ナルカがソロモンの魂核を黒いスライム状の触手で指さし、その様子を見てパルカは天を仰いでいた。

ソロモンの魂核がパルカに似ている物って事なのか? 

パルカの様子を見れば、何かしらの心当たりがあるような感じだ。

一応、確認した方がいいだろう。

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