286・仲間との合流と現状把握って話
『人間ッ、無事ね!!』
「パル――ぐぇッ!?」
炎の海から少し離れた安全な場所に降り立った瞬間、俺のみぞおちにパルカのクチバシが突き刺さった。
みぞおちにめり込むクチバシの痛みに歯を食いしばりつつ、ドリル回転しそうな勢いのパルカを掴み、その動きを制する。
「た、ただいま、パルカ。無事だから、安心してほしい。あとドリル回転はやめてほしい」
『べ、べ別に心配とかはしてなかったけれど? 私様が神位魔法まで使ったんだから、無駄にならなくてよかったってだけよ!! それはそれとしてドリルって何?』
小首を傾げるパルカに曖昧な笑みを返していると、ズンッと轟音をたてて何者かが地上に降り立った。
何事かと思ったが、よくよく見ればそれはボロボロのジャージ姿で右目に眼帯をつけたみそ……二十九歳のゴッデス大蝦蟇斎さんだった。
「あー、おつかれヒイロ君。数時間はあの肉の山の相手する羽目になると思ってたんだけど、三十分もかからずに出てくるなんてやるじゃない。ヒイロ君にくっついてったマレッサちゃんや精霊王とか死の精霊のおかげかしらね。そしてそう私は二十九歳、まだ三十路じゃあない」
相変わらず人の心を読んでいるようだ、だが三十分もかからずに出てくる、とはどういう事だ?
俺たちは確実に一時間以上はあの中にいたんだが、そんな事を考えていたら不意に頭上から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
『どうにもソロモンの中と外で時間の流れに差異があるみたいもんね。恐らく異界化してたソロモンの内部が外界と繋がった際に時間がズレたんだろうもん』
「マレッサ!? よかった空に吹っ飛んだ時、いなかったから心配してたんだ。フィーニスは一緒じゃないのか? ソロモンの中じゃ色々無理させちゃったから謝りたいんだけど」
『あー、そこにいるもんけど。今は会うのやめとくもん』
「なんでだ? ……まさか、怪我でもしてるのか!? そうなら、パルカやマレッサに止められてるけど、フィーニスを信仰すれば怪我なんてすぐに治るはず――」
『落ち着けもん』
「痛いッ!?」
近くにいるというフィーニスを信仰する為に探そうとした俺の頬をマレッサのビンタが襲う。
いきなり何をするんだマレッサは、フィーニスが怪我しているなら早く信仰して回復させなければならないというのに。
『神の話はちゃんと聞けもん。確かに消耗はしてるもん、けどわっちや中にいた連中と比べれば問題ない程度もん。今は会うのやめとけって言ったのは別の理由もん、ちなみに理由はフィーニスの為にも言わないもん』
「……? まぁ、よく分からないけど、怪我してる訳じゃあないんだな? なら、よかった、本当に」
どうやらフィーニスは怪我してる訳ではないらしい、ほっと胸を撫でおろす。
今は会わない方がいいってのは意味が分からないが、近くにはいるみたいだし、無理に探したりはしない方がいいだろう。
「おーい、フィーニス!! 近くにいるらしいから、聞こえてると思って言っておくぞー、色々助けてくれて本当にありがとうなー!! あと、落ち着いたら顔を見せてくれよ、心配だから!!」
適当にフィーニスが居そうな方向に向けて声をかける、返事をするように風が吹いたので、たぶん聞こえたと思っておこう。
「うふん、青春ねぇん。中で何があったかは分からないけれど、アオハルの気配をビンビンに感じるわぁん」
俺の後ろの方でデイジー叔父さんが何か言いながら体をくねらせていたが、気にしないでおこう。
そういえばセルバ様が見当たらない、ゴッデス大蝦蟇斎さんみたくまだ合流してないだけだろうか。
それにオークカイザーさんやスサ、キュイジーヌ、ソロモンの中に居た人たちはどうなったんだ、あの突風で俺みたいに吹っ飛んだの可能性はあるが、あの巨骨戦車やセヴェリーノなんかがあれで吹き飛ぶとは思えない。
まさか、まだあの場所から動いていないのか?
「あの陽キャ神様なら、オークカイザーってのと丸顔の魔族を魔王軍側の陣地に送ってるわよ。一応、傭兵だったみたいだし。スサってボーイッシュロリは私がマレッサピエーの本陣に送ってきたから安心していいわよ。あと、あのでっかい骨の戦車は外に出てからあの水晶みたいなのに一発砲撃して無傷だったのを見てから即撤退してたからたぶん無事でしょ。あのイケメンデカマッチョは変な六本腕の奴と戦い始めてたわ。直にあの戦いみるとさすがに結構迫力あったわね」
「そうなんだ、心を読んで色々教えてくれてありがとうゴッデス大蝦蟇斎さん。あと気になるのはあの炎だけど、俺たちがソロモンの中に入ってる間に何があったの? 空に居たアロガンシアとアリスも気になるけど」
『まぁそこらは気になるわよね。色々説明はするけど、端折るわよ。まだバルディーニが暴れてるから』
「バルディーニってあの魔王国の双璧の一人、だよな。なんでそんなのが暴れてるんだ?」
パルカの口からバルディーニという名前が出てきて、俺は少し驚いた。
その名前には覚えがある、この世界に来て魔王国に飛んでいった時に色々あってデイジー叔父さんがちょっと顔を潰してしまった人の名だ。
個人的にあまり良い印象は持っていない、なにしろオークカイザーさんの片腕を切断したのだから。
『デイジーちゃんが軽く挑発したのよ。それでキレて冥域の炎まで召喚しちゃってこのありさまよ。あぁ、言っておくけど、闇色の炎は触れちゃあ駄目よ。普通の炎なら焼け死んでも魂が残るからいいけど、冥域の炎は死者でも死ぬから。人間だけじゃないわ、フィーニスもナルカも同じよ、迂闊に触ると魂ごと焼かれるわ、気を付けなさい』
パルカの言葉に俺は天を仰いだ、何をしているんだデイジー叔父さん……。
ちらりとデイジー叔父さんの方に目をやると、ウィンクしながらテヘッと舌を出していた、ウィンクの衝撃で生じた風に吹かれながら俺は深く息を吐いた。




