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284・焦ってると変な事考えるよねって話

どうにかしないと、どうにかしないと、そんな考えに支配されていく。

俺自身に出来る事なんてたかが知れている、マレッサやナルカ、フィーニスを信仰すればきっとなんとかなるだろう、だがエスピリトゥ大洞窟で俺は信仰のし過ぎで一度倒れている。

それもあって過度な信仰はマレッサとパルカに禁じられた、まぁ諸事情あってジャヌーラを信仰はしたがそれはそれだ。

マレッサは今疲弊してる、ナルカの力は強力だが精神性が幼い部分がある、ならフィーニスはどうか。

フィーニスだって精霊王になったばかりで幼い面はある、だが精霊王だった四人のじいちゃんたちがサポートについている。

今、頼れるのはフィーニスしかいない。


「フィーニス、無理を承知で頼む!! みんなを連れてこの場から離れてくれ、どうにかスカルたちと合流して、もう少し待つように説得してみる!! 俺に出来る事ならなんでもするから!!」


フィーニスの風に包まれ、宙に浮いている状態で土下座をしてフィーニスに懇願する。

何度も何度もフィーニスやマレッサ、ナルカに助けられ、スサやキュイジーヌにも助けられた、何も出来ない俺はただ頭を下げて、必死にお願いするしかない。


「……なんていうか、そこまでしないとフィーニスちゃんが動いてくれないとか考えてます、ザコお兄さん? まぁ、ザコお兄さんとはほんの僅かな期間しか一緒に居ないから、そういう風に考えるのも仕方ないのかもとかは思いますけど。ていうか、その体勢やめてほしいんですけど、なんかムカツク」


フィーニスが土下座をやめてほしいと言うので、俺は仕方なく土下座をやめた。

何故だか分からないが、フィーニスが怒っているように感じる、何かやらかしてしまっただろうか……いやフィーニスは精霊王、ただの人間の俺が何度も色んな事をお願い出来ていた事の方がおかしかったんじゃないか? 

だとしたら俺はフィーニスに今までなんて失礼な事をしてきたんだ、俺って奴は何てクソ野郎なんだ!!


「なんか人間さん、へんな事考えてる? フィーニスはただふつうに頼ってほしいだけだよー」


「違う、そんなんじゃないわよ!!」


「じゃあ、なんで怒ってるのー?」


「怒ってない!! ちょっとムカついてるだけッ!!」


「怒ってるー」


「怒ってないって言ってんでしょナルカッ!!」


ナルカとフィーニスが何故か言い合いを始めてしまった、これも俺がフィーニスとちゃんとした距離感で接する事が出来ていなかったからに違いない。

きちんと謝って、今後はちゃんと精霊王としてのフィーニスとして接するように伝えよう。


「まーたなんか妙な事考えてるでしょ、ザコお兄さんッ!! あーもー!!」


激昂したフィーニスの頭から激しい炎が噴き出したと同時にソロモンの魂核からぬるりと何かが姿を現したのが目に入った。

それは六本の腕と三つの目を持つ男、セヴェリーノの兄であるフランコだった。

次の瞬間には無数の魔法陣に取り囲まれていた、死の視線に全身が貫かれる感覚、ヤバイ。

気付けば、フィーニスとマレッサの手を掴んでいた、二人を助けようとしたのか、助けてくれとすがろうとしたのか、自分でも分からない。

ただ、身体が勝手に動いていた。

世界がゆっくりとスローに見える、オークカイザーさんとスサとキュイジーヌは俺の手の届かない場所にいて、どうしようもない。

ナルカは黒い触手を伸ばしたままだが本体はマジックバッグの中だ、なんとか身体を捻れば頼りないが盾くらいにはなれるだろう。

手を掴んでいるフィーニスとマレッサだが、引き寄せて魔法の射線から隠すのはちょっと難しい。

もうそんな暇もない、既に無数に展開している魔法陣からは火や水や風や岩が姿を現しているのが見えた。

もう駄目か……と諦めかけた俺の耳にある人物の声が聞こえてきた。


「おいおいクソ兄貴、おいらをほっぽってどこに行こうってんだ?」


その言葉と同時に、眩い閃光と轟音を伴っておびただしい雷の群れが肉の壁を突き破り、無数に展開されていた魔法陣の全てを飲み込んで消し飛ばしてしまった。

ブスブスと焼け焦げた肉の壁を蹴破って、バチバチと激しい雷を身に纏った偉丈夫、セヴェリーノが姿を現した。


「おいらとの戦いより、それの守護を優先したのかクソ兄貴? どうやら、ソロモンって奴に魂まで支配されたらしいな。だったら、なおさらブチのめさなきゃあな」


「ギィイイイイイイイイアアアアアアアッッ!!」


もはや言葉すら忘れたのか、獣のように咆哮するフランコにセヴェリーノは雷の速度で一気に間合いを詰めて雷を纏った拳で殴りかかった。

その刹那、別の方向の肉の壁を爆音と共にぶち抜いて巨大な何かが突っ込んできた。

何事かと、セヴェリーノとフランコの動きが止まる。

爆煙の中から現れたのはでかいドリルと二門の巨大砲塔を持つ俺の知る形状の戦車だった、しかも骨で出来ている。

だが、その大きさは俺の知る戦車を優に越えている、一戸建ての家よりデカイぞ、なんだあのとんでも戦車。

さっきから事態が急変し過ぎて頭がついていかない、何が起きてるんだ? 困惑しっぱなしの俺の目に、巨大戦車の上に立つスカルの姿が目に入った。


「フハハハハハハッ!! 驚いたかえ、ヒイロ君!! さっきの私の言葉で見捨てられたかもと焦ったかえ!! この登場を演出する為の小粋な演技だえ!! ソロモンに食われ、精霊王に気圧され、外に脱出する為に一時とはいえ仲間を見捨てるなど十一指の名折れだえッ!! 見るがいいえ、これぞ十一指とドラゴンナインと星罰隊の魔力をかき集めて、異世界の情報を元に構築した巨骨戦車だえッ!! 君たちがソロモンの魂核の元に居る事は把握ずみッ!! ならば脱出よりもソロモン討伐に向かうのは当然だえッ!! 魔に堕ちたフランコ君もろとも敵対する者は全てこの巨骨戦車で粉砕するえ、突っ込むえーーーーーッ!!」


スカルがソロモンの魂核を力強く指さすと、巨骨戦車がドリル大槍を高速回転させながら肉の床を抉り飛ばし、血煙を上げる。

そして、その巨大さからは想像できないほどの超加速で巨骨戦車は瞬く間にソロモンの魂核へと接近する、あぁ、なにがなにやらだ、だが、これで――。


「マレッサ、外に連絡を!! ここにみんな揃ってる!!」


「ッ!? 任せとくもん!!」

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