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271/271

271・場違いな物があると状況に関わらずビックリするよねって話

「そういえばパルカ様はどうしたヒイロ、見当たらないが一緒じゃあないのか?」


「あぁ、パルカなら外にいますよ。俺たちがソロモンの中に居る人たちを見つけるのを待ってるんだ」


俺とセヴェリーノが会話していると、空中に突如として浮かび上がった魔法陣から火、風、水、岩が猛烈な勢いで襲いかかってきた。

しかし、セヴェリーノはそれらに焦ったりする事なく、雷を纏った腕を軽く振るって瞬く間にそれらを消し飛ばしてしまった。

そして何事もなかったかのように俺との会話を続けた。


「そうかそうか、別れた後のセルバブラッソやその後の話は聞いてたが、だいたい分かった。今回も誰かの為に頑張ってるって事か。さすがデイジーの甥っ子だな、だが――」


その時、天井付近の肉が膨らみ始め、その肉塊が六本腕と三つの目を持つ異形の人型に変化していった。

魔物の様にも思えるその存在はセヴェリーノを三つの目で睨みつけて空中に大量の魔法陣を展開していった。


「セヴェリイィイイイイイノォオオオオオオオオッッ!!!!」


衝撃を伴う雄叫びでセヴェリーノの名を叫び、肌を刺すような殺気をまき散らすその存在を見て、セヴェリーノは不敵な笑みを浮かべる。


「デイジーの事なんかも聞きたかったが、今は取り込み中なんだ。家の事情でクソ兄貴、フランコを叩きのめさなきゃならんから、後でなヒイロッ!!」


体中からバヂバヂと激しく放電し、セヴェリーノは雷鳴を轟かせてフランコに凄まじい勢いで正面から突っ込んでいった。

その刹那、空中に展開されている魔法陣が激しく発光し、炎を纏った竜巻とうねる土石流が現れ、何かもを燃やし尽くし押し潰す勢いでセヴェリーノに襲いかかる。

双方が激突し、大爆発が起こり火炎に雷に大岩が水蒸気と共に周囲に勢いよく散らばっていく。


「ひぇッ!? 余波だけで軽く死にそうなんだけど、さすがに一旦離れた方がよくないかマレッサ!?」


『そうもんね、とりあえず周りの奴らに気を付けつつ、少し離れた方がいいもんね』


「周りの奴ら?」


マレッサに言われて周囲を見回すと、先程のフランコと同様に周辺の肉の壁、肉の天井、肉の床の一部が何か所も盛り上がり、そこから人型の肉塊が這い出てきているのが目に入る。


「何あれ、キモッ、こわッ!?」


『たぶん、生きたままソロモンの中に入り込んだ奴を始末するソロモンの分身みたいなものだと思うもん。パルカならもっと詳しく分かったかもしれないもんね』


「なんか白血球みたいだな、って事は俺たちは病原菌みたいなもんなのか……?」


そんな事を口にしつつ、肉の中から出て来たセヴェリーノの兄であるフランコの姿が脳裏をよぎった。

肉の中から出て来たって事はもしかしてフランコも白血球側、ソロモンの分身のようになっているって事なのではないだろうか……。


「ていうか、移動するなら早くしてほしいんですけど。フィーニスちゃんがあの暴れてる奴らの余波を弾いてあげてるの気付いてないでしょザコお兄さん。別にどうでもいいんだけど別に」


「す、すまん、フィーニス、守ってくれてたのか、ありがとう助かる!!」


ついつい考え事をしていた俺をフィーニスが守ってくれていたようだ、確かにいつまでもここに居ては危険に決まっている。

急いでここを離れようとした時、ナルカがツンツンと頬を突いてきた。


「ナルカもねー、下から来てる肉をプスプス刺して死なせてるよー」


「ナルカも助かる、ありがとうな」


「わーい褒められたーもっと死なすー」


そう言って、ナルカは更にプスプスと肉の床を刺し続けた。

うーん、これって相手に問答無用に死を付与してるだよな、冷静に考えるとちょっと怖いけど、まぁナルカだし、可愛いからいいか。


「とりあえず、この場を離れつつ他の人たちを探そう!! 最終的に全員を一か所に集めれば、後はデイジー叔父さんがなんとかしてくれる!!」


今更だがセヴェリーノの兄であるフランコはなんか凄い姿になってたが、それがソロモンの影響なのか元々そういう姿なのか、はたまた異世界ファッションなのか今の俺には判断できないから今は気にしない事にして、とにかく早くこの場を離れよう。

マレッサに防御魔法で守ってもらいつつ、フィーニスの風の力を借りて一気にセヴェリーノとその兄であるフランコから距離を取る。

数分間移動して戦いの余波が届かない場所まで移動した、かなり離れたはずだがまだ振動や音は若干聞こえている、もっと離れた方が安全かもしれない。

少し息を整えて周囲を見回すと周辺の肉の壁や天井、床のあちこちが盛り上がっているのが見えた。

立ち止まっている暇はなさそうだと思い、俺たちは移動を再開する。


「たぶん他の人たちも俺たちみたいにセヴェリーノたちから離れてるって思った方がいいよな。ただ、離れるにしたってここはソロモンの体内、どこに居たってソロモンの分身が襲ってくる。安全な場所とかなさそ――」


なさそうだ、と口から出そうとした俺の目に信じがたい物が飛び込んできた。

その存在の威容を前についつい、足を止めて見入ってしまう。

それは骨で出来た家、いや、もはや家というか豪邸のレベルに達しているが、おそらくこのソロモンの体内で安全な場所を作るために何者かが骨を材料にして作った建造物だろう。

よくよく見ると、肉の床の上に骨を敷き詰めて、その上に建てられている豪邸は玄関のドアノブから窓枠に至るまで緻密な意匠が施されており、単純に安全地帯をつくる為とは思えない程の力の入れようである。

安全地帯を作るだけなら、ぶっちゃけ豆腐みたいな四角い簡単な家でも十分な気はするのだが、細部に至るまでこだわり抜かれている点から、緊急事態であっても手抜きは絶対しないというどこか執念めいた何かを感じてしまう。

どうやらマレッサとフィーニスも呆気に取られているようだが、ナルカはほねほね~とどこか呑気だ。

遠くから響く、セヴェリーノたちの戦いの音でハッと我に返る。


「いやいやいや、なんだこの豪邸!? こんな場所に似つかわしくなさ過ぎるくらいにとんでもないぞ!?  それにあちこちめっちゃ細かい装飾があって俺が見ても物凄い匠が作った事が理解出来る程だ!! だいたい材料とかどうやって調達したんだこれ!?」


不気味であるはずの骨で作られている豪邸、であるというのに不思議と上品ささえ感じてしまうその威容に俺はある種の感動さえ覚えていた。

ここがソロモンの体内じゃなきゃ観光名所だと言われても信じるレベルだ。


「しかし、凄いな。もはや芸術と言っても過言ではない位だな、この家」


『ほほう、痕跡から見るに魔法で作られた物みたいもんね。並みの魔法使いなら枯渇する数の多層防御魔法が編み込まれて作られた建造物、もはや神殿と言ってもいいもん、建材の趣味はいいとは思わないもんけど。かなり上位の魔法使いが何人か協力して作ったみたいもん、オラシオでも一人じゃここまでの物は構築できないもん』


マレッサが感嘆の言葉を口にする、マレッサが褒める程だからこの骨の豪邸を作ったのはよっぽど凄い魔法使いなのだろう。

ただフィーニスは鼻をつまんで露骨に嫌そうな顔をしている。


「この骨、まだ生きてるじゃない。人間の魔法のくせに凄いってのは分かるけど臭うわ……、生理的に無理なんですけどこれ」


臭う? 俺には何も臭わないがフィーニスには我慢ならない臭いがしているようだ。

それに骨が生きてるってどういう事だ?

たぶん精霊王であるフィーニスの感覚だから、俺には分からないのだろう。

ともあれ、どうしたものか。

たぶん、この中にはこの骨の豪邸を作った魔法使いたちがいるはずだ、ソロモンに食べられた他の人もこの中にいるなら探す手間がはぶけるのだが……。

でももしそうだとしても中に居る人たちが俺たちに友好的だとは限らない、もう少し様子を見た方がいいだろうか、そう思案している俺の肩を誰かがポンと叩いた。

何事かと振り返るとそこには――


「どうも、建材の骨です」


「建材の骨ッ!?!?」


建材の骨を名乗る人骨が立っていた。

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