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270・雷の偉丈夫との再会って話

ソロモンの口の中に入り込んだ訳だが、マレッサの防御魔法のおかげで今の所なんともない、しかし、周囲をソロモンの肉で囲まれているせいか真っ暗で何も見えない状態だ。

ただ、水っぽい何とも言えない粘着音があちこちから響いてきている。

状況把握が出来ないのは困るがマレッサにナルカやフィーニスはどうやら周りが見えているようで、先程から「この肉は不味そうもんねぇ」とか「うわー」とか「キモイキモイ……」なんて声を漏らしていた。

見えなくて逆に良かったのかもしれない、恐らく前後左右上下、全方位が肉まみれなのだろう、ちょっと想像しただけでも背筋がゾワリとしてしまう。

さて、普通の生き物なら飲み込まれたあとは食道を通って胃に行くのだろうが、この規格外のソロモンという存在に果たしてその常識が通じるかどうか分からない。

なんにせよ、みんなが居るであろう場所に辿りついたら、殺し合いをしているというセヴェリーノを止めないと外に出るのは難しいだろう、俺たちにデイジー叔父さんと数時間も戦えるセヴェリーノ、そしてそのセヴェリーノと互角に戦っているであろう相手を止める事が出来るだろうか……。


『あ、やべぇもん。食い破られるもんこれ』


「はぁッ!?」


唐突なマレッサの言葉とほぼ同時にピシッ、パキッという恐ろしく不穏過ぎる音がそこかしこから聞こえ始めてきた。

これはもしかしなくても、じきにマレッサの防御魔法が破壊されてしまうのではないか?

もしそうなったら……一気に周囲の肉に押しつぶされて、あえなくソロモンの栄養にされてしまうだろう事は想像にかたくない。


「このソロモンってうんこするのかなー」


「ナルカ、うんこなんて下品な言葉は女の子が口にするもんじゃあないぞ? あと相当嫌な想像をしてしまうから、出来たらそれは口にしないでほしかったな」


「人間さん、ごめんねー」


「うんうん、ナルカは謝れて偉いなすごいぞ」


「えへへー」


ナルカの入り込んでいるマジックバックを笑顔で撫でながら微笑んでいると、大きなため息が聞こえてきた。


「なに現実逃避してるのよザコお兄さん。マレッサの防御魔法が食い破られるのはあと十秒かそこらって所よ、どうするの?」


「すまんフィーニス、嫌な現実から逃避するのは人間のさがなんだ……ってそんな事よりあと十秒そこら!? マ、マレッサなんとか出来ないのか!?」


フィーニスの言葉を受けて、慌てふためきながら俺はマレッサに尋ねたが当のマレッサは慌てる所かどこか余裕がある様子だ。


『まぁ、たぶん大丈夫もん。ヒイロは気づいてないだろうもんけど、わっちたちはソロモンの中に入ってから物凄い勢いで移動させられてるもん。もうすぐ開けた場所にでるはずもん、激しい魔力のぶつかり合いがどんどん近づいてきてるもんからね』


「そうなのか? なら周りの肉に押しつぶされる可能性は低いって事――」


俺が言葉を言い切る前に暗闇の中で何かがチカッと光ったと思った次の瞬間、凄まじい閃光が俺たちを覆い尽くした。

余りに強い光に俺はたまらず目を閉じた、周囲からは何かが焼ける音が聞こえてくる。

何が起きているのか分からないが、ただ事ではないのは確かだ。


「マレッサ、ナルカ、フィーニス無事か!? 一体何がどうなってる!?」


『器用もんねぇ、上手い事わっちたちを避けてるもん』


この状況下であっても余裕なマレッサの声に俺は半分安堵し、半分呆れてしまった。

数秒して光が収まってきたのを感じて、ゆっくりと目を開けるとそこには妙に開けた空間が広がっていた。

床も天井も壁も全てがピンク色の肉で構成されており、なんとも薄気味悪い。

そんな事を考えていると俺は自分が空中に浮いている事に気付いた、落下する様子がないのでマレッサが魔法でも使ってくれたのだろうか。


「いまの雷、神性を帯びてたわね。フィーニスちゃんたちを奇麗に避けてたけど、殺し合いしてる割に余裕あるのねあの人間」


「そっか、さっきの光って雷だったのか……って雷!?」


雷、神性、殺し合いという言葉がフィーニスの口から出て来た事で、少し遅れて俺はそれらが示す人物が思い浮かんだ。

それはパルカが言ってた人物であり、異神召喚の末裔であり、神を身に宿す男。

周囲の安全を確認してぶよぶよとした肉の床に降り立った俺たちの前に、激しい稲光と雷鳴を伴って雷が落ちる。

焼け焦げた肉の床の上、バチバチと帯電した状態の巨漢の偉丈夫が立っていた。


「覚えのある気配と思えば、やっぱりヒイロか!! 久しぶり、と言うほどでも無いかもしれないが久しぶりだな、元気にしてたか?」


「うん、久しぶりセヴェリーノ」


偉丈夫の名はセヴェリーノ・アモーレ、少し前に魔王国のリベルタ―という町でお世話になった人だ。

だが、その姿はあの頃と少し違っていた、腕や服の一部が白く発光し、身体のあちこちからバチバチと放電しながら激しく火花を散らしている。

それにリベルタ―で別れる時は雷の宿る瞳、雷の神眼が右目だけだったのに今は左目にも雷が宿っていて、両目ともが雷の神眼になっていた。


『間近で見るとはっきり分かるもん。こいつあの時より、中の神格がかなり活性化してるもん、その影響で人の領域は越えてるみたいもん』


「おお、マレッサ様も元気なようで……なんか足生えてない?」


雷の神眼のおかげでセヴェリーノには常人には見る事の出来ない神の姿、つまりはマレッサの姿が見えるし話せるようになっている。

そういえば、セヴェリーノと別れた時はまだマレッサには毛玉に腕が生えた姿だったっけ、商人であるカネーガさんの護衛任務の途中で俺が正式にマレッサたちを信仰すると決めたらなんか足が一本生えたんだよな、しかし今更ながら神様って不思議な存在だな。

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