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268・世の中理不尽な事だらけって話

「とりあえず、そのアリアドネーミートスって魔法で中のみんなの場所が分かるんだな、早速頼むよ!」


『分かんないわよ。場所の把握が出来るのはあくまでこの魔法をかけた対象だけだもの』


「え、みんなの場所が分かる訳じゃないなら、なんでその魔法を使うんだ?」


俺の言葉にパルカはきょとんとした表情を浮かべている。

その様子を見て俺は首をかしげた、魔法をかけられた人の場所が把握できても、ソロモンの中に居る人たちの場所が分からないんじゃあ意味はないはずだが、困惑している俺の横でマレッサがポンと手を打った。


『あぁ、そういう事もんか。確かにヒイロに危険が及ぶかもしれないもん』


「なるほど、名前からしてその魔法って糸みたいなのを対象にくっつけるんでしょ。それでヒイロ君をソロモンに食べさせて中の連中の場所を特定すると」


どうやらマレッサとゴッデス大蝦蟇斎さんはパルカが何をするのか分かったようだが、なんか今物凄い不穏な事を言わなかったか?

気のせいだろうから、一旦聞き流す事にしよう。


『よく分かったわね魔剣の人間、この魔法は魂に紐づけするから魂の無い者にはこの魔法は意味がないのよね、変質してるセルバや精霊であるナルカやフィーニスもね。普通の魔法にも似たような効果のものはあるけど異界化してるソロモンの腹の中で効果を保てる程の強度はないわ。神たる私様たちが人間に手を貸す事は出来ないけれど、今回はたまたま私様たちが神位魔法の練習をしていたら、たまたま近くにいた人間にたまたま神位魔法をかけてしまい、その人間がたまたまソロモンに喰われた、という事になるわね!!』


『うわぁ、中々無茶な事言ってるもんねぇ。まぁ神位魔法一発だけなら誤射かもしれないもんから、ギリギリ大丈夫かもしれないもん』


『という訳で行くわよ人間』


ちょっと待ってほしい、やっぱり喰われるってのは確定なのか?

もうちょっと詳しい説明が欲しい所だが、いきなりの事で少々パニックに陥る俺。


「いや、あの、その、何がという訳なんだよ!? え? 俺今からこの馬鹿デカいのに食べられるの!? 死なない? 大丈夫、俺?」


『何でもすると言ったのは人間でしょ。魔剣やセルバ、ナルカとフィーニスにこの魔法は意味がないし、だいたい魔剣にはマレッサを通して連絡を取り合う為にも外に居てもらわないと困るわ。そしてソロモンの足止めと、中の連中の場所を把握した後、脱出の為にデイジーちゃんにはソロモンに大穴開けてほしいのよね、だから適任なのは人間しかいないのよ』


最初にパルカは危険な橋を渡ると言っていた、それを承知で俺は何でもすると言ったはずじゃあなかったのか、俺はグッと拳を握りしめた。


『そもそも魔剣とセルバ、それにナルカやフィーニスでも異界化して空間すらねじ曲がってるソロモンの中の指定の場所まで正確に穴を開けるなんて芸当はさすがに無理でしょ。そもそもセルバは魔王国の傭兵、契約魔法で縛られて、ソロモンに強力な攻撃はできないはずよ。私様は人間の場所を外で把握しておく必要があるから残るけど、マレッサとナルカ、フィーニスが人間を守る為について行くわ。それでもデイジーちゃんや人間が不安だって言うならもっと違う方法を考えるわよ』


「う~ん、あたくしが分裂して一緒に行くって手もあるんだけれど、穴を開けるのはともかく、この大きさの子を足止めするのは分裂してパゥワーが低下した状態のあたくしじゃあちょっと厳しいものがあるわぁん。だからあたくしはちょっと心配ではあるのだけれど、ヒイロちゃんはどうかしらぁん?」


デイジー叔父さんの声はどこまでも優しい、ここで俺がどんな選択をしてもきっと否定はしないし、責めたりもしないだろう、パルカだって俺に無理強いしている訳じゃあない。

デイジー叔父さんと離れるのは確かに不安ではあるが、今までにも何度かデイジー叔父さんが側にいない事はあった。

パルカは違う方法を考える、と言ってくれたがソロモンの中の人たちがいつまで無事かなんて分からない、なら――。


「方法がそれしかないって訳じゃあないんだろうけど、他の方法を考える時間が惜しい、それに何でもするって言ったのは俺だ。さっきはいきなりだったからちょっとビックリしただけだから、もう大丈夫、頼むパルカ!!」


俺の言葉を聞いて、デイジー叔父さんとパルカが少し笑ったように見えた。


『分かったわ、じゃあいくわよ。マレッサ、魔力をこっちに寄越しなさい。この神位魔法は私様が開発したモノよ、構築と制御は任せておきなさい!!』


『分かったもん、術式の構築と制御は任せるもん。ヒイロ、アリアドネーミートスが発動したらわざとソロモンの触腕に捕まって喰われるもん。アリアドネーミートスと併せてわっちが守護の魔法を使うもんから心配はないもん。ナルカはそのままカバンの中でいいもんけど、魔法の強度を下げたくないもんから効果範囲は狭くするもん、だからフィーニスは出来るだけヒイロにくっつくもん。フィーニスなら自分で防御出来るだろうもんけど、バラバラに喰われるとたぶん分散する危険があるもん』


マレッサの言葉を聞いたフィーニスは伏し目がちになりながらキョロキョロと視線を泳がせた後、ためらいがちに俺の背中にくっついてきた、精霊だからなのか重さらしい重さは感じない。


「まぁ、中の人間たちがどうなろうとフィーニスちゃんにはどうでもいいんだけど、一応ザコお兄さんには借りがあるし、その借りを返す前に死なれたら精霊王としての沽券にかかわるし、だから、その、仕方なく手伝うだけなんだから、勘違いしないでよね」


「おお、なんという王道ツンデレ、初めてみたわ。もはや感動すら覚えるわね、デュフ」


ゴッデス大蝦蟇斎さんがフィーニスに対して何か妙な視線を向けて気持ちの悪い笑みを浮かべている。

大丈夫だろうかと心配になってしまう。


「心読めるって言ったでしょ!! 哀れみの目で私を見るのはやめなさい!!」


おっと心の失言をしてしまったようだ。

軽く頭を下げて、めんごと心からの謝罪を思う。


「ぬぅ……心が読めるのも考え物ね……」


ぶつぶつと何事か呟くゴッデス大蝦蟇斎さん、恐らく俺の心からの謝罪が届いたのだろう、よかったよかった。

まぁそれはどうでもいいとして。


「どうでもよくないわよ!!」


俺の背中にくっついているはずのフィーニスだが、あまりに軽すぎてホントに背中に居るのかいまいち分からない。

服の上から触れられているのは分かるが、それでは何かあったらすぐに離れ離れになってしまう気がする。


「フィーニス、もっとしっかり掴まってくれないか?」


「……ザコお兄さんのエッチ」


「なんで!?」


フィーニスの唐突な言葉に俺は困惑の声をあげる。

そんな困惑している俺をパルカがキッっと睨みつけて来た。


『あとで突っつくから覚えておきなさい人間』


「なんで!?!?」


俺が一体何をしたって言うんだ……。

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