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267.そう言われればそうだなって話

「たぶんヒイロの言ってるセヴェリーノで合ってるネ。あの子デイジーちゃんと戦ったって言ってたし、家督争いの為に兄に宿る神格を奪うとかなんとか、その過程でデイジーちゃんたちと会ったなら敵対するのも仕方ないみたいな事言ってたネ」


敵対か……あの頃のセヴェリーノでもデイジー叔父さんと数時間も戦えるくらいに強かった。

勇者兵を別次元に保護している今の弱体化したデイジー叔父さんだと、もっと苦戦するかもしれない、出来れば戦わずに済めばいいのだけれど。

デイジー叔父さんに抱えられながらそんな事を思っていると、デイジー叔父さんはソロモンの触腕の猛攻をかわしつつ、身をくねらせた。


「セヴェリーノちゃんとはまた熱く痺れる時間を過ごそうって約束してたのよねぇん。時と場合と場所なんて細かい事は気にしないのだけれど、やっぱりデートにはムードが大事だとデイジー思うのよねぇん」


ウフフと笑いながら言うデイジー叔父さんを見て、マレッサは大きなため息を吐く。


『通常の状態ならまだしも、封印無しのセヴェリーノとお前が戦うとまた時空封鎖の結界張らないと大変な事になるもん、時と場合と場所は大いに気にしてほしい所もん』


『ソロモンの中から漏れ出るこの神気、あの子、宿る主神級の神格とだいぶ馴染んでるみたいね。この間よりもかなり厄介になってるわよ。人間の枠を超えて神に近くなってるわ、これと戦ってる相手も相当なものね。もしあの子に宿る神格が完全顕現なんてしたら魔王ですら相手にならないでしょうね。まぁ、長くて数秒、下手したら一瞬で魂ごと蒸発しておしまいでしょうけど』


パルカが言うにはあの頃よりセヴェリーノは強くなっているようだ。

しかし、長くて数秒とは言え魔王ですら相手にならない力なんて想像も出来ないな、もしかしたらデイジー叔父さんですらどうにもできないかもしれない。

セヴェリーノの中に宿る神様が完全顕現とやらをしない事を願うばかりだ。


「異世界の神の末裔で、その神の先祖返り的な存在で、家督の為に兄弟と血みどろの殺し合い、相手に宿る神を取り込んで更に強力な存在にって訳ね。うーん、ずいぶんと厨二心がくすぐられる設定じゃない、そのセヴェなんたらって人。その設定だけで長編小説書けるんじゃない?」


唐突にうんうんと頷きながら何事か喋り出したゴッデス大蝦蟇斎さん、いきなり何を言い出すんだこの人は。

この世界に召喚され、勇者と呼ばれてる俺たちには勇者特権と呼ばれるチート能力が付与されている、まぁ俺の勇者特権は未だによく分かってないが、ともあれゴッデス大蝦蟇斎さんにも他の勇者と同じくチートと呼んで差し支えない能力『魔剣創造』があるし、設定と言えばセヴェリーノと比べても十分過ぎる設定がゴッデス大蝦蟇斎さんには存在している。


「自分の勇者特権のデメリットを踏み倒す為に全身を魔剣に変換した人が何言ってんですか?」


マレッサから聞いた事ではあるが、ゴッデス大蝦蟇斎さんの『魔剣創造』は魂を消費して魔剣を作るものらしく、魔剣を作った際にはとんでもない激痛を伴うとか。

そんな激痛というデメリットをゴッデス大蝦蟇斎さんは自分を魔剣にする事で踏み倒し、自由に魔剣を作り放題になっている、とんでもない事この上ない話である。

しかし、俺の真っ当な反論にゴッデス大蝦蟇斎さんは不服そうな表情を見せた。


「デイジーちゃんと神様二人、死の精霊どころか精霊王まで連れてるヒイロ君にだけは言われたくはないわね」


言われてみれば、確かに俺も大概だなと思い、何も言えなくなってしまった。

デイジー叔父さんは確かにとても凄いけれど、神様二人に死の精霊と精霊王なんかに比べればネームバリュー的にちょっと劣る、とはいえ十分濃ゆいメンバーなのは否定しようがない。

人間、身近な事となると案外分からないものだなと、しみじみと思う。


「で、どうするのザコお兄さん? 喰われた人間たちを助けるにしても、コイツの中のどこにいるのか分からないと助けようがないんじゃない? 後先何も考えずに全力出していいならコイツの八割くらい焼き払えるけど、中の人間ごとになるわ。でもそんなのザコお兄さんは承知しないでしょ?」


フィーニスの言葉を受けて思考を切り替える。


「あぁ、そうだな。助けようとしてる人を傷つけてしまうなんて本末転倒だ。それに後先考えずに全力を振るえばフィーニスにだってどんな影響が出るか分からないだろ、もう少し安全な方法を考えないと。ともかく、フィーニスの言うようにどうにか中にいる人たちの場所を把握できればいいんだけど」


『この程度では世界崩壊級の危機とは言えないから、私様やマレッサは手を貸す事は出来ないわ。まぁ知恵くらいなら別に良いとは思わなくもないわね』


「何か手があるのかパルカ? 頼む、教えてくれ。助けられるなら助けれやりたいんだ」


『まぁ、人間がどうしてもと言うのなら、教えるのはやぶさかではないけれど、人間にはちょっと危険な橋を渡ってもらうわよ』


「俺なんかに出来る事があるなら何でもする、何でも言ってくれ!!」


『ん? 今なんでもって……』


不意に俺の肩に留まっているパルカの鼻息が急に荒くなった、一体どうしたのだろうか?

様子がおかしなパルカを見てマレッサがやれやれと、あるのかどうか分からないが肩をすくめる様な動きをみせた。


『自分から話を振っておいて話の腰を折ろうとするなもん。で、何をする気もんかパルカ?』


『げふん、神位魔法のアリアドネーミートスを使えば対象がどこに居ても場所を把握できるわ』


日頃マレッサやパルカが使っている神位魔法はもっとド派手で凄いイメージがあるのだが、このアリアドネーミートスって魔法はなんとも効果が地味だな、などと思ったがこれでソロモンに喰われた人たちを助けに行けるんだ、そんな事は言ってられない。

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