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261・前線基地突入って話

ズドンッ、と凄まじい轟音と土煙を巻き上げてデイジー叔父さんがマレッサピエーの前線基地内に堂々と着地した。

あまりの轟音に何事かと前線基地内の兵士たちが集まってきているが、デイジー叔父さんには何か考えがあるのだろうか。


「あらやだぁん、あたくしがあんまりに魅力的過ぎて、みんな集まってきちゃったわぁん!!」


ダメだ、これは何も考えてない。


「デイジー叔父さん、勇者兵っていうのが何処にいるか分かる? まずは勇者兵を無力化して、すぐに前線に向かおう、あのデカいのが攻めてきたらどんな被害が出るか分からないから」


「それもそうねぇん、あっちの方になにか隠してる感じがヒシヒシとしてるから、たぶんあそこねぇん」


デイジー叔父さんが何か隠してる感じがすると言う方向に目を向けたが俺には何も見えない。

確かにテントが幾つか建てれそうな空間が不自然に空いている、物資だのの箱も置かれてないし、言われてみれば妙だなとは思える。

土煙がまだ完全に晴れてない内に素早く事を済ませて移動した方が面倒事にならないかも知れない。


「侵入者って事は魔族だな!! 任せておけ、傷付けた者に問答無用で死を強制する絶死の魔剣ムエントアルマを持つこの私、マレッサピエー特務騎士団筆頭騎士ヴァランタン・ルドゥーが仕留めて見せようぞ!!」


なんだか一際声の大きな兵士が禍々しい造形の大きな剣を掲げて土煙の中を突っ走ってくるのが見えた。

兵士の持っているあの大きな剣、死の視線をめっちゃ感じる、たぶん持ち主以上にヤバイ代物だ。

もしかしたらゴッデス大蝦蟇斎さんが作った魔剣の類だろうか。


「デイジー叔父さん、あの大きな剣、ほんとに危ないヤツだから気を付け――!!」


俺があの剣の危険性を言い終わる前に剣の持ち主は地面に埋まっていた。

一瞬呆気に取られてしまったが、デイジー叔父さんだから当然かと気持ちを切り替える。


「周りに仲間がいる状況、しかも土煙で視界が悪いのにそんな危ない刃物を振り回すものじゃあないわぁん。使うなら一対一の時にしておきなさいねぇん」


デイジー叔父さんのお小言が本人に聞こえてるとは思えないけれど、今はツッコみを入れている暇はない。


『魔剣ムエントアルマ、私様がちょっと前にノリで作った死の呪いを内包した魔剣……。魔王国で何百年か前から見かけないとは思ってたけど、なんであんたの国に有るのよ』


『いつだったか、魔王を殺す為の聖剣に対抗してお前が魔王に与えた魔剣だったもんね。何の因果か質屋に流れてたのを何年か前にオラシオが見つけてたもん』


『なんで私様が作った魔剣が質屋に流れるのよ、戯れだったとはいえ私様が作った神造武器なのに』


『知らないもん。あの魔剣で切って殺すより普通に殴ったり魔法使った方が魔王にとっては楽だったから売ったんじゃないかもん? パルカへの信仰が薄い魔王も今まで何人かいたはずもんよ』


『あぁ……心当たりがあるわね。あの子かしら、それともあの子? せっかく作ってあげたのに、まったく……』


どうやらあの魔剣とやらはパルカが作った物らしい、ノリとか戯れで作ったと言っていたが神が作る武器というのはとんでもないな、どうりで死の視線をひしひしと感じた訳だ。

あの魔剣があれば俺でも戦えたりするのだろうか、と考え頭を振る。

無理だ、奇麗事だとしても俺に人や人の姿をしたモノを殺す度胸はないし、やりたくはない。

なんとも臆病だなと自嘲する。


「ディジィイイイイアァアアアアイッ!!」


唐突なデイジー叔父さんの奇声に一瞬意識が遠のくのを感じた。

途方もない声量に土煙は消し飛び、空気は振動し、地面にヒビが入る。

もはや音響兵器と言っても過言ではないだろう、見回せば何人か気絶して倒れてる兵士の姿が見えた。

それほどの威力の声を間近で聞いてよく無事だったな俺、たぶんデイジー叔父さんが配慮してくれたのだろうと結論付ける。


「あたくしのデイジー・アイの前で隠し事なんて出来ないわよぉん!!」


目をかっぴろげたデイジー叔父さんが怪しいと言っていた場所を凝視するとパンッという乾いた破裂音が響き、空間が砕かれたガラスのように崩れ落ちていく。


『絶位の隠匿魔法の重ねがけもんね、違和感を消す魔法も併用してたみたいもんけど、デイジーには関係なかったみたいもん』


『ところで今のデイジーちゃんのデイジーアイだけど魔力の形跡なかったんだけど? どういう事? ただの眼力で魔法を破壊したの? あぁ、今更だったわデイジーちゃんだものね、そのくらい造作もないわね』


マレッサとパルカの言葉を聞くになんらかの魔法をデイジー叔父さんは眼力で粉砕したらしい。

さすがデイジー叔父さんだな、うん。

デイジーアイによって隠匿魔法が破壊された事で隠されていたモノが露わになる。

そこには数十人もの人間が立っていたが一様に誰も身じろぎ一つしない、隠匿魔法が破壊されたと言うのに慌てるようなそぶりはまったくなかった。

竜車の中でジョウジに魔法でその姿を見せられてはいたが、実際に見るとまるでマネキン人形のようで少し不気味に感じてしまう。


『これが勇者兵ってヤツ? 勇者特権の後付けがどれだけ危なっかしいかよく分かるわね。魂が欠けてるじゃない。これじゃあまともに循環出来ないわよ』


『実際に見るとやっぱりえぐいもんねぇ。地上にはあまり干渉したくないもんけど、勇者特権の移植はちょっと考えものもん、今度上で禁忌指定にするよう提言した方がいいかももん』


マレッサとパルカが真面目な様子で勇者兵を見ているのを見て、勇者兵という存在がかなり危うい物なのだと再認識する。

空中でプカプカと浮いているフィーニスが勇者兵を見て眉をひそめているに気付く。


「世界を壊そうとしたフィーニスちゃんが言うのもなんだけど、人間って頭どうかしてる。なんで同種にこんな事出来るの? 気持ち悪い……」


人間への嫌悪感をありありと感じる表情でフィーニスはそう吐き捨てた。

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