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257・人を信用するのと無警戒なのは別だよって話

「ふむ、魔王の体は神の体を素材に作られた、それゆえの信仰心の分散。超常の存在である死の神よりも自らの王として魔王の方に信仰が集まるのは必然とも言える。なにより魔王国は異神召喚が行われた地、神に対する考え方は他の国とは多少異なるだろう」


顎に手を当てて、ジョウジが何やら呟いている。

以前パルカは魔王国からの信仰が少ないみたいな事を言っていた気がする、パルカはとても強いのになぜだろうと思っていたが、魔王にも信仰が分散しているのなら納得できる。

魔王国の国民にとって守護神としてのパルカよりも実益のある魔王の方がありがたいって事なのかもしれない。

ん? なんか話が変な方向に飛んでる気がする、ともかく話の筋を戻そう。


「とりあえず、マレッサピエーの勇者兵をどうにかしないと世界の修正が連鎖的に起こって世界が大変な事になる、だからそれを止める為に協力しよう、って事でいいんだよな?」


「その通りだヒイロ。事は急を要する、すでに勇者兵は前線基地のどこかに隠蔽魔法をかけられた状態で待機状態だ。もし魔王が出てくれば最前線は容易く瓦解する、そうなればオラシオはすぐにでも勇者兵を投入するだろう」


「パルカが言ってたけど、魔王が一人で動くのってそうそうないんじゃないのか?」


「その通りだとも、しかし魔王が自ら兵を率いている時点で魔王が戦線に出てくるかもしれない、そう思わせただけで魔王軍としては十分なのだよ。その可能性がある以上、マレッサピエー連合は戦力を温存しておく必要が出てくる、魔王という切り札に備えてね」


「その場にいるだけで備える為に戦力を分散しないといけない存在か、魔王はとんでもないんだな。ともかく俺としては世界が滅ぶのもマレッサピエーが滅ぶのも嫌だ、あとパルカが守護神をしてる魔王国にだって滅んだりはしてほしくないんだ。だからと言って戦争を止める何て大それた事が出来るとは思わないよ。俺は異世界から来た人間だからそんな権利も資格もないだろうけど」


「フフ、おかしな事を言うものだなヒイロ。我々勇者は元々魔王国との戦争の為に召喚されたのだ、ゆえに今回のマレッサピエー連合と魔王国の戦争では我らは部外者などではない、当事者なのだ。戦争に介入する正当な権利も資格も、初めからこの手の中にあるのだよ。そしてそれを可能とする力すらも」


「……そう言われればそうなのか?」


「改めて、助力を願おう。ヒイロ、そしてデイジー、世界の為にも力を是非貸してほしい。これは世界を救う道に繋がると断言しよう」


そう言ってジョウジを俺に手を差し出してきた。

思う所がない訳ではないが世界が滅ぶなんてのはごめんだ、俺に出来る事は全力でやるつもりではあるが何が出来るのやら、今までに何度も思ってきた事を改めて思いつつ俺はジョウジの手を取った。


「じゃあよろしく」


「ふむ……」


何故か小首をかしげてふむと漏らすジョウジ、なんだ? どうかしたのか? なにか変な事でもしたか俺?

困惑する俺に気付いたのかジョウジは握手していた手を放して楽し気に笑った。


「フフフ、いやなに、君があまりにも呆気なく私の手を取るものだからね」


何を言ってるんだこの人は? 自分から手を出してきたのに呆気なく手を取るものだから? 意味が分からんぞ。

その言葉の真意を掴めずにさらに困惑している俺を見てジョウジは軽く肩をすくめてみせた。


「ヒイロ、一つアドバイスしておこう。君はもっと警戒心をもつべきだ。たとえすぐそばにデイジーが居たとしてもね。デイジーとて万能ではない、現に君は一度我々の人質になっていたのだから」


アドバイスねぇ、確かに俺は竜の胎で人質のような状態になったせいでデイジー叔父さんが手出しが出来なくなっていた。

俺がデイジー叔父さんの弱点って事なのは確かだ、確かではあるが。


「それはたぶん俺の性分ってやつだからなぁ。まぁアドバイスは覚えておくよ」


「フフ、そうしたまえ。さて、交渉成立だ、礼という訳ではないが君たちに良い事を教えよう」


「良い事?」


「君たちがかの傲慢の大罪神より頼まれている大罪神の復活に関する事だ、すなわち暴食、色欲、嫉妬、強欲、怠惰、憤怒の大罪神の封じられている場所を知る者を教えよう」


ジョウジの言葉にマレッサが驚きの声をあげる。


『大罪神の封じられている場所を知っている者もん!? 誰もん一体!? わっちの別個体がアロガンシア様を見つけたのだってある意味偶然だったもんよ!?』


『うるさいわよマレッサ。アンタんとこの勇者は場所が分からなくても勇者特権で見つけ出せるんでしょ、アロガンシア様の時がそうだったはずよ、落ち着きなさい』


『そ、そうだったもん、わっちたち神ですら知らない情報をどうやって知ったのか気になる所もんけど、勇者特権なら見つけ出すのは不可能じゃないもん。驚いて損したもん』


驚いていたマレッサだったがパルカに軽くつつかれて冷静さを取り戻したようだ、しかし、アロガンシア以外の大罪神の封じられている場所か、アロガンシアは俺が持っている暴食の権能の欠片が引き合わせてくれるみたいな事を言っていたっけ。

とは言え、暴食以外の大罪神の封じられてる場所を知っている人を教えてくれるならそれはそれで助かるのは事実だ。


「それで、その大罪神の封印場所を知ってる人って誰なんだ?」


「君たちも知っている人物、スッキャデー商会の会長カネーガ・メッサ・スッキャデーだ」


ジョウジの口から出てきた意外な人物の名前に驚く俺、なんでカネーガさんが大罪神の封印場所なんて知ってるんだ? カネーガさんが調査系の勇者特権を持っているとは思えないし、商人だから金の力でどうにかしたのだろうか……。

分からない事を考えても仕方ない、今はやるべき事に集中しなければ。

ふと、またしても世界の危機の渦中に巻き込まれてるなぁと思いつつ俺は深いため息をついた。

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