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23・買い物は楽しいけどすぐにお金がなくなるよねって話

『普通はドワーフと言えど神であるわっちの姿を視認する事は不可能もん。このボタクリとかいうドワーフは目が特殊みたいもんね。右目になんか住んでるのが原因みたいもん』


「右目に何かが住んでる?」


ボソボソとマレッサと話していたつもりだったが、聞こえていたのかボタクリさんが大きな声で喋りだした。


「あぁ、そうさワシの右目には神の火が住んでるのさ。その影響でちょっとばかし他のやつらと違うもんが見える。おめぇさんの連れてる神の末端の色が見えるのもこの目の影響だ」


神の火が何かは分からないが、神様関係の何かなのだろう。

という事は神の○○、みたいなモノも色々とあるって事か。

なら毛の神様なら神の毛とでも言うのだろうか?


『お前今、なんか変な事考えなかったかもん?』


「キノセイダヨ」


『……怪しいもんねぇ』


ふぅ、マレッサはなんとも疑り深いな、ちょっと神様について考察していただけだというのに。

とまぁ、くだらない事はどうでもいい。

立ち話をしにきたのでもないのだし、さっそく本題に入ろう。


「えっと、マジックバッグを買いに来たんです。予算は金貨十枚以内で二つお願いしたいんですが」


「マジックバッグか。金貨十枚以内で二つだと小型のがせいぜいだな。ならそっちの棚に置いてる物から選ぶといい。赤い値札のやつは二つで金貨十枚以下だ。容量はどれも似たり寄ったりだ、見た目だけで決めても大して問題はないぞ」


ボタクリさんが指差した棚の前に移動し、並んでいるバッグを手に取って値札を確認しつつ、手になじみそうな物を探す。

ふと、値札に書かれている数字がアラビア数字である事に気づいた。

気になったので、マレッサになんでアラビア数字が使われているのか尋ねてみた。


『少し前、千年くらい前にこっちに来た勇者が使ってた記号文字もん。そっちではそういう呼ばれ方してるもんか。それが伝来するまでは全部文字で書いてたからなかなか長ったらしかったもん』


千年を少し前扱いか、さすが神様だ、時間間隔が人とは大違いだ。

しばらく品定めをして、俺はウエストポーチ風の、デイジー叔父さんは肩掛けのショルダーバッグ風のマジックバッグを買う事にした。


「えぇと、この二つで金貨六枚と銀貨六十枚か。結構な出費だけど、荷物をコンパクトにまとめられるのは助かるな。はい、ボタクリさんお代」


金貨と銀貨を手渡し、ボタクリさんが枚数を確認する。

その間にマジックバッグのベルトを調節しつつ、腰に装着して付け心地を確かめる。

それほど大きくはないが、これに大樽二個分の物が入るのだと思うと、不思議とワクワクしてしょうがない。


「おう、確かにぴったりちょうどだ、毎度あり。他にも色々あるから見ていくといい。魔法具は多少値は張るが品質は確かだ。なんたってワシが作ったんだからな」


わっはっはっと笑いながらボタクリさんは箱の中から色んな道具を取り出して、俺たちの前に並べだした。

ランプの様な物、万年筆の様な物、巻物っぽい物、他にも色々。

虫除けの呪い札なんかは便利そうだなと思った。

まぁ、こっちの世界に蚊や蜂なんかがいるかのは分からないが。


『吸血虫や毒針持った虫ならいくらでもいるもんよ? まぁ、そこらの人間と同じくらいのサイズもんから、襲われたら命の覚悟をする事もんね』


異世界の虫怖すぎだろ。

セヴェリーノのお勧めの品なんかも聞きながら、いくつかの魔法具を買い、俺たちはボタクリさんの店を後にする事にした。


「ありがとうよ、これで種銭が出来た。借金完済もすぐだな、わっはっはっ。ヒイロだったな、おまけだ、これを持ってけ」


「え? うわっ!?」


ボタクリさんが俺に向かって鞘に収まったナイフを投げてよこしたので、慌てて受け取る。

入店直後に投げてきたナイフとはまた違う物のようだ。


「色々と買ってくれた礼だ。神宿りなんて珍しいものも見れたしな。見た所おめぇさん魔法使うって感じじゃねぇし、身一つで戦う感じでもねぇ。まぁ、何も持ってねぇよりかはマシ程度のもんだがな」


「いいんですか? ありがとうございます」


貰ったナイフをベルトに装着し、ボタクリさんに頭を下げた。

改めて、強欲市場でテントの類を買い、マジックバッグに収納する。

おお、どんどん入っていく、バッグの中は真っ暗で何が収納されているのか分からないが、手を入れて出したい物を思い浮かべながら手を引き抜くと、思い浮かべた物が取り出せるようだ。

うーむ、何を入れたかメモを取っていないと面倒な事になりそうだな。

ゲームみたいに道具欄が見えたら楽でいいのだが。

ステータスオープン、と小さく唱えてみたが何も起きなかった。


『何言ってるもん?』


「いや、ちょっとな。うん、試したかっただけだ」


こっぱずかしいなこれ。

とりあえずメモ用にペンと紙が必要だ。

ペンはさっきボタクリさんの所で万年筆の様な物を買ったので大丈夫として、後は紙。

この世界にも紙はあるが品質はあまりよろしくない。

魔法の巻物にも使えるらしい羊皮紙っぽい紙はしっかりしているが一枚のお値段がそこそこ高いし、植物から作られた紙は質が悪くかなり脆い印象を受けた。

安物買いの銭失い、という言葉もあるくらいなのだし、高くてもしっかりした羊皮紙っぽい物を買った方がよいのだろうか。

悩みつつ、羊皮紙っぽいのと植物から作られた紙の両方を買う事にした。

実に優柔不断だなぁ。


「こんなものかしらねぇん、食料と水、テント、ふかふかの寝具、料理道具、乳液に化粧水、パック。気に入った匂いの香水があったのはラッキーだったわねぇん」


「結構買い物したけど、お金はあとどのくらい残ってるデイジー叔父さん?」


「残りは金貨二枚と銀貨十枚、銅貨が少々って所ねぇん。酔いどれドラゴン亭の宿泊代は先払いしてるから問題ないけれど、ちょっと心許ないかしらぁん」


護衛の任務が終われば金貨百枚貰えるらしいが、それはそれとして念の為のお金はいくらあっても困りはしない。

異世界だし何があるか分からない、少しでも蓄えはあった方がいいだろう。

とは言え、現時点では収入らしい収入はないに等しい。

また太陽の涙石を景品にするという手もあるが、ザハールさんの心情を考えればちょっと控えた方がいいかもしれない、正直に言えば俺としても何度も使ってほしい手段ではない。

どうしたものか、何か仕事を探すにしても二日後にはセルバブラッソに出発だ。

俺でも出来る日雇いの仕事でもあればいいのだが。


「なんだ、金が稼ぎたいのか? 賭場か闘技場にでも言ったらどうだ? デイジーなら楽勝だろ」


セヴェリーノの言葉に衝撃を受ける。

確かにその通りだ、セヴェリーノも闘技場でお金を稼げたと言っていたのだから、デイジー叔父さんならかなりの額を稼げるだろう。

賭場はちょっと柄が悪そうな人が多そうだなってイメージはあるが、リベルタ―ならどこ行っても大して変わらない気がする。


「でもなぁ、デイジー叔父さんがそういうのに出ると、なんか反則じゃないかなって」


「あぁ、まぁ確かにそれはそうだな、うん。賭けにならないからすぐに出禁にされそうだ。おいらもしばらくは参加するなって言われたからな。だがまぁ、一回くらいは大丈夫だろ」


初見なら誰もデイジー叔父さんの実力を知らないだろうし、ワンチャン参加できるかもしれない。

とは言え、初日に太陽の涙石で一儲けした件があるし、どうだろうなぁ。

セヴェリーノをあしらったって風にザハールさんに伝わってたみたいだし、その闘技場の方にも話が言ってる気はする。


「いいんじゃなぁい? その闘技場、色んな子と戦えるんでしょう? この世界にどんな子がいるのか、肌と肌とのぶつかり合いの中で色々と知りたいわぁん」


「うーん、デイジー叔父さんがそう言うなら」


セヴェリーノが言うには闘技場は参加料を支払えば誰でも参加できるそうだ。

特に夜の闘技場は強い人が多く参加する事が多く、盛り上がる為賞金もかなり出るという。

今は夕暮れ時、少し離れた所にあるという闘技場に到着する頃には完全に日も落ちて夜になるだろう。

どうせ一回しか参加できない可能性があるなら、出来るだけ多く稼ぎたい所だ。

デイジー叔父さんもノリノリだし、さっそく闘技場に向かう事にした。

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