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225・自分が変わっている事は自分では気づきにくいって話

「ただの人間ンゴ?? た、確かに見た感じとか魔力とか、いや、待つンゴ、おんし、魔力もおかしいンゴ? なんか変なの持ってるンゴ? それがおんしの魔力に影響を与えている、いや変質させているンゴ? 他者の魔力を変質させる物質とかなにそれコワ……」


何故か急に俺を何かとんでもないモノかのような目で見てくるモートソグニル、失敬だな。

しかしなんだ変なの持ってるって、確かに色んな人から色々と物は貰ったが人の魔力とやらを変質させるなんて代物を貰った覚えはないのだが、はて?


『わっちにはヒイロの魔力の変質はよく分からないもん、巨人の死体から生まれた原初の精霊の一種だからもんかねぇ』


『やっぱりダメ、私様、ちょっと離れるわ、我慢できない』


マレッサはモートソグニルの言葉を受けて俺をじっくりと見ているが、パルカは臭いが我慢ならないようで少し離れた位置まで飛んで行ってしまった。

確かにモートソグニルは臭くはあるが、そこまで我慢ならない物って訳でもないんだが、魔力が臭うとも言っていたし、そのあたりが関係しているのかもしれない。


「たぶん、太陽の涙石じゃない? それ、大罪の権能が二つも宿ってるし、人間への影響って点を考えれば精神に異常をきたしてもおかしくない位に歪んでるから」


フィーニスが俺のマジックバッグを指差しながらそう言った、確かに太陽の涙石にはグロトとアロガンシアの権能の一部が宿っている、大罪神の凄さを思えば人間に影響を与えてもおかしくはない、というか精神に異常をきたすとか初めて聞いたんですけど? 


「え、これって俺持ってても大丈夫なヤツ? そんな危ない物だったのこれ??」


慌ててマジックバッグから太陽の涙石を取り出す、するとモートソグニルがヒィッと小さく悲鳴をあげ、土下座をし始めた、え、どういう事?


「ヒィイイイイイイイ、勘弁してくださいンゴ……」


ガタガタと震えるモートソグニルだが、この太陽の涙石、いやたぶん大罪の権能の方を恐れているように見える、何故かは分からないがこの怯え方は尋常ではない、俺はすぐに太陽の涙石をマジックバッグにしまった。


「モートソグニルさん、もう太陽の涙石はしまったから大丈夫」


まだ体を震わせているモートソグニルの背中を優しく撫でながら、落ち着くのを待っているとマレッサがポンと手を打ってそう言えばと話し始めた。


『あー、ドヴェルグたちが地下深くに隠れ住むようになったのは大罪神たちの影響だったもんね。何千年程度前の事とは言え、刻まれた恐怖は健在って事もんか。まぁ、原因はドヴェルグが手あたり次第に神話級の魔法具を作ってはばらまいてたせいもんけど』


『思い出したわ、当時は竜種の希少な素材をふんだんに使用したえげつない魔法具がばらまかれて、そのせいで竜種の力を人間が扱うようになったのよね。竜種の神への反逆に加担する人間が出始めたのもその頃だったかしら。大罪神の方々が地上に派遣されて、ほとんどの魔法具は破壊、そしてそれらを作ったドヴェルグたちにもキツイお灸を据えたんだったわね。日の光を浴びると石化する呪いもその一環だったはずよ』


マレッサの話しを聞き、少し離れた場所からパルカが少し話しの補足をしてくれた、竜種の力を人間が扱う、か。

なんとなくチューニーの人たちやロミュオたち、シグルズさんの事が頭に浮かんだ。

ただ、あの全身鎧が今マレッサやパルカの言った魔法具だとしたら見かけた時にそう言うだろうし、やはり違うのかもしれない、まぁ今は関係ない事だな。

しばらくして、モートソグニルが落ち着いてきた。


「あぁ、悪かったな人の子、ちょっと取り乱したンゴ。おんしは自分を只者だと思ってるみたいンゴが、おいどんの目にはそうは見えないンゴ。だいぶ稀有な運命がまとわりついてるンゴ、これからもとんでもない目に合うンゴ、せいぜい気を付けた方がいいンゴよ」


「そっか、忠告ありがとう。でもアロガンシアにはせいぜい足掻いて、存分にこの世界を楽しめって言われてるんだ、だからどんな事があっても楽しんでみせるよ」


モートソグニルは俺の言葉を聞いて呆れたように笑った。


「ケヒャヒャ、こいつぁイカれてるンゴねぇ。人間の癖に神や精霊王に大罪神、とんでもねぇ連中と関わって、その上で楽しんで見せるとは、なんとも豪儀なもンゴ。気に入ったンゴ、おんしの頼み、聞き入れてやるンゴ」


「ホントか!? ありがとうモートソグニルさん、助かるよ!!」


よかった、よく分からないがモートソグニルは俺を気に入って頼みを聞いてくれるようだ、これでジャヌーラの誓いの首輪を修繕する事が出来る。

後は素材となる神位魔法を物質化させた物があれば万事解決だ。


『上手い事話しはまとまったようね、じゃあデイジーちゃんに首切りの神位魔法ぶっ放すわよ。デイジーちゃん、魔力の物質化は出来るわよね?』


首切りの神位魔法をぶっ放すと聞いてモートソグニルはえ、何この神、物騒過ぎンゴ? と呟いた。

パルカの言葉だけを聞けば確かにそうだが、神位魔法を物質化するには必要な工程らしいので聞き流してほしい。

デイジー叔父さんは何故か黙ったまま指で丸を作って満面の笑みを浮かべていた。


「あ、ごめんデイジー叔父さん、もう喋っても大丈夫!! ありがとう静かにしててくれて!!」


そう言えば、静かにしてと言ったのをすっかり忘れていた。


「あらぁん、もういいのぉん? 神位魔法を物質化するのは魔力を物質化する要領と同じって事でいいのかしらぁんパルカちゃん?」


『えぇ、魔力よりも桁違いに難しくはあるけれど、神位魔法を受け止めて霧散させないようにその場に固定して、魔力を物質化する時よりも気密性を高めて、より強く圧縮する感じよ。本当は強力な神が数人がかりでやる事だから、危ないと思ったら掻き消してもらって構わないわ。今からデイジーちゃんに放つのはかなり危険な神位魔法だから』


「あはぁん、心配してくれてありがとうパルカちゃん!! あたくし、愛のパゥワーを十割増しで受け止めるわぁん!! さぁ、どんと来なさぁい!!」


デイジー叔父さんが少し場所を移動し、腰を落として大きく両手を広げる。

ただそれだけで途方もない圧迫感が襲って来る、デイジー叔父さんの周囲の空間が歪んで見える程の愛のパゥワーが充満しているのが分かった。

マレッサとパルカが横に並び、気絶しているジャヌーラの身体に触れる。


『ジャヌーラから神力をちょっと融通してもらうから、ヒイロはわっちたちを信仰する必要はないもん。じゃあいくもんよ、パルカ合わせるもん』


『いつでもいいわよ、しくじるんじゃないわよマレッサ』


マレッサとパルカ、そしてジャヌーラの身体から膨大な神力が放出され、空中に幾重にも重なった巨大な魔法陣を作り出していく。


『『来たれ、神の根を落とし、巨人を切り裂き、不死すら殺すアダマスの刃!! ハルペーレモーストミーッ!!』』


二人の神位魔法が発動し、デイジー叔父さんに向かって目にも止まらぬ速さで巨大な刃が幾つも飛んでいく、俺の目にはその刃が飛んだ軌跡に残る光を捉えるのがやっとだった。

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