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215・アリスという少女って話

その少女は空中を歩いて俺の元にやってきて手を取った。

暖かな小さな手、可愛らしい外見、朗らかで美しい声、子供らしい仕草、芸能人か何かかと思うくらいに整った顔立ちにまるで人形のようだと思った。

ただ、その金の光をこぼす瞳は夜空に浮かぶ月よりも強く輝いているように感じられ、どこか不気味であった。

そして、気づいた時には俺の麻痺と蔦の拘束が消え去っていた、恐らくアリスと名乗るこの少女の仕業ではあるのだろうが、何をしたのか全く分からなかった。


「俺は、皆野緋色、よろしくアリス……」


「えぇえぇ、よろしくねヒイロ!! さっきは普通じゃなかったようだから元に戻したのだけれど、構わないわよね、だってそのままだとヒイロとお話が出来ないんだもの。わたしはね、マーチたちと一緒にお友達に会いに来たのよ、ただ悲しい事に入れ違いになってしまったみたいなの。でもねサンドラが新しいお友達と一緒にお迎えに来てくれたのよ、サンドラはとっても素敵なメイドさんだわ、それに目が見えない事なんてへっちゃらなんだから!!」


話しを聞く限り、アリスはマーチの姉なのだろう、確かハートという姉もいるんだったか。

サンドラさんは目が見えないのに俺の現在地を把握していた、そう言う魔法か何かを使えるのなら確かに目が見えなくてへっちゃらだろう。

いや、今はそんな事はどうでもいい、サンドラさんは俺の現在地をアリスに教えたと言った、なら、この空間を破壊して移動してきたのはアリスの力って事になる。

小学生くらいにしか見えない少女がデイジー叔父さんと同じような事をやったというのはにわかには信じられないが、事実、アリスとサンドラさんは破壊された空間の穴から姿を現している。


「そうかサンドラさんは凄いんだな。所でアリス、ここにはどうやって来たんだ? 空間を破壊したように見えるんだが」


「えぇ、そうよ。わたしの勇者特権『全知全能ザ・ゴッド』でヒイロへの道を繋げたの、わたしの願った事は何でも叶っちゃうんだから。この力は神様からの素敵な贈り物、きっとわたしが良い子だったから神様もこんなに素晴らしい力を与えてくださったのね」


やはりアリスが空間を破壊してこの場所への道を作ったようだ、願った事は何でも叶うというアリスの勇者特権『全知全能』、使い方を間違えればとんでもない事になりそうだ。


『アリス、この子供が例の勇者もんか。空間破壊による転移なんて力技、勇者特権によるものとは言えデイジーと同じ事が出来るなんてとんでもないもんね。ヒイロ、こいつとは間違っても敵対しない方がいいもんよ、デイジーより劣るもんけど、十二分に脅威もんから』


いや、マレッサ、俺は別に誰とも敵対とかしたくはないんだが。


『ふぅん、下の四人もかなりの上澄みではあるけれど、この子は別格ね。それに何この子、少し神性が混ざってない? この感じ、こっちの世界の神ではないみたいだけれど、眠ってた神性が召喚の影響で顕在化したのかしら』


神性が顕在化、よく分からないがパルカの言う通りならこの金色に輝いてる目もその影響なのだろうか、それはそれとしてだ、突然のアリスの来訪ですっかり頭から抜け落ちていたが地上の四人を止めないと。


「あぁ、すまんアリス、お友達になるのはいいんだが、お話しは後だ。早く下の四人を止めないとジャヌーラが可哀想だ」


『わちき神だぞ!! 下等生物の分際で可哀想とかわちきを憐れむな、不敬だぞ!!』


「あぁ、悪い悪い、つい」


『頭を撫でるな!! さっきから不敬が過ぎるぞ下等生物!!』


さっきまで泣きそうだったジャヌーラがギャーギャーと騒いでいる、少しは元気が出たようだ、さてどうするか、俺がマレッサとパルカ、それにジャヌーラを無理に信仰したとしてもさっきと同じ様に止められるだろう。

もう無理に信仰しようとはしないから、マレッサもパルカもギロリと睨みを利かせないでほしい。

俺がどうしようかと唸っていると、アリスがきょとんとした顔で俺の顔を覗き込んでいた。


「ど、どうしたアリス? 俺の顔に何かついてるか?」


アリスの金の瞳に飲み込まれそうになる感覚を覚え、俺は咄嗟にアリスの顔から視線を逸らす。


「ヒイロはとても優しいのに自分はその対象に含まないのね、それじゃあヒイロが可哀想だわ。だからわたしがヒイロを助けてあげる、マーチを助けれくれたお礼も兼ねてね」


助けてあげる、とのアリスの言葉、俺はどういう事かと一瞬呆気に取られてしまう。


「下の子たちを止めたらいいのよね? 大丈夫よヒイロ、だってわたしにはこの力と女神様がついているんですもの。マレッサ・エクセレンテ様、出てきてちょうだいな」


アリスがそう言うと、空間に波紋が広がりそこから緑の光と共に六枚羽根を持つ女性が姿を現した、見た目は神体顕現とやらをしたマレッサに似ているが、今、目の前に居る女性の方がもっと荘厳で神々しく、そしてより美しく見えた。


『なんか失礼な事考えてないもんかヒイロ?』


「メッソウ モ ゴザイマセン」


疑惑の目を向けるマレッサから全力で目を背ける、こういう時は妙に勘がいいから困る。


「この方は元々、ヒイロや他の勇者の方々の元におられるマレッサ様と同じ姿をしていたのだけれど、気づいたらとても素敵なお姿になられていたのよ。前のお姿も愛嬌があって可愛らしかったわ、でも女神様なのだから美しいお姿の方が素敵だと思わない? あぁ、いけない、下の子たちを止めなきゃ、落ち着いてお話が出来ないんだった。ヒイロ少しだけ待っててくださる? すぐに終わらせてくるから」


ニコリと笑い、スカートの裾を持ってお淑やかに一礼して、アリスは六枚羽根の女神マレッサ・エクセレンテと共に地上へと落下していった。

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