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210・一触即発って話

「どう見ても盗人にしか見えんこの女は貴殿の知り合いか?」


「……はい、この人も勇者です」


「なるほど、勇者の恥さらしか。我が言えた事ではないが、知り合いくらいは選んだ方がよいぞ凡夫ヒイロよ」


「いや、ホントはいい人なんだ……たぶん」


俺の言葉にゴッデス大蝦蟇斎さんが不服そうに大きな声をあげる。


「ちょっとッ!! そこはいい人って言い切りなさいよ!! ほら、犯罪組織なんでしょここ、私が潰したんだから正義じゃない私って!! 一応、構成員は死なない程度にボコってるし、悪い事してないわよ!!」


全身に高そうなアクセサリー、ポケットに詰め込まれた金貨、両手には宝石がジャラジャラと山盛り、どこをどう見ればこの姿が正義と映るのだろうか、ぜひとも教えていただきたい所だ。


「逆に聞きますけど、今のゴッデス大蝦蟇斎さんと同じ姿の奴が自分は正義だって言ったら信じますか?」


俺はその場に置いていた豪華な装飾の施された手鏡を手に取り、ゴッデス大蝦蟇斎さんに向けた。

ゴッデス大蝦蟇斎さんの目には金の亡者の様な姿の自分が見えている事だろう。


「うわ、これはダメな奴だ。その場で通報案件だわこれ」


「納得していただけたようで何より。さぁ、今すぐその金目の物を戻して、罪を償いに牢屋に戻りましょう。脱獄なんかしたら罪が重くなるだけですよ?」


まぁ、俺も脱獄に関しては人の事は言えない身ではあるのだが、一応不問にはしてもらったのでたぶん大丈夫だろう。

未だにどうするか体をひねって思い悩んでいるゴッデス大蝦蟇斎さんに呆れつつ、声をかけようとした時、今度は晴流弥が俺を手で制した。


「女囚ゴッデスよ、話がある」


「その女囚ってやめて!! なんか凄い嫌な感じ!!」


「黙れ脱獄窃盗犯、囚人である以上、女囚と呼ばれる事は避けようがあるまい。己が罪を認めよ、たわけめ」


「ちょっとヒイロ君、なにこのナチュラルに上から目線のクソガキ」


ゴッデス大蝦蟇斎さんの声から少し苛ついている感じがする。

まぁ、確かに晴流弥は誰にでもそういう尊大な態度だから合わない人には合わないよな。


「芦屋晴流弥、俺たちと同じで勇者だけど、こっちで暮らすって決めた陰陽師」


「なるほど厨二病ってやつね、誰しも一度は通る道だわ。眼帯とか無駄に包帯とか巻いて、オレの封印されし邪眼がーとか封印されし腕がーとかやってんでしょどうせ」


晴流弥は陰陽師である、という言葉から晴流弥を厨二病と認識したゴッデス大蝦蟇斎さんは腕を組んでうんうんと頷き始めた。

あーこれ信じてないな。


「何を言っているのかは分からぬが、我の白虎と玄武を倒したのは貴殿だな?」


「白虎と玄武? あの白い虎と蛇が尻にくっついてたでっかい亀の事? 下水道に出た後、しばらくうろついてたら出くわして襲って来たから叩きのめしたけど、アレってアンタの使い魔だったの? あぁ、ごめんねーついやっちゃった。しっかし四神の名前を使い魔に付けてるなんて、だいぶこじらせてるわね。晴流弥だっけ? アンタってテイマー系の勇者特権持ち?」


「ふむ、この調子では説明した所で理解出来ぬし、する気もなかろうな。さて、話は変わるが女囚ゴッデスよ、我と戦え」


唐突に晴流弥がそんな事を言いだした、どういうつもりだろうか。

ゴッデス大蝦蟇斎さんも首をかしげてハテナマークが浮かんでいるような顔をしている。


「我と戦うならば、この場での事を我は口外せぬし、見逃すと約束しよう。断るなら、牢屋暮らしが長くなるであろう」


「ちょ、晴流弥、いきなり何を言ってるんだ!?」


こんなのある意味脅しじゃあないか、戦わなければがっつり警備兵に報告するぞと。


「ふぅん、そっかそっかぁ、分かるわぁ。手に入れた力を試してみたいのよね、勇者特権なんていうとんでもない力使わない方がもったいないし。オーケー、戦いましょ。ここじゃあなんだから外でいい? ちょっとの生意気な鼻っ柱、へし折りたくなったわ」


「フン、出来もせぬ事は口にしない事だぞ女囚ゴッデス、程度が知れると言うものだ。そちらこそ我の式神を二体倒したのだ、簡単に倒されてくれるなよ?」


なんでこの二人妙に煽り合っているのだろうか等と思っていると二人の姿が消え、そこかしこから衝撃音が鳴り始めた。

おいおいおい、外でって言ってたのにいきなり戦い始めたのか!? 我慢できない子供かまったく!! このままじゃあ下水道が潰れて竜の胎の時みたいに地上に被害が出るかもしれない。


「マレッサ、パルカ、この二人をどうにか上に移動させれないか!?」


『まったく、アンタの所が召喚した勇者って問題有るのが多すぎじゃない? そっちが多めに魔力融通しなさいよね』


『それはわっちのせいじゃないと思うもんけど、仕方ないもん。こんな短期間に似たような被害を出したんじゃジャヌーラに顔向けできないもんからね』


『あ、わっちも魔力くらいは出すもん。わっちが付いていながらゴッデス大蝦蟇斎を全然制御できてなくて申し訳ないもん』


二人のマレッサとパルカが一瞬で魔法陣を空中に描き、三人が同時に声をあげた。


『『『神位魔法カオスメタスタシス!!』』』


直後、空間全てが真っ白に染まった。

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