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21・そういえば密輸の護衛だったって話

商隊はそれなりの規模で馬車が五台で商人が三人とその部下が十人程、その護衛に俺とデイジー叔父さんを含めて十人の総勢二十三名。

元々、四人組の冒険者チーム二組が護衛する予定の所に俺とデイジー叔父さんの二名が後から入る形なので、簡単な打ち合わせと顔見せをする事になった。

その打ち合わせと顔見せの場にやはりというかなんというか『カマッセ・パピー』という冒険者チームの面々がいた。

俺たちは後からザハールさんの伝手でねじ込んでもらった立場なので、その場の決定に従う事にした。

冒険者ランクがB級という事とバーサークカブトムシという魔物を討伐した実績から商隊護衛のリーダーを『カマッセ・パピー』のハーゲン・ギェルマンがと務める事になった。

何故かキメ顔で大笑いしているハーゲンを見て、俺は困惑した表情を浮かべる事しかできなかった。

デイジー叔父さんに瞬殺されていたが、大丈夫なのだろうかという不安がよぎる。

しかし、少なくとも俺よりは強いだろうしB級冒険者ってのがどの程度凄いのか分からないが、経験豊富な手練れなのは確かだろう。


「さっきは済まないなヒイロ君、デイジーちゃん。商隊の貴重な品を狙う泥棒かもしれないと警戒してつい、荒っぽい対応になってしまった、すまんすまん。同じ護衛依頼をこなす仲間としてよろしく頼むぞ、頼みます、すみませんでした」


ハーゲンが俺とデイジー叔父さんに護衛隊のリーダーとして挨拶している途中でデイジー叔父さんに九十度腰を曲げて頭を下げるまでの素早くもよどみなく流れる様な動き、これがA級並みのへりくだる速度かと驚嘆させられる。


「あらぁん、だめよハーゲンちゃん。護衛隊のリーダーがそんな卑屈な態度じゃ、その下につくあたくしやあっちの冒険者チームの人たち、それに護衛対象である商人さんたちが不安になるわぁん。リーダーなんだから、しっかり胸をはらなきゃねぇん」


デイジー叔父さんにバチンと背中を叩かれ、ハーゲンはその凄まじい痛みにもんどりうって床に倒れ込み、転げまわる。

なんだろう、不安だ。


「……B級にも色んなチームがあるんだな。私たちはC級冒険者チームの『チューニー』だ。私はリーダーで暗黒のソードダンサーのモッブス・エクストラー」


「ボクは祝福された癒しの僧侶、ヨー・ワイネン。回復魔法と身体強化魔法が得意だよ」


「……我が名はゼロ。ゼロ・インフィニティー、戦慄の魔法剣士だ。近距離から遠距離まで幅広く戦える」


「ラッテはラッテかしらぁ。召喚士かしらぁ」


『チューニー』の人たちが挨拶をしに来てくれたので、俺も挨拶を返す。


「俺は緋色、こっちがデイジー叔父さんです」


「よろしくねぇん。気軽にデイジーちゃんって呼んでいいわよぉん」


この人たちはC級の冒険者チームらしいが、正直ハーゲンたちの『カマッセ・パピー』より強そうに見える不思議。

職業名のインパクトのせいだろうか。


「君たちは冒険者ギルドに登録していないから、ランク付けはされていないと聞く。それでも盗賊ギルド『エルドラド』のギルドマスターからの紹介だ、戦力として期待させてもらうよ。私たちはまだチームを結成して間もないからC級だが、それなりには戦えるつもりだ、道中よろしく頼む」


簡単な顔見せと自己紹介を終えて、打ち合わせとなった。

俺たち護衛隊が大きなテントに案内された数分後に丸眼鏡をかけた小太りのおっさんがのっそりと姿を現した。

着ている服や指輪などの装飾品に大きな宝石などがちりばめられておりギラギラと輝いている。

見た所、相当なお金持ちなのだろう。


「私がこの商隊の責任者であるカネーガ・メッサ・スッキャデーだ。スッキャデー商会の現商会長と言えば名前くらいは知っている者もいるだろう。私自らがこの商隊を率いている意味を十分に理解してもらいたい。そして今回の依頼は君たちが属している冒険者ギルドから特殊クエストに分類される事は聞いているはず、この意味は分かっているな。報酬だが前金としてこの場で金貨十枚を渡す。無事セルバトロンコに到着したら残りの金貨百枚を支払おう。万が一にも失敗、商品の破損などがあった場合は……まぁ考えない方がいい。人とは常に成功を思い描いていなくてはならない、失敗、などというものはあってはならないからだ。私の言葉をよぉく胸に刻んでくれ。何か質問はあるかな」


「あのぉ、恐縮なのですがよろしいでしょうか」


俺はちょっと気になったので恐る恐る手を挙げた。


「何かな、そこの少年」


「護衛する商品がなんなのか、お伺いしても?」


俺の言葉にカネーガはふむと少し思案顔になり、なんとも邪悪な笑みを浮かべる。


「それは知らない方がいい。もし知れば、私などよりもよっぽど恐ろしいお方の怒りを買う事になる」


「あー、そうなんですね。わっかりました、ありがとうございました、はい」


好奇心、猫を殺す。

今ほどこの諺を実感する日が来るとは思わなかった。

そういえば、密輸とかってセヴェリーノが言ってたもんなぁ、表沙汰になるとかなりヤバい物なんだろう。

そして、カネーガが移動経路などの説明を始めた。

二日後の早朝にリベルタ―を出発、実はその時が一番危険なのだそうだ。

リベルタ―内にいる間は盗賊ギルド『エルドラド』の客として扱われるので襲われる心配はないが、リベルタ―を出た瞬間ただの商隊扱いになるので商品を狙う奴らが襲ってくるのだとか。

世紀末だな。

積み荷が相当貴重な物らしく馬車の速度をあまり出せないのでセルバブラッソの入り口に行くまでに三日、入国してから更に一日かけて首都であるセルバトロンコに行くそうだ。

また夜間の休憩用テントや護衛期間中の食料などは各々で準備する必要があるとの事。

お金は昨日デイジー叔父さんが稼いだのと貰えるらしい前金があるからいいとして、お店の場所なんかはあとでザハールさんかセヴァリーノに相談してみよう。

そういえば、特殊クエストってなんなんだろう。

流れ的にたぶん普通のクエストじゃない、危ないクエストの事だとは思う。

密輸の護衛とかそりゃあ普通じゃないよな、口外とかしない方がいいだろう。

案の定、口外無用の契約書にサインをする事に。

この契約書は魔法が込められており、約束を破ると呪いがかかるそうな。

契約書に名前を書き、前金の受け渡しを終えてこの場は解散となった。


「デイジー叔父さん、とりあえず必要になりそうな物を買いに行かないとね」


「そうねぇん、洗顔用の石鹸に清潔な水、化粧水と美容液に乳液、パックは必須よぉん。食事も高カロリーな物は控えておきたいわぁん。もちろん寝具はフッカフカじゃなきゃ、寝不足はお肌の大敵だもの」


「そ、そうだね」


そうだった、デイジー叔父さんは美容に気をつかう人で、化粧品とかも割とこだわるタイプだった気がする。

……さて、お金が残るといいのだが。


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